「問題解決ができるかどうか」に徹底的にこだわりたい
――かものはしのインターンで成長した人たちは、かものはし卒業後、きっとどのセクターに行っても活躍する人材になっていると思いますし、NPOやNGOのスタッフになるというかたちでなくても、社会課題解決に対する意識や志を忘れずに人生や仕事につなげていけそうな気がします。最後に、かものはしのインターン生のような、社会課題を解決するとか、社会に価値を提供できるような人材を育てるためにとくに日本社会に必要なことは、どんなことだと思われますか?
青木:かものはしでインターンをすることです、と言いたいところですが(笑)、営利企業でも非営利団体でも、それが仕事でなくても、社会の課題っていくらでもあって、それに対するアプローチもいくらでもあるじゃないですか。それでも解決されていない課題がたくさん残っているということは、お金がつかないのか、そもそも見過ごされているのかはともかくとして、継続的にエネルギーを注いでその課題に向き合える人があまりいないからだと思うんです。
なにかに目を向けて、力を傾けるということは、それが自分の内面から湧き出るものであったり、受益者の方からエネルギーをもらえるとか、相互にエンパワーメントし合えるような関係性を築けるものでなければ続きません。そのときに大事なのは、取り組む内容とかやり方とかじゃなくて、他人にどう言われようが、本当に自分はそれをやりたいと思っているかどうかということだと思います。「社会的にこれをやらないとやばい」ではなくて、自分がわくわくするかどうかで決める。そんな決め方を増やせる社会になっていけばいいと思います。
そのためには、半年とか数年とか、「これは自分とつながった、自分のプロジェクトだ」と思えることにチャレンジする機会を増やしていくことだと思います。変な人や変なプロジェクトもいっぱい出てくると思いますが、そうしたチャレンジを受け入れる、応援する空気になるということが大事なんじゃないかなと思います。
やっぱりエネルギーなんですよね。課題解決のためにずっと活動し続けるエネルギーがあるか。そのエネルギーは何が生み出すのか。社会起業家でも、バーンアウトしてしまう人も多いですからね。
最近はソーシャルビジネスのすそ野も広がってきて、社会課題解決を仕事としてやれる人も増えて来ています。ボランティアとして活動するのではなく、給料もちゃんと支払えるNPO・NGOが増えて来ている。具体的にどのくらい増えているのか統計的には把握していませんが、NPOが仕事として認識されるようになってきていて、「食べていけないからやめます」という言い訳はできなくなってきていますよね。
国際協力という文脈でいうと、いまやっているように国際協力に携わったりできるのってけっこうレアなチャンスだと思っています。僕は大学まで行かせてもらえて、バイトもしないで活動に没頭できるくらい経済的な条件も整っていたし、僕が生まれ育った日本という国がカンボジアよりも経済的に発展していて、いろいろやれることがあったとか。それって僕の努力によるものじゃないんですよね。僕と同じ年にカンボジアで生まれた人には、そういうチャンスはなかった。
そういうことに思いを馳せると、いま僕たちがやっているような活動というのは、権利でもあるし、義務でもあるし、すごくやりがいのあることだっていう感覚があります。その問題を知ってしまって、やれる方法も今はあるのに何故やらないのか、ということです。ぐずぐずしていると30年後にはまた状況が変わって、いまみたいなことはできないかもしれない。日本にも貧困とか格差の問題が迫ってきているわけで、やっぱりいろんなことに影響されますから。だから、いまやれる状況にあるということはラッキーだし、いまやっていかなきゃならないんですよね。
カンボジア人からすれば、何人が社会をよくしてくれるかということはあまり重要じゃないんだと思います。そこからエネルギーを得られる人であれば、カンボジア人でも日本人でもどこかほかの国の人でも、やれる人がやるというのが大事だと思います。もちろんその偶然やご縁には感謝しないといけません。いま僕たちがこうして活動できるのは、日本の親の世代ががんばってくれたから。そのレールの蓄積があるからだという感覚がすごくあるので、僕たちは僕たちのやるべきことをやりながら、そのレールを次の世代に引き継げるようにもがんばれたらと思います。
――本日はありがとうございました。
青木 健太(あおき けんた)*2002年、東京大学在学中に、「子どもが売られない世界をつくる」ことを目指し、村田早耶香氏、本木恵介氏とともに「かものはしプロジェクト」を立ち上げる。IT事業部にて資金調達を担当した後、2008年よりカンボジアに駐在し、コミュニティファクトリー事業を担当。
【写真:長谷川博一】