社会課題の解決が加速する社会を目指して

一般社団法人 防災ガール 代表 田中美咲 (聞き手:PHP総研 山田花菜)

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3、やわらかい頭で社会課題の解決を
 
――最後に、私たちPHP総研は政策シンクタンクとして政策提言を行っています。防災ガールの活動に限らず、社会課題の解決に取り組むにあたって、行政などに働きかけたいことがあれば、教えてください。
 
田中:ソーシャルスタートアップと呼ばれる、社会課題解決のために立ち上がった私たちのような若者がチャレンジできる場がすごく少ないということに、課題を感じています。防災面ではチャレンジの場もたくさんいただいていますが、たとえばドローンでAEDを運ぶということにチャレンジしようとしても、ドローンを飛ばせる場所が少ないので、なかなか前に進めないとか。行政の規制によって社会課題の解決に時間がかかるというケースは少なくないと思うんです。
 
 国はよく「若者のリーダー育成」とか「生き抜く力」を掲げていますが、現場ではなかなかそれを実行できていないというのはよくあるパターンですよね。そのやり方やノウハウを持っているスタートアップは実はけっこういるので、外からプロを呼ぶというか、スキルのある若者をもっと積極的に活用する考え方を持ってほしいなとも思います。
 
 「防災ガール」の活動でいえば、防災教育の仕組みや若者をリーダーにする仕組みはある程度できましたが、「予算がなくて、うちではできません」という自治体も多い。年度初めに立てた年間予算ですべてやらなければならない、ソフト面の防災の予算のつけ方がわからない、国に予算請求を通すためには成果物が目に見えるかたちで出てくるハードでないと難しいといった現実があって、防災ではソフト面がとても大事なのに、予算がとれないから対策が遅れてしまう。そういう現場に何度も遭遇しているので、もっと頭をやわらかくして、リスクはあるかもしれないけれど一緒に挑戦してほしいなと思っています。
 
――防災って、「これがなくていま困っている」というものではなく、来たるべき危機に備えるものだから、予算の根拠がつけにくいですよね。危機が起きてはじめて「ほら、やっていてよかったでしょう」と言えるんでしょうけど。
 
田中:そうなんです。まさにその理由で、防災ガールを立ち上げるときも、「防災で食っていくなんて無理だ」と多くの方から言われました。なので、団体としても「そこをきっちりクリアしよう。業界を変えよう」と決めて活動を始めました。いま、防災ガールの活動で3人のスタッフがなんとか食べていけているので、防災でも食っていけるぞ、というところを示せているかなと思っています。
 
 お金を稼ぐための活動にはならないようにしていますが、防災業界に限らずこうして意味のあるかたちで社会課題を解決しつつ、ちゃんとお金も稼いでいる組織をつくることができたということは、ひとつの解決モデルになれるのではないかと思っています。がんばらないと。
 
 国が社会的インパクト指数をきちんととって、営利・非営利、売上規模や人員規模といったものにしばられず、「この団体の取り組みがどれだけ社会を変えているか」ということをきちんと可視化できるようになれば、みんなその団体を伸ばそうと応援すると思うし、小銭稼ぎのNPOは淘汰されて、社会課題解決のスピードも上がっていくと思います。そんな社会になっていくといいですよね。
 
――本日はありがとうございました。
 
田中 美咲(たなか みさき)*1988年奈良県生まれ、横浜育ち。2011年、立命館大学卒業後、株式会社サイバーエージェント入社。ソーシャルゲームの制作を手掛ける傍ら、東日本大震災の被災地支援に携わる。2012年に同社を退社し、公益社団法人助けあいジャパン入社。福島県で支援事業に従事。2013年に防災に関する普及啓発を行う任意団体「防災ガール」設立。2015年に法人化し、代表に就任。現在に至る。
 
【写真:長谷川博一】

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