ソーシャルなお金を生み出す仕組み

京都地域創造基金 理事長 深尾昌峰

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リスクがあるから必死になる
 
 こうした社会的投資の仕組みがなかなか浸透しない理由のひとつには、ビジネスサイドの戸惑いがある。「これってお金儲けになるんですか?」ということだ。
 
「純粋な寄付やチャリティならCSR部門、儲かる話なら投資部門の担当になるんだけど、『資金はそれなりに回収できるしプラスアルファもあります。だけど一般的な金融商品ほど儲かるものではありません』ということになると、どちらが引き取ればいいのか困ってしまうようなんです」
 
 こうした戸惑いや課題を解消するためには、投資のインセンティブをどうつくっていくかが大切になってくる。
 
「投資減税のような制度を整備していくこともひとつだと思います。なぜそこに投資するのか、投資の環境を整えてあげれば、投資する側も乗りやすくなるはずです」
 
 また、安心して投資してもらうために、プロジェクトファイナンスとして格付けをとることも深尾さんは考えているという。
 
「次につくるソーラーの案件では、敢えて格付けをとってほかのふつうの金融商品と勝負してみようと思っています。格付け会社による評価がきちんとあれば、そこに投資してみようという人たちが現れてくるはずですから。これまでになかった新しい仕組みなので、私が一から信用をつくるより、既に社会に流通している信用の仕組みを借りるほうが世の中にとってもわかりやすいと思うんですよね」
 
 また、信用金庫が地域を支えるコミュニティ・バンクとしてきちんと機能するよう、地域金融の再編を促していくことも重要だ。
 
「今後の人口減少時代においては、地域金融というものがキーになってくると思います。お金自体は実はあるんです。問題はそれを使う地域側の知恵と出す側の器量。このくらいのリスクで、社会的な収益というリターンがこのくらい得られるならやってみようよっていう考え方ができていけばいいなと思います」
 
 多少のリスクがあったとしても、地域の住民や企業でリスクをシェアすれば、「このくらい薄いリスクなら、やったほうがいい」ということにもなるだろう。また、実はこのリスクがあるということが後押しになる面もある。
 
「補助金だとリスクが0だから、失敗しても痛みがない。うまくいかないのは社会のせいだ、しょうがないって言っていればいい。それは補助金の限界なんです。だけど、自分でリスクをとって出資する人がひとりでもいれば、そんなことは許されない。小さくてもリスクがあれば、そのリスクを回避するためにみんな死にもの狂いになるんです。緊張感も生まれるし、総力戦度合みたいなものが本気モードになっていくので、そういうほうが健全なんじゃないかなって、思いますね」
 
 地域の人々がほんとうに必要とするものを自分たちで議論しながら生み出し、そこにファイナンスがついてくるという仕組みができていけば、日本の地域社会は大きく変わっていくはずだ。

(第三回「市民はもっといろんなことができる」に続く)
 
 
 
深尾 昌峰(ふかお まさたか)*1974年生まれ。大学在学中に起きた阪神・淡路大震災でのボランティア活動をきっかけにNPO活動に携わる。1998年にきょうとNPOセンターを設立、初代事務局長を務める。以降、日本初のNPO法人放送局の設立、公益財団法人の設立など、さまざまな活動に精力的に取り組んでいる。公益財団法人京都地域創造基金理事長、特定非営利活動法人きょうとNPOセンター常務理事、特定非営利活動法人京都コミュニティ放送副理事長、社団法人全国コミュニティ財団協会会長、龍谷大学政策学部准教授。
 
【写真:長谷川博一】

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