【提言報告書】
新しい「国富」創成のグランドデザイン
― 人口減少・激甚災害・パンデミックを契機に土地・住宅政策のパラダイムを転換せよ―

近年、人口減少に伴う空き家、所有者不明土地の増加など資産の低・未利用化が進んでいます。また、頻発する激甚災害は国民の生命・財産に甚大な被害をもたらしています。今般のコロナ禍も加わって、都市のあり方も根底から問われています。わが国の「国富」(資産から負債を差し引いた国全体の正味資産)の中で大きな比重を占める土地や住宅の価値を毀損させることなく、最大化していくことが課題です。

にもかかわらず、国・自治体の対応は後手に回っており、国富の縮小、国・地方の負担の拡大を招きかねない現状にあります。かかる悪循環を断ち切るためにも、中長期的な視点に立って、資産の「多様性」と「流動性」を高め、さまざまなリスクに耐えうる資産の「適応性」(アダプタビリティ)を拡大することで、生産性向上、経済成長の推進力のダイナミズムを生み出す政策立案が急務です。

そこで、政策シンクタンクPHP総研は、資産価値の毀損防止、法律・制度や行政機構の抜本的改革、国民の社会的慣習のパラダイムシフトのあり方など、新国富創成に必要な国家の大計を提言すべく、学識者、実務者などから成る研究会を設立し、ヒアリングと議論を重ねてまいりました。2019年7月の中間発表を経て、このたび、その成果を提言報告書『新しい「国富」創成のグランドデザイン-人口減少・激甚災害・パンデミックを契機に土地・住宅政策のパラダイムを転換せよ-』として公表することにいたしました。

この提言報告書では、①多極連携の国土が形成されている、②国民が多様な土地・住宅を自由に選択でき、豊かなライフスタイルを送っている、③災害リスクが最小化され、土地・住宅の社会的価値が最大化されている、④より開放的で、災害にも強いコミュニティが形成されている、を「目指すべき未来像」に掲げ、その実現のために、土地・建物の流動性と多様性を高める7つの原理・原則とそれらに基づく具体的な処方箋を提言しています。

1.
不動産に関する政策体系を「クローズドレジーム」から「オープンレジーム」に転換
2.
土地・建物における選択の自由度を高める税制を構築
3.
新たな国富創出に関する情報を開示・共有
4.
不動産問題には事後的対応ではなく事前的対応が必要
5.
国民のリスクリテラシーを高め、モラルハザードを最小化
6.
土地・建物の購入や利用は「私的選択」ではなく「公共選択」として認識
7.
国土形成は一極集中ではなく多極連携が必然

本提言報告書が、わが国の新しい国富創成という重要テーマについて、政治、行政、企業、国民のさまざまな場面で議論されるきっかけとなることを願うものです。

〔NEW〕

■(一社)住宅生産団体連合会の機関誌『住団連』令和4年秋号において、PHP総研のプロジェクト「新国富創成研究会」が発表した政策提言と講演を基にした記事が掲載されました。住団連が2022年3月に発表した提言「住生活産業ビジョンVer.2021」の内容と対比しながら、住宅・土地政策のあり方を論じています。

 >>全文公開(住宅生産団体連合会、2022年10月公開)はこちら

 

■『日本不動産学会誌』(Vol.35 No.2、2021年9月)において発表された、「新国富創成研究会」での議論をベースとする特集「多元的リスク時代の新しい国土利用にあたって」が、2022年10月より閲覧できるようになりました。本特集は、研究プロジェクトメンバーによる提言を含む9つの論説で構成されています。

 >> 全文公開(J-stage、2022年10月公開)はこちら

 

PHP新国富創成研究会メンバー

 

山崎 福壽
(共立女子大学ビジネス学部教授) ※座長
川崎 一泰
(中央大学総合政策学部教授)
佐藤 康之
(松田綜合法律事務所パートナー弁護士、東京大学工学部非常勤講師)
蛭間 芳樹
(日本政策投資銀行調査役、世界経済フォーラム ヤング・グローバルリーダー)
宮下 量久
(拓殖大学政経学部准教授、政策シンクタンクPHP総研客員研究員)
佐々木 陽一
(政策シンクタンクPHP総研主任研究員兼シニアコンサルタント)
(敬称略、順不同)

【内容】

新国富創成研究会の設立趣旨
本政策提言のフローチャート
目指すべき未来像
1.
多極連携の国土が形成されている
2.
国民が多様な土地・住宅を自由に選択でき、豊かなライフスタイルを送っている
3.
災害リスクが最小化され、土地・住宅の社会的価値が最大化されている
4.
より開放的で、災害にも強いコミュニティが形成されている
国土利用の持続的な新陳代謝こそが『新国富』創成のエンジン
不動産価値を最大化し、次世代へ継承する意義
目指すべき未来像の実現を阻む7つの課題
土地・建物の「流動性」と「多様性」を高める原理・原則
土地・建物に関する諸課題と提言
Ⅰ. 不動産に関する政策体系を「クローズドレジーム」から「オープンレジーム」に転換
提言Ⅰ−①:
多様なルールを構築し、土地・建物における多様な選択肢を提供
提言Ⅰ−②:
官主導ではなく民主導によるまちづくりを推進すべき
提言Ⅰ−③:
復興庁を改組して「国土創成庁」を創設せよ
提言Ⅰ−④:
地震再保険を特別会計から分離し、海外へ出再
Ⅱ. 土地・建物における選択の自由度を高める税制を構築
提言Ⅱ−①:
相続税は廃止も見据えた改正が必要
提言Ⅱ−②:
固定資産税は住宅課税を廃止し、小規模宅地の特例を撤廃
提言Ⅱ−③:
消費税は住宅サービス利用時の家賃を踏まえて課税
提言Ⅱ−④:
所得再分配を改善するため住宅ローン減税を廃止せよ

 

Ⅲ. 新たな国富創出に関する情報を開示・共有
提言Ⅲ−①:
土地・建物に関する情報流通を促進する環境を行政が整備すべき
提言Ⅲ−②:
損害保険会社は不動産の評価・情報整備に積極的に関与せよ
提言Ⅲ−③:
新たな国富を創出するデータガバナンスを再構築

 

Ⅳ. 不動産問題には事後的対応ではなく事前的対応が必要
提言Ⅳ−①:
災害費用を軽減するために民間保険を積極的に活用すべき
提言Ⅳ−②:
空中権の取引等により、居住地を誘導する政策・制度を実現せよ
提言Ⅳ−③:
空き家除去費用を事前徴収せよ

 

V. 国民のリスクリテラシーを高め、モラルハザードを最小化
提言V −①:
災害保険への強制加入と危険地域の居住抑制を一体的に進めよ
提言V −②:
地震保険の満額補償を新耐震基準の建物に限定する
提言V −③:
人生100 年時代のリスクリテラシーを強化すべき

 

Ⅵ. 土地・建物の購入や利用は「私的選択」ではなく「公共選択」として認識
提言Ⅵ−①:
賃貸借契約における更新拒絶の「正当事由」を地域限定で緩和する
提言Ⅵ−②:
土地・建物の適正な明渡しについての基準の明確化
提言Ⅵ−③:
弱者への住宅救済は家賃補助に転換せよ

 

Ⅶ. 国土形成は一極集中ではなく多極連携が必然
提言Ⅶ−①:
道州制へ移行せよ
提言Ⅶ−②:
一極集中型から多極連携型への転換
提言Ⅶ−③:
混雑税の導入やテレワーク費用の非課税化で都市の過密問題を解消

 

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