「人が動く」雇用の規制改革の現場から

慶應義塾大学教授 鶴光太郎 (聞き手:政策シンクタンクPHP総研 熊谷哲)

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左から、政策シンクタンクPHP総研 熊谷哲・慶應義塾大学教授 鶴光太郎氏

今後の展望
 
−−−ここまで議論を積み重ねてきて、手応えとしてはいかがですか。
 
 いろんな考え方が出揃ってきていると感じています。また、規制改革会議も言いっ放しではなく、厚労省の審議会や研究会などにもインタラクト(相互作用)していくという、非常に重要なプロセスがうまく回り始めていると思います。
 
−−−大上段から振りかぶってものを言うのではなく、かといって各省にお任せにするのでもない。規制改革の事務局長をしていた当時の私も、緊張感のある協調関係をもちながら着実に改革を進めることを目指していたのですが、いまはうまく動いているということでしょうか。
 
 結局ね、対決型だと、そんなに進まないんですよ。外から見ると威勢よく見えますけどね。
 
−−−対立構造を面白おかしく報道されても、後押しになるとは限らないですしね。
 
 実際、政策の現場に立つのは省庁の人たちなので、そこの人たちがやる気をもってもらわないと進むわけがないんです。持ち場持ち場にいる人たちが、自分たちでなるほどと、理解して納得してやってもらわないと何も動かない。ただ、方向付けをちゃんとしてやると、驚くほどやるんですよ。過去の経緯も関係なしにやらなくてはいけないことも、理念と理屈がしっかりしていればやるんですね。やみくもに岩盤を叩けばいいとか、そういう話ではないんです。
 
−−−国内政治の環境としては、改革の機運が高まっていると思いますが。
 
 ある意味で、良い契機ができてきているのかなと思います。政権の支持も高いし、それなりに景気もいいし、失業率も相当低いところまで来ている。産業界と労働界も決定的な対立関係にはない。腰を据えて大きな改革に取り組める時期って、そうあるものではないですから。正社員という固定観念を振り払って、柔軟で多様な働き方を方向づける、いまが大きなチャンスだと思います。

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