NPOの経営マネジメントのプロになりたい

NPOマネジメントラボ 代表 山元圭太

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「いいこと」をしている本人がハッピーじゃない
 
 山元さんが参加したのは、それまで自分が携わってきた分野と近い、飢餓や子どもをテーマに世界規模で活動するNGOなどだった。
 
「それらの団体には、プロの方がたくさんいました。大学院で開発について勉強して修士をとって、英語もペラペラで現地での駐在経験もあって、という方。建設会社の出身で青年海外協力隊に専門職として行かれた経験もある方。課題に対して専門性を持って、心の底からなんとかしたいと思って、すごく真摯に取り組んでいる人ばかりで、すごいなと思いました」
 
 活動する人々の高い専門性やモチベーションに感服する一方で、そうした人々が時折辛そうな様子を見せることに、山元さんは気がついた。
 
「いろいろ話を聞いてみると、かなりのハードワークでありながら、収入はとても十分とは言えず、生活に不安を抱えていたりする人もいるということがわかりました。熱い思いと高い専門性を持って『いいこと』に取り組んでいるのに、この人たち自身があまりハッピーじゃないときもある。それは不条理だなと思いました」
 
 それは、ひとつの団体に限ったことではなかった。さまざまなNPO、NGOで働く人々に話を聞いてみると、月の手取りは10万円程度、事務所兼自宅に数名で暮らしてなんとか生活しているといった人や、子どもの大学の学費が出せず悩んでいる人など、収入や生活面に不安を抱えている人は少なくなかった。
 
「そうした話を聞いて思ったのは、それって持続可能なの?ということ。また、こういう状況がずっと続くのであれば、優秀な人やできる人がなかなか入って来れないだろうということ。そうすると、問題解決や、社会を変えるという取り組みのスピードも上がらないなと」
 
 また、キャッシュフローの分析や、今後の資金計画をきちんと立てている団体が少ないこともわかってきた。そうしてさまざまなことを見聞きし、経験する中で、山元さんは「NPOのマネジメント(経営)のプロはいないんだろうか」という疑問をふと抱いた。
 
「当時調べられるだけ調べてみたんですけど、すごく限られた少数の方がいらっしゃるだけみたいだったんですよね。研修講座を提供してくれるプログラムとかはあったんですが、組織の中に入って一緒にワークフローを整えるであるとか、収支を考えるであるとか、ファンドレイジングの戦略を立てるといった支援を行うようなサービスはなかったんです。つまり、現場のプロはいるのに、マネジメントのプロは、まだこの業界には少なかった」
 
 そのことに気がついた山元さんは、「NPOのマネジメント×ビジネス」という視点でなにかできることはないかと考え始める。就職活動を始める頃には、NPOのマネジメント(経営)のプロになりたいという目標を持つようになり、大学卒業後、コンサルティング会社に入社した。

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