景気悪化を避けるために、家計の消費を支えよ

PHP総研コンサルティングフェロー・嘉悦大学教授 跡田直澄

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投資・雇用減税はタイミングと内容次第
 
 一方、設備投資を促すための投資減税は、景気対策としての税制の中では、効果があると思われる。しかし、デフレ状況から脱却しきれていないタイミングで実施するのは控えるべきだ。供給が需要を上回っている状態では、減税になっても投資へのモチベーションは高まらないからである。来年の後半以降、アベノミクスが順調に進んで景気が上向いてきた段階であれば、投資に弾みがつく可能性も出てくる。今年度の補正予算ではなく、来年度の本予算で実施すれば、効果のある政策になるということだ。
 
 時期とともに考慮すべきは、中小企業が使いやすい内容にすることである。「研究開発につながるようなものに限る」といった制約をつけてしまうと、活用できる企業は体力のある一部の大企業に限られてしまう。これを、たとえば、研究機関などに調査を依頼した場合の費用や、さらにはパソコン購入費用なども対象として認めるのであれば、中小企業にとって活用しやすいものとなっていく。実施時期と内容を工夫すれば、投資減税には大きな効果を期待できる。
 
 また、賃上げ促進減税というものも発表されている。増税が先行して賃金が上がらなければ、心理的な負担感は大きく、消費の落ち込みは避けられない。そこで、いま賃金を上げれば法人税を減税するという政策だが、多くの中小企業にそれほどの資金的余裕はない。中小企業に勤める人が全雇用者の60~70%を占めることを考えると、このままでは消費に対する抑制は解消できない。したがって、役に立つのはやはり前述の現金給付ということになる。  

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