子どもの成長をみんなで見守る社会に
目指す社会から逆算して、いまの取り組みを考える
森山さんが任意団体として3keysを設立した当初は、大学のサークルのようなかたちで学生間の引き継ぎを繰り返しながら行う活動をイメージしていた。だが、現場に触れるうちに問題の根深さを知り、仕事として長期を見据えて取り組むために法人化したのだという。そんな森山さんが目指す社会のかたちを伺ってみた。
「子どもの成長をみんなで見守る社会になっていきたいなと思っています。人って多少失敗しながら強くなっていくものだと思うので、子どもたちが失敗を恐れずに、思い切り楽しんだり、自分のやりたいことを見つけたりして、それぞれの特性を生かせる社会になってほしい」
親や学校にだけ責任を問うのではなく、国や地域、市民や企業みんなで子どもを育てる社会に。そのために、3keysは設立から10年後をひとつの目標に掲げている。
「法人化から10年を迎える2021年までには、政治や制度面について発信力をもっている組織になっていたいなと思っています。そのためにもいまは、国がカバーしきれない現場の実情を把握して成果を出していきたい」
団体、代表とも若いこともあり、行政や企業などに積極的に働きかけ過ぎて、煙たがられたこともあるという。一度関係がぎくしゃくしてしまうと、その後もお互い距離をとるようになりがちで、失うものは大きい。そうした反省から、求められてからの提案のほうがスムーズの物事が進むことに気付いた森山さんは、国や行政に求められる団体を目指し、現場での実績を堅実に積み重ね、専門性を身に着けながら、適切な発信を重ねている。
「目指す社会から逆算して、いまどこまで投資するか。とくに子どもの問題は、なにかアクションをしてもすぐ効果が目に見えるものではないけれど、10年後、20年後にどんなふうに跳ね返ってくるかということを考えて、取り組んでいかないといけないなと思っています。いまの政治は高齢者重視の部分があるので、ゆとり世代目線の政策提言も行っていきたい」
入口は児童養護施設だったが、そこにとどまらず、子どもたちがさらされている問題に幅広く目を向け、それぞれの解決に向けてアプローチを展開する3keys。法人化から4年目を迎え、その存在感はますます大きくなっていくことだろう。
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森山 誉恵(もりやま たかえ)*1987年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。大学時代、児童養護施設で学習ボランティアを開始。在学中に学生団体3keysを設立。2011年5月にNPO法人化し、代表理事に就任。同年社会貢献者表彰。現在は現場の支援に加え現場から見える格差や貧困の現状の発信にも力を入れている。
【写真:shu tokonami】