人間味の深いプラットホームにできるかが鍵に

横尾俊彦(多久市長)×藤井宏一郎(マカイラ株式会社代表取締役)×荒田英知(PHP総研主席研究員)

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6.右肩上がりでない社会を豊かに生きる視点
 
藤井 そうしないとハードランディングが待っている。ソフトランディングとは言えないかもしれないけれども、ポジティブに転換していく。
 経済成長が今までのようには望めないような右肩上がりでない社会をどうやって豊かに生きていくかっていう視点が、シェアリングエコノミーには絶対入ってくるのではないかと思います。
 
横尾 子育て中、あるいは子育てが終わり始めた人が自分の余った時間、赤ちゃんが寝てる時間、自分も社会参加したいとか、仕事したいという人ができたりするし、それで、その場に行かなくても自己実現もできたりするじゃないですか。そういう手ごたえ感とか、生きがい感というのは、一人一人の人生にとってはとても大事です。
 特にハンディキャップの方ですね。下肢が不自由だから車いす。でも、手が十分動かせて、頭は抜群の人がデザインやってる工場を見たことがあります。生き生きとしてます。だから、そういう一人一人の価値をちゃんと確認して、その発揮する場をつくるというふうな側面も私はシェアエコにあるのかなと、今、関わりながら思っています。
 
荒田 そうですね。
 
藤井 高度経済成長期やバブルのモーレツ社員みたいな生活をしていると、シェアエコってできないんですよ。シェアエコって時間と手間がかかるじゃないですか。だから、シェアエコノミー自体がある程度モーレツでない、スローライフというのを前提とした部分があるんだと思いますよね。
 
荒田 シェアリングエコノミーとか、シェアリングシティという概念は非常に広いし、深い。これからの自治体のあり方を考えるうえでとても興味深いです。
 
横尾 教育分野も、教科書の中でもいいし、社会体験コースの中でもいいですが「こういう生き方もあるよ」とか、「こういうエコノミーもあるよ」とか、あるいは、「スローライフという価値観もあるよ」とか、そういうのを教えたほうがいいと思いますね。
 年齢層も多彩でライフスタイルも違う人たちが、たまたまシェアエコをきっかけで集まって1つのワンルームでディスカッションしたりされていますが、これってシェアエコなかったら出会ってない人たちなんですよね。
 そういう意味では、ダイバーシティというか、多様性を受容して、新しい創造性をつくっていくような、そういうことにも潜在的につながるのかなって、それもおもしろいなと思います、コミュニティのあり方として。
 
荒田 ソーシャルデザインとか、コミュニティデザインとかが重視されてくる中で、非常に使い勝手のいいツールというふうな理解もできるのかなと思ったりしました。
 
藤井 そうだと思いますね。ボトムアップのイノベーションみたいなところでいうと、うちの会社もシェアリングコミュニティなかったら存在しなくて、最初はシェアオフィスで、ロゴだとかをつくる時にも、全部シェアリングでクラウドソーシングしてました。全部自前でやってたらできなかったと思います。
 
横尾 多久市で行っているセミナーには、熊本県からも、長崎県からも、福岡県からも来ています。そういう人たちをつないで、お互いの刺激にもなるし、何かやりたければやってもらったらいい。そして北部九州というか、九州というか、西日本というか、東京に集中している一方の西の情報センターみたいになればいいなと思っています。
 
藤井 いや、多久市に行きたくなりました(笑)。
 
横尾 ありがとうございます、ぜひ。
 
藤井 必ず行こうと思います。
 
荒田 それでは、この続きは多久市でということで。ありがとうございました。

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