柔軟な選択肢が提供される社会をめざして

認定NPO法人 育て上げネット 工藤啓 (聞き手:PHP総研 山田花菜)

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――たしかにそうですね。いま、私自身もいかに当事者や現場と出会うことなくイメージだけで考えていたか、はっとさせられました。
 
工藤:これまではひきこもり状態であったり、いじめられているとか、コミュニケーションが苦手といった若者、子どもたちの支援をしてきたんですが、私たち自身もかかわりが薄かった分野にも関わらせていただきたいと、この数年、少年院などとも関係をつくっています。
 おおむね貧困や虐待が問題の根底にあるんですが、それがリストカットとか自殺というかたちで出るか、ものを盗んだり人を傷つけるというかたちで出るか。非社会化するか反社会化するかの違いはありますが、経済性に限定しない多様な貧困による影響が幼少期から蓄積されてしまった結果なのだと意識するようになりました。
 育て上げネットが若者や子どもたちに特化しているのは、早い段階でいい状態にもっていって、それが持続できるように支えていけば、角度は浅くても、何年もすればだんだん大きな差が開いていくからです。だから、早い段階で角度をつけていくことが大事だと思っています。いまは小学校4年生までアプローチできるところまで来ていますが、どこまでいけるか、どこまでいくのかも考えています。
 そうした小さな成功事例をどう標準化して、法律や制度に落とし込むかということにも取り組み始めました。
 現場での支援で精いっぱいになっていると、なかなかそういう活動はできないのですが、このセクターでも少しずつ取り組める団体が増えて来ています。フローレンスの駒崎さんを筆頭に、新公益連盟という組織をつくりました。今後は非営利組織もいま以上に協働し、多様なセクターとともに大きな動きを作っていく傾向が強くなっていくのではないでしょうか。
 
――現場の活動をある程度任せられるくらいに組織がしっかりしてきたら、新公益連盟などでより大きな動きを生み出す取り組みにも参加していくということですね。
 
工藤:そうですね、もちろん団体によってばらつきがありますが、だいたいはそうした活動ができるメンバーがまずは汗をかくことになっています。新公連として具体的にどんな活動をしていくのかはこれから考えなければいけないんですが、経団連や新経連などに習いソーシャルセクターもコレクティブに集い、社会への働きかけをしていく時代になりました。

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