「隣近所の多文化共生」の課題─芝園団地の実態と実践から─
Talking Points
- 本稿では、外国人が人口約5千人の半分以上を占める芝園団地の実態から、日本人と外国人の関係に着目を置いた「隣近所の多文化共生」の障壁になる構造的な要因を考察する。また、同団地における実践を踏まえて「隣近所の多文化共生」を推進する具体的な取り組みを提案する。
- 同一地域に居住する日本人と外国人は、日本と母国の生活習慣の違いによって「迷惑な隣人」になりやすく、世代、文化、言葉などの違いや地域の社会構造によって「見知らぬ隣人」になりやすい。芝園団地ではこうした障壁を緩和すべく、自治会が、地元外部の学生や市役所などと連携しつつ、試行錯誤を重ねてきた。
- 日本人と外国人の間で、「共存(お互い静かに暮らせる関係)」と「共生(お互いに協力する関係)」を築くには以下のような取り組みが必要である。
・「共存」に資する取り組み(日本の生活習慣を伝える機会の確保)
−市区町村の転入手続き時の説明
−雇用企業のオリエンテーションの活用
−賃貸物件の入居手続き時の説明
・「共生」に資する取り組み(日本人と外国人の「接点」づくり)
−「接点」づくりを支援する第三者の配置
−地域住民の「接点」になる組織の連携促進
−情報発信等を通じた間接的な「接点」の拡大 - 隣近所の生活の土台としてまず「共存」を築き、直接的、間接的な「接点」の場づくりにより「ゆるやかな共生」を進めることが、「隣近所の多文化共生」の推進には欠かせない。