社会課題の解決が加速する社会を目指して
2、判断基準は「お金がなくても続けたいと思えるか」
――組織運営についても少しお伺いしたいと思います。組織として活動していくためには、人材、資金、モノ、情報、スペース等いろいろなものが必要だと思いますが、どうやって集められていますか? また、もっとも集めるのが大変なものはなんですか?
田中:人については基本的にはインターネットで集めています。初めは復興支援仲間から始まって、その友達に広がっていって、それがムーブメントになって、ツイッターやフェイスブックを見て「入りたいです」と言ってくれる人が出て来て、という感じです。メディアを見て集まってくれた人たちで、いまは全国から集まり100人くらいでの活動になっています。
コアメンバーとして運営の中核に入ってもらうときには、会ってみて、一緒に仕事をしやすいかどうか、同じビジョンを共有できているかどうかを確認させてもらっています。
お金については、ビジョン達成のための事業でのみ稼ぐと決めています。はじめからお金を求めると、お金を稼ぐための団体になってしまうので、私はそれは絶対したくないんです。「お金がなくても続けたいと思えるか」を基本にして、考えて、防災を若者に広めたいという私たちの思いに合致するお仕事ならやらせていただくし、そうでないのであれば、どんなにお金がよくても絶対にやらない。そうやって、相性のいいところとだけお仕事をして、お金をいただくようにしています。
――おお、素晴らしい。ミッションがぶれることがなさそうですね。
田中:新しい事業に手を広げすぎて、「結局なにがやりたいの?」と思ってしまう団体も多いですよね。そうなると、結局なんの社会課題も解決できない、自分たちの生活を維持するための活動になってしまう。そうなってしまうと、私たちがその活動をする意味ってないですよね。
防災ガールもそうなってしまいそうな危うい瞬間は何度かあったのですが、私、「ああ、やりたくないな」と思うと旅に出てしまうんですよ(笑)。そうすると、事務局のメンバーも気づいてくれて「代表がやりたくないことなら、やめましょう」と判断してくれる。違うと思ったら、本当にさっと引きます。
――そんな田中さんがこれから新しく取り組もうと思われていることがあれば、お伺いできますか?
田中:先にお話しした地図情報を使ったグッズ開発がひとつ。
もうひとつ、「#beORANGE(ハッシュビーオレンジ)」というプロジェクトを始めようとしています。津波防災をもっと大きなムーブメントにしようというもので、3つの行政と連携が決まっています。
津波についても、地震と同様「防災しましょう」というだけでは変わらない。なので、津波発生時に避難所が視覚的・直感的にわかるように、避難所となるタワーやビルにオレンジ色の旗を掲げよう、というプロジェクトです。アートでもありムーブメントとしてのようなおしゃれなかたちで津波防災に取り組もうということで、沿岸部の3市町村と協力してアクションを起こそうとしています。
――なぜオレンジなんですか?
田中:海から見てもわかりやすい、視認性のもっとも高い色がオレンジだったんです。
防災ガールのテーマカラーは安心・安全や落着きを表す緑なんですが、海って、真っ青ではなくて、グレーだったり緑だったりするので、緑の旗では景色に紛れてしまうんですよね。赤や黄も意外と目立たない。なので、発色のいいオレンジを掲げることで、「緊急時にはここに逃げろ」というゴール地点を示したいと思っています。
日本財団さんから助成金をいただいて、3つの自治体と、現地のメディアと、現地の大学生も巻き込んだプロジェクトで、私たちは全体の仕掛けや仕組みはつくりますが、実際に回していくのは地元の人でないと意味がないので、一緒にやりながら、現地の人たちで回せるように引き継いでいきたいなと思っています。