基本法の通常国会での成立に期待する

政策シンクタンクPHP総研 主席研究員 荒田英知

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水平補完、垂直補完による新たな基礎自治体像
 
 次に、道州制における基礎自治体のあり方について議論を進めた。鈴木浜松市長は「基礎自治体が県や国に頼っていたのでは道州制はできない。浜松市は合併によって市域の半分が過疎地の国土縮図型の政令市になった。現在、基礎自治体が自立するモデルとして、しずおか型特別自治市を提案している。県と合意もでき、全国初の事例として取り組みを進めていく」と述べた。
 
 畔柳副会長からは、「基礎自治体が行政体の原点として大事だが、1700の市町村をみると大小のバラツキが大きい。今後は人口ゼロ地帯も生じかねないという実態から考えれば、都市を中核としながら、周辺基礎自治体間の連携をいかに図るかが一つの方向性になる」とした。
 
 基礎自治体の将来像について、自民党の礒崎議員は、「道州制において、基礎自治体は市町村に加えて県の仕事も吸収するかたちになる。町村会は合併を危惧しているが、広域連合や一部事務組合で水平補完したり、道州が垂直補完することを想定している」とした上で、「もう一つの論点として国の関与がある。警察は県の事務、消防は市町村の事務であるが、国には警察庁があり消防庁がある。あらゆる行政分野に国の関与があり、これを切れるかどうかは一般論ではなく分野毎に決めなければならない。ここに道州制を考える時の難しさがある」と指摘した。
 
 基礎自治体に対する関与や補完のあり方について、公明党の遠山議員は「基礎自治体に自立の覚悟が問われるという時に、財源の有無が覚悟を左右する。離島のように、国が垂直的に補完しないとなりたたない基礎自治体があるのではないか。丁寧に議論を進めていくことが大事だ」と述べた。
 
 維新の会の松浪議員は、「今の日本の行政システムは限界に来ており発想の転換が必要。関与の糸をいったんはないものとして考えることも必要ではないか。基礎自治体のあり方については地域によって事情が異なるから、いかに当事者に納得してもらえるような方策を講じるかが大事。水平補完や垂直補完のプロトタイプを示して、それを地域がカスタマイズするという流れが妥当ではないか」と応じた。
 
 道州制における基礎自治体のあり方については、かつては一律再編論のような少々乱暴な議論も見受けられたが、水平補完や垂直補完による多様な基礎自治体像が基本法案に担保されることによって、議論の熟度は増していくものと期待される。
 

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