日本の国際的存在感を高めるには

加治慶光×藤井宏一郎×金子将史

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金子将史(PHP総研主席研究員)

■民間のリソースをどう使う?
 
金子 人の問題が出ましたが、試行錯誤でやるにしても、物量作戦でやるにしても、やはり政府の中に、ITなりソーシャル・メディアなりを使ったコミュニケーションについて、ある程度のリテラシーがないと厳しいのではないでしょうか。もっと言うと、民間にそういう人がどれくらいいるか分からないですけど、特にこの分野は官民協力なり官民交流なりが一番求められていると思います。
 
 加治さんはまさに民間から政府に入られたわけですが、民間のリソースを使うという点について、どう思われますか?
 
加治 外から人をとればいいというほど単純なものでもないと思うんですが、結構民間の人も今政府に入っているので、そういう人たちの知恵を使う。そして、その人たちの知恵や経験をうまく政府の中で生かしていく優秀な官僚がいて、民間人と官僚の協業ができればいいということでしょう。
 
藤井 アメリカでは、フェデラルな調達システム、一般入札調達システムがソーシャルメディアの発展のスピード、あるいはパブリック・ディプロマシーに必要とされるスピードについていかないということが大きな問題とされています。
 何カ月もかけて調達していくうちに、流行りのプラットホームが変わるかもしれないし、話題も変わってしまう。これは必ずしもパブリック・ディプロマシーだけの話ではなくて、今のソーシャル・メディアやウェブサービスを政府が調達する時にどれだけ早くできるかという、より大きな問題です。ガバメント2.0の文脈でも、コード・フォー・アメリカなどで問題にされているんですね。これは日本ではさらに問題で、調達のスピードとか入札の煩雑さとか、アメリカ以上に深刻ではないかと思います。
 
金子 政府の中にいらっしゃった立場として、そこはどうですか、実感として。
 
加治 それはそうかもしれないです。丁寧でち密な作業が要求されます、本当に。透明性だとか公平性だとか担保しながら、かなり慎重に準備するので。
 
藤井 物をつくったり、イベントを開いたりといった、ある程度大量なロジスティックスが必要になる部分というのは、民間から入札してもらわざるを得ないじゃないですか。そういうところはアウトソーシングなんだけれども、まさに加治さんが官邸に入られたように、知見を持った個人が中で戦略的なところまで入ってアドバイスするというのは、インソーシングのほうが柔軟にできると思うんです。   というのは、入札である広告代理店なりPR会社が勝ったからといって、そこの社員が全員キレキレのレベルかというと、そういうわけじゃないんです。キレキレの人というのは、各社に1人か2人ずついるんです。会社に所属してない人だっているわけじゃないですか、大学にいたりとか。これは、政府調達一般にいえるジレンマで、公平性・透明性を追求すればするほど、戦略性・柔軟性・専門性が犠牲になる側面があるんです。
 
 だから、ロジスティックス部分の入札をとった会社に戦略部分まで全部任せるのは非常に危険で、頭脳的な部分というのは、加治さんが入られたような形でインソースしたほうがいいと思います。
 
加治 それは、日本では非常に制度として起こりにくいですね。例えば、ホワイトハウスなんかはチームなわけじゃないですか。選挙キャンペーンで、まず2年間チームを組む。そこに民間の人たちも半分以上入っている。それで、2年間やって、勝てばそのまま4年間だから、最低6年間のチームで、しかも大抵2期あるから、10年間ぐらいのチームになるわけです。それは、ある意味、行政の一番中心の部分が自動的にインソースされているのではないでしょうか。また、ホワイトハウス後のキャリアも多くの選択肢があります。
 
 それに対して、我が国はというと、そこに民間人が入るというのは、なかなか行政の場合には難しい。そういうのを制度的にやっていくのはいいことなんじゃないかなと思いつつも、正直、そんなに民間の人が入っていって簡単にうまくいくとも思えないです。
 
藤井 専門性の高いITの分野では、政府CIO自身もCIO補佐官チームも民間人ですから、パブリック・ディプロマシーももっと開かれるといいですね。もう一つは、官僚の方自身がそういう能力をもっと持つことではないですか。
 
金子 でも、対外広報に特化したキャリアというのは外務省ですらないわけですからね。インテリジェンスの分野などもそうですが、それに特化して、いろいろな部門や省庁を回りながら昇進していけるというシステムになっていないですよね。
 
加治 だから今度の人事局がどうなるのか注目しています。トップは加藤勝信内閣官房副長官ですし。キャリアパスの最後のところが変わるわけですから、ものすごくインセンティブが変わる。
 
藤井 あと、一度辞めて民間に出た官僚の再登用という形のリボルビングドア。私自身、もと官僚ですが。

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