就学義務制度のほころびをこれ以上放置すべきでない

政策シンクタンクPHP総研 主席研究員 亀田徹

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議論はまだ続いている
 
 ひとつめの論点は、学習の質をどう保証するかという問題である。
 
 学校教育の質は、学校教育法や学習指導要領、教育職員免許法などさまざまな法令により担保されている。他方、フリースクール等についてはそうした法令や基準は一切ない。子どものペースに合わせて学習を進めることを基本的なスタンスとしているからだ。
 
 そうしたフリースクールで行われるような学習によって、社会生活を送るのに十分な力を育成できるかとの懸念も指摘される。
 
 現実には、学校で学ぶことになじむ子どもがいる一方、自分のペースで学ぶほうが合っている子どももいる。必要に迫られれば、子どもたちはおのずと学習するものとフリースクール関係者はいう。実際、フリースクールで学んだ後、職業生活を営んでいる者も少なくない。それぞれの子どもの状況に応じて学習の質の向上をはかるため個別の支援を行うことを骨子案は定めているが、支援の内容や方法が今後の議論のポイントとなる。
 
 ふたつめの論点は、新たな制度の構造として、教育施設を中心に考えるか、個人を中心に考えるかという問題である。当初の議論では、教育施設を中心に考えるという案もあった。すなわち、教育施設に関する一定の基準を設け、その基準を満たした教育施設で学習した場合には義務教育を受けたものとするという仕組みである。
 
 しかしながら、教育施設の細かい基準を設けてそれをクリアすることを一律に要求することは、第二の学校制度をつくることになりかねない。
 
 このため骨子案では、教育施設を中心に考えるのではなく個人を中心に考え、みずからの判断でそれぞれにふさわしい学習の場を個人が選択できるという構造としている。
 
 経済的支援も個人を対象としている。フリースクールなどに通うには費用がかかるため、経済的支援を行うことを骨子案では規定する。その場合、私立学校に対する助成のように教育施設に対して財政支援を行うことも考えられる。しかし骨子案では、学校以外の学習の場を選択した個人を対象に学習支援金を支給する仕組みをとっている。ただし、高校における就学支援金制度と同様、教育施設が学習支援金を代理受領できることを骨子案は定める。
 
 このような仕組みが妥当か、個人に対する学習支援金の使途を制限すべきかなどの点についてさらに議論を深めなければならないだろう。

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