防災が当たり前の世の中をつくりたい

一般社団法人 防災ガール 代表 田中美咲 (聞き手:PHP総研 山田花菜)

SABOIポーチ
SABOI(写真提供/防災ガール)

2、暮らしをよくすることが「結果的に」防災になる
 
――田中さんご自身は、日常生活にどのように防災を組み込まれていますか?
 
田中:私はそこまで本格的な防災グッズを備えているわけではないのですが、毎日家族と何かしら連絡をとるようにして、緊急時でも連絡がとり合えるような仕組みを継続しています。また、どんな仕事でもスニーカーで行くようにしたり、体調管理や防寒のために、薄着のときでも上着やストールを持ち歩くようにしたり。
 普段からある程度の距離を歩けるような体力をつけておくこともそうですし、非常食も、いわゆる乾パンのようなものを備えるだけでなく、普段から少しでも長い間食べられるものを食卓に取り入れる。具体的には、コンビニ弁当のようなものは極力利用せず、長期間保存できる野菜をピクルスや漬物にして常備したりしています。無理なく暮らしをよくすることが、結果的に防災につながっている、というかたちが心地いいなと思っています。
 
――なるほど、それなら日常生活でもふつうに消費していけますし、なにか災害が起きた場合には、救助が来るまでの保存食になるわけですね。完売してしまったようですが、防災ガールで、折りたためるフラットシューズなどが入った、かわいいポーチもつくられていましたよね。「いかにも防災袋です!」って感じでは、ふだんから持ち歩こうとはとても思わないけど、あれなら通勤バッグに入っていても違和感がないと思いました。
 
田中:「SABOI」ですね。「SABOI」は「防災」をもじったブランド名で(笑) 、マスクなどが入った防災ポーチ、折りたためるフラットシューズ、災害時のいろんな知恵が模様として書かれたてぬぐい、美容食にも非常食にもなるグラノーラ・バーの4種類のグッズを1,000セットずつつくりました。
 とある企業さんから、「高知の資源をつかった防災グッズをつくってほしい」というご依頼をいただいて、企画したものなんです。
 
SABOIフラットシューズ
 
――なぜ高知で防災グッズを?
 
田中:高知は、これまで特別大きな地震に見舞われたりはしていませんが、「台風銀座」とも呼ばれていますし、南海トラフ地震が起きたら、34メートルの津波が来ると言われているところなんです。なので、防災推進県を名乗るくらい、防災対策に熱心に取り組まれています。住民の皆さんが実際にどれだけアクションをしているかは別ですが、防災のパンフレット、防災テレビ、防災関連の企業は、高知にはたくさんあるんですよ。
 
――「SABOI」は完売ということですが、もうつくられないのですか? 
 
田中:同じものを追加でつくるというより、前回とは違うニーズに応えたり、新しいチャレンジのためのグッズを、いま開発準備中です。
 「SABOI」は、見た目がおしゃれとか、サイズがコンパクトでふだんから携帯しやすいというところに着目して開発したのですが、今回は、「ハザードマップをいかに身近に感じるか」を焦点に、地図情報を使ったグッズを開発中です。
 スマートフォンが普及してから、若い世代はとくに、地図を読む習慣がない。Googleマップで調べれば、現在地から目的地まで丁寧にナビをしてくれるから、自分では半径15メートル程度しか見ていないんですよね。そうではなくて、ハザードマップを見る習慣をつけてほしい。まだ開発中ですが、クラッチバッグの柄をハザードマップをアレンジしたものにするとか。ぷっくりした高さ表示のできるデザインなら、子どもたちも触って楽しいし、避難所がどの高さにあるかが感覚的にわかりますし。ファッションアイテムとしておしゃれで、いざというときにはハザードマップとして使えるものができないかな、と考えています。

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