アベノミクスによる政治的景気循環の行方
―憲法改正を視野に入れた財政再建戦略を描け―

宮下量久 (政策シンクタンクPHP総研 政治経済研究センター主任研究員)

Talking Points

  • 安倍政権は秋に消費増税を最終決定するため、増税の前提条件である名目経済成長率3%を実現しなければならないが、歳出を積極的に拡大させるあまり財政を悪化させては元も子もない。
  • 与党は参議院において過半数の議席確保のためにも、政策を総動員して景気回復を目指している。機動的な財政・金融政策が行われることで、景気が選挙時期に回復し、選挙後に悪化することを政治的景気循環という。
  • 安倍政権の経済・財政運営(アベノミクス)は財政規律を損ないつつある。総理は「着実な財政再建」を経済財政運営の4本目の矢として検討する必要があり、20年までの基礎的財政収支の黒字化を目指す「財政運営戦略」を本格的に見直すべきであろう。
  • 歳出削減の本丸である社会保障改革は雇用政策の見直しと一体的に進めるべきである。働きたい人はいつまでも働ける環境が整備されることで経済的に自立した人が増えれば、政府は社会保障の歳出抑制と雇用拡大による税収増加という一石二鳥の効果を期待できる。
  • ノーベル経済学受賞者のブキャナンが指摘するように憲法改正も視野に入れた財政健全化を検討しなければ、安倍政権は橋本政権の二の舞となり、財政再建に失敗する恐れがある。
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