漁業を張り合いがあって楽しい仕事に

桃浦かき生産者合同会社 代表社員 大山勝幸

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仙台水産 島貫会長

生産と流通を一体にして考える
 
 仙台水産は「桃浦かき」のブランド化をめざし、生産指導とともに広報宣伝にも力を入れている。ポスターをつくり、テレビCMを流す。まずは、販路を取り戻さなくてはいけない。
 
「風評被害もあったし、なんといっても2年半売り場の棚が空いてしまって、売り先がみなほかの産地のもので占められてしまいました。だから、マッチングの場をつくったんです。いろんな業界団体の方々や大手チェーンの社長さんにもお越しいただきました」
 
 努力の甲斐あって大手外食チェーンとのタイアップも始まり、知名度はぐんぐん上がってきている。
 
「おかげさまでみなさまから励ましのお言葉をいただきますし、知名度が上がって注文も増えました。どこにも負けない美味しいものをつくっていますから、安心や信頼も生まれて、それがブランドとなって、高値で取り引きさせていただいています」
 
 かき養殖の近代化にも積極的に取り組んでいる。
 
「種がきの生産や新しい養殖技術、新しい凍結法、自動かき剥き機の開発などにも取り組み始めています」
 
新技術の導入により品質や生産性の向上を図ることで、漁師の所得を上げ、安定した雇用を確保し、持続的な経営を実現することを目指している。
 
「また、漁業のIT化をして、漁業を見える化したいんですよ。気温や水温、波の流速、亜鉛やマグネシウムなどの栄養成分、いろんな検査項目でデータを取り始めているんです」
 
 目先の生産量を追うのではなく、年ごとの数値を細かく記録しデータ化することで、美味しいかきの養殖に最適な環境を探し出そうというのだ。
 
「何年間かのデータが蓄積されていけば、今年はどのパターンかっていうのがわかってきますよね。そうすれば、不良年にあたっても、回避の方法が見いだせるかもしれません。養殖に必要な栄養分や酵素をかきに行き渡らせるための技術というのも、できるかもしれない。いまはそういった実験を、いろいろな視点で開始しているところです」
 
 世界に通用するかき養殖を実現するために、常識に立ち向かい新たな試みを重ねる。単に漁業権を与えられるのではなく、新たな価値を生み出すために。復興の一歩一歩は、漁業の未来をつくり出すことに、間違いなくつながり始めている。

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