企業が良心を持って行動すれば、社会はきっとよくなる

NPO法人 ブリッジフォースマイル 代表理事 林恵子

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――順調なスタートとはいかなかったんですね。

:本当にガツガツしていたので。なんというか、「会社で認めてもらえない」「子育てだけで終わっていいんだろうか」みたいな焦りがあって。私は26歳と28歳で子どもを産んだので、まだ大したキャリアもつくっていなくて、自分自身にまだあまり自信が持てなかったんですよね。産休分遅れているので、同期がどんどんキャリアアップしていく中で、置いて行かれているという感覚もあったし。

 ……というのが私自身の活動開始のきっかけなので、私はボランティアさんが活動に参加する動機って、なんでもいいと思っているんです。私の場合、「子どものために」がいちばんの動機ではないということを自覚していたので、最初は後ろめたさがあったんです。

 だけど、施設職員の方から「動機はなんであれ、なにをするかが大事ですよ。ただし、『なにをするか』の中に、その動機がどういうかたちで影響するのかは気になるところです」というふうに言っていただいて、励まされました。

 私の活動スタートはそんな感じで、すごく失敗もしたんですが、なんとかやっているうちに、だんだん子どもたちの実態が見えてきたり、子どもたちの感情に寄り添ったりすることができるようになってきました。本当に、すごく時間がかかりましたけど。

 職員の方に「子どもたちは、こういう気持ちなんだよ」と教えていただくこともありました。やっぱり、自分の想像力だけではわからないんですよね。経験したことのない人間が、想像力だけで的確な判断をするということは難しくて、それはやっぱり自ら体験することで腑に落ちるということも必要だし、わかりやすい言葉で説明してもらうということも大事。それがないと、正しい理解というのはなかなかできないんですよね。

――児童養護施設の問題を知るきっかけとなった研修でつくったプランはどうなったんですか?

:ちょっとずつ形を変えながら、いまも生かされています。たとえば、『巣立ちハンドブック』という本があるんですが、この原型は研修のときに考えられたものです。

 「不動産契約をするためには」とか「ひとり暮らしの必需品」とか、ひとり暮らしのヒントが60個紹介されているんですが、最初につくったものは、足りないものを補いたい一心でとにかく情報を詰め込んだもので、漢字もいっぱい入っていて、「いやいや、こんなに読めません」と言われたりもしましたね(笑)。

 現在の『巣立ちハンドブック』は、イラストもたくさん入っていて、絶対に伝えたいことだけ、要点を絞ってメッセージにしています。「ここだけ押さえておいてくれれば、あとは困ったことが出てきたときに相談してね」というかたちで、「こんなポイントがある」ということだけわかってくれたらいいかな、と。

 たくさんの情報をいっぺんに詰め込んで結局全部忘れてしまうよりは、本当に大事なメッセージがひとつ残るほうがいいし、子どもたちの実情をふまえると、自立というのは知識を持てば完璧になるというものではなくて、体験して、失敗して、悩んでというプロセス自体が大事だと思ったので、「最初に伝えるべきことは、これでいいね」ということになりました。

――情報をかなり絞り込んで伝えるようにされたんですね。

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