就学義務制度のほころびをこれ以上放置すべきでない

政策シンクタンクPHP総研 主席研究員 亀田徹

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どれだけ賛同者を増やせるかが鍵
 
 中央教育審議会では、数年前、「フリースクールなど学校外の教育施設での学修を就学義務の履行とみなすことのできる仕組み」が議題となり、審議が行われた。当時の意見の整理において積極論と消極論の両論が併記された後、議論はストップしたままとなっている。
 
 昨年成立した「いじめ防止対策推進法」は、いじめによって不登校になった場合の「学習に対する支援の在り方についての検討を行うものとする」と定め、不登校への対応を改めて検討する必要性を示している。いじめ対応という観点からも、中央教育審議会での議論を再開させる時期に来ているといえよう。いつまでも制度と現状との乖離を放置しておくわけにはいかない。
 
 国会においても議論を開始すべきだ。フリースクール環境整備推進議員連盟はすでに解散してしまっている。関係者の意見を集約して制度化の動きを促進するため、新たな検討の場を国会で設けるべきではないか。与野党の積極的な対応を望みたい。
 
 経団連も、多様な教育サービスから自由選択できる教育制度の導入を2002年に提言している。世論調査では、フリースクール等を義務教育として認めることに対し、6割以上の保護者が賛成した。制度化に対する支持が広がる可能性は高い。
 
 これまで「実現する会」では、新たな制度を考えるための集会を開くなどの活動を続けてきた。本年2月にはさまざまな教育施設が集まって実践の紹介や意見交換が行われた。骨子案に関する小規模な学習会も全国各地で開催されている。
 
 こうした活動により多様な学びを認めることの理解を広げることが不可欠だ。学校以外の場で学ぶ子どもの数は、子ども全体からすれば少数である。保護者を含めた当事者の声だけでは制度化を実現することは難しい。当事者以外の賛同者をどれだけ増やせるかが制度化の鍵となるだろう。
 
 ひとりひとりの状況に応じた学習機会を用意し子どもの力を伸ばすことは、社会全体にとっても有益であるはずだ。子どもの多様な育ち方を認めることは、風通しのよい社会の構築にもつながるのではないだろうか。

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