統治機構改革プロジェクト

 本プロジェクトは、平成期以降、とくに橋本行革以降に取り組まれた統治機構改革について、グローバル化の進展や社会の変化、技術革新等の現代日本を取り巻く環境変化を踏まえつつ、民主的統制とのバランスを取りながら、機能を発揮することができたのか、これまでの経緯を検証しつつ、今後目指すべき方向性を示そうとするものである。
 政治(政党、政治家)、行政(官僚)、メディア、国民、それぞれのアクターは、今後、何を堅持し、何を改善していくべきだろうか。
 これからの社会や国家のあり方を考え、あらためて、踏まえるべき原則と与件を明らかにしながら、国民-国会-内閣(政府)の関係、さらには、これをつなぐ道具立て(あるべき方向に向かうインセンティブ等)、結果としての統治機構の姿について、明らかにしていきたい。
 研究成果は、提言書を作成し公表の予定。

統治機構改革プロジェクト

<研究会メンバー>

松井孝治
(慶応義塾大学総合政策学部教授)
牧原出
(東京大学先端科学技術研究センター教授)
待鳥聡史
(京都大学法学部教授)
宍戸常寿
(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
砂原庸介
(神戸大学大学院法学研究科教授)
山本龍彦
(慶応義塾大学法科大学院教授)
金子将史
(政策シンクタンクPHP総研首席研究員)
亀井善太郎
(政策シンクタンクPHP総研主席研究員、立教大学大学院特任教授)

<研究会顧問>

前田和敬
(公財)日本生産性本部理事長
永久寿夫
(株)PHP研究所取締役・専務執行役員、PHP総研代表

(敬称略、順不同)

【内容】

問題意識および目的

 近年進められてきた我が国の統治機構改革は、これに先駆けた政治改革、つまり、衆院における小選挙区制の導入による政権交代を可能とした流れを踏まえ、戦後55年体制の下で続いてきた「与党・官僚内閣制」を、議院内閣制という枠組みを活かしつつ、国民主権を強く意識した形で進められた。そこには、世界の趨勢となりつつあったグローバリゼーションや国家も巻き込んだ激しい経済競争を踏まえ、そこに求められる意思決定のスピード化、そして、国民主権をベースにした民主的統制の双方のバランスを強く意識したものであったと考えられる。

 90年代後半以降の橋本行革においては、中央省庁改革が行われ、内閣府や経済財政諮問会議が創設された。内閣府は内閣官房の総合戦略機能を助け、行政事務を分担管理する各省より一段高い立場から企画立案・総合調整等を行うため、内閣総理大臣を長とする機関として新しく設置されたものだ(2001年)。続いて、2000年代には日本版NSC(国家安全保障会議、国家安全保障局の内閣官房への設置)の創設が提唱され、2013-2014年に発足に至った。内政、外交安全保障の司令塔を有する官邸機能は強化され、総選挙によって国民から選ばれた首相への権力の集中を進めさせた。

 さらには、「国家公務員法等の一部を改正する法律」による内閣法改正によって、内閣人事局が2014年に設置され、霞が関の幹部人事の一元的な管理が進められた。これは、橋本行革以来の大きな流れを踏まえたものであり、行政の分担管理の制約の下、国民主権、すなわち、選挙によって選ばれた首相が統治する方向性をより強めたものである。

 最近、森友問題に関連し財務省の文書改竄問題等が話題となり、これを契機に平成デモクラシー、とくに橋本行革以降の統治機構改革のあり方について、政と官の関係を中心に見直すべきとの声が聞かれるが、果たして、これまでに目指してきた方向性に誤りがあったのだろうか。また、その具体策としての打ち手や個々の運用に課題があったのだろうか。
 また、設計当時には想定されなかった点(されたがそれ以上であった場合も含む)まで踏まえれば、とくに、上記のグローバリゼーションの流れやデフレ経済の長期化はもとより、情報コミュニケーションに関する技術の進化による社会への影響、さらには、災害等のリスク対応を考えれば、これらの制度および運用について、改善すべき点があるとすれば、それは何だろうか。

 本プロジェクトは、こうした問題意識を踏まえ、橋本行革以降の統治機構改革の方向性および具体策(運用を含む)について、求められた背景と民主的統制とのバランスのとり方といった理念の検証から始め、成果と課題を明らかにしたうえで、政治(政党、政治家)、行政(官僚)、メディア、国民、それぞれのアクターが、今後、何を堅持し、何を改善していくべきか、実務の視点から明示しようとするものである。

活動状況

研究会のキックオフとなる第一回研究会を5月29日に開催しました。

本研究会を設置した問題意識および目的、研究会における想定される論点について、亀井(PHP総研)が説明し、メンバーで活発な議論を交わしました。
現在の統治機構は、90年代後半の橋本行革に遡るものであり、その着眼点が、国民主権に基づく民主的統制という「理念」と進展するグローバリゼーションや高齢化の加速等の社会の変化といった「与件」に対応できる政治の両立にあったのではないかという現時点の仮説はもとより、今後の検討にあたっては、これまでの検証と共に、理念と与件の様々な変化を併せて見ていく必要があるという研究会の進め方についても確認しました。

第二回研究会を6月13日に開催しました。

松井孝治さん(慶応義塾大学総合政策学部教授、元内閣官房副長官、元参議院議員、元行政改革会議事務局調査員)、荻野徹さん(元行政改革会議事務局調査員、原子力規制庁次長)のお二人に、橋本行革当時の検討プロセスを中心に、橋本行革が目指したもの、そして、その後の政治や行政、さらには社会の動きを踏まえた成果と課題について、お話いただき、メンバーと活発な議論を交わしました。

第三回研究会を6月26日に開催しました。

清水真人さん(日本経済新聞編集委員)に、最近発刊された『平成デモクラシー史』に書かれた内容を中心に、経済財政政策、とくに少子高齢化に伴い必要とされる財政健全化の観点から、統治機構の変化が何をもたらしたのか、お話いただき、メンバーと活発な議論を交わしました。

第四回研究会を7月31日に開催しました。

甘利明さん(衆議院議員、自由民主党行政改革推進本部長、元経済再生担当大臣、元内閣府特命担当大臣、元経済産業大臣)に、これまでの数々の経験を踏まえ、橋本行革以降の統治機構のあり方(成果と課題)、とくに、コア・エグゼグティブ(中核的執政)のあるべき制度と具体的な運用、政と官の関係等について、お話いただき、メンバーと活発な議論を交わしました。

第五回研究会を8月1日に開催しました。

大屋雄裕さん(慶応義塾大学法学部教授)に、平成期の政治や行政等に関する制度改革(選挙制度、内閣機能強化、地方分権、司法制度)の方向性が一貫性を欠いたものであったとの反省を踏まえ、今後の統治機構改革を検討する際に求められる「国家と社会のグランド・デザイン」のあるべき姿について、社会課題の変容や技術進化の進展等を踏まえ、問題提起をいただき、メンバーと活発な議論を交わしました。

第六回研究会を9月7日に開催しました。

福田康夫さん(第91代内閣総理大臣、元内閣官房長官、元衆議院議員)に、内閣の首班、また、国家の中枢を担われた豊富な政治経験を踏まえ、橋本行革以降の統治機構のあり方(成果と課題)、とくに、中長期の課題に取り組むための政治や行政のあり方、あるべき制度と具体的な運用、政と官の関係等について、問題提起をいただき、メンバーと活発な議論を交わしました。

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