公共施設マネジメントにおける合意形成の進め方
―総論賛成、各論反対を突破するために―

佐々木陽一 (政策シンクタンクPHP総研 地域経営研究センター主任研究員)

Talking Points

  • 高度経済成長期に整備された大量の公共施設が一斉に老朽化し、その更新費用が地方自治体の財政に大きな影響を与え始めている。その対策の端緒として、公共施設の経営実態を可視化した「公共施設マネジメント白書」を作成する自治体が急増している。
  • その一方で、白書作成後の「ポスト白書」が新たな問題として浮上してきている。これは、公共施設の再編方針・計画と個別施設の具体的な見直し(廃止、統廃合など)について、前者の必要性は認めるが後者は反対するという、いわゆる「総論賛成、各論反対」のことである。白書で精緻な情報を整理しただけでは、この問題を乗り越えられない。
  • 福井県坂井市は、職員、議会、市民の3つのチャンネルを活用した合意形成により、この問題を乗り越えた。その成果は、「公共施設再編基本計画」の要素を実質的に含み、かつ、それは、庁内、議員、市民との合意形成を経た「実効性が高い」白書となって結実した。
  • 自治体公共施設マネジメントにおける合意形成の課題は、各課職員や事務局のコーディネート力の向上である。そのためには、職員、議員、市民に対して、公共施設の的確な経営情報を分かりやすく開示すること。また、「公共施設の数」と「市民負担」とのトレードオフの関係を提示した上で、個別施設を見直していくことが重要である。
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