PHP総研グローバル・リスク分析プロジェクトは、来たる2021年に日本が注視すべきグローバルなリスクを展望する「2021年版 PHPグローバル・リスク分析」をまとめ、発表いたしました。本レポートは、様々な分野の専門家が日本に影響するグローバルなリスク要因を検討した結果をまとめたもので、読者のみなさまの幅広いご支持で回を重ね、このたび節目となる10回目の発刊を迎えました。
第1回目の2012年版以来、本レポートは、政治と経済の連関に着眼してまいりましたが、2020年のコロナ・パンデミックを通じて政治と経済を統合的に捉える視点は一層重要性を増しました。大国間の対立や不信は増幅し、サプライチェーンの寸断により相互依存の脆弱性が鋭く認識されるようになりました。各国は経済安全保障に意を用い、企業活動が政治に巻き込まれる傾向も顕著です。
2021年には国際協調重視を標榜するバイデン新政権が発足し、米国の対外行動の予測可能性が高まると期待されていますが、米中関係、グリーン・シフト、コロナ危機の克服等の難題のいずれについても権力政治の論理が強力に作動し続けることになるでしょう。各地域、各国に固有のダイナミズムにも引き続き注目していく必要があります。
10回目を迎えた「PHPグローバル・リスク分析」が、不確実な時代において脅威と機会を見据えようとするみなさまに有益な視点を提供するものであれば幸甚に存じます。みなさまのご高覧を仰ぐとともに、重ねてのお力添えをお願い申し上げます。
※2021年1月に「2021年版 PHPグローバル・リスク分析」レポートの英語概略版を公開いたしました。
<目次>
はじめに リスク俯瞰世界地図 グローバル・オーバービュー グローバル・リスク2021 日本にとっての政策的インプリケーション 【コラム】対米関係の改善望めず、対中接近が続くロシア 【コラム】中東リスクの内在的要因−「世代交代」と「環境制約」Risk:1
「気候変動」で始まる
新たな戦略的競争
気候正義の名の下での世界の協調と新しい対立
再エネ・EV普及に伴うレアメタル部材や電気設備の中国依存リスク
Risk:2
コロナ禍対応の出口がもたらす
経済「弱者」の危機
パンデミック対応が最優先の財政・金融政策が覆い隠すWeakest Link
勝ち組のコロナショック脱却と景気支持策の出口が「弱者」を危機に追い込む
先行回復を積極策発動の好機と捉える中国
Risk:3
コロナ・パンデミックが惹起する
暴動・テロの「熱波」
「抵抗ノウハウ」拡散で止まらない若者たちの反乱
欧州におけるテロ頻発とアフリカでの勢力拡大で変異するISテロ
Risk:4
国家の戦略手段になる
サイバー攻撃
脅威に適合しないセキュリティ対策が被害を甚大化
重要施設の機能を停止させるサイバー破壊の拡大
東京オリパラの開催や運営に影響を与えるサイバー工作(詐欺)
Risk:5
「内なる敵」に迫力削がれる
バイデン協調外交
国内再建第一のバイデン新政権
鋭い政治的分断が対外関与を制約
米中関係は対立構造が定着、企業が選択迫られる状況は続く
Risk:6
皇帝化する習近平が引き起こす
対立の先鋭化
習近平への過度な権力集中に対する反発の高まり
中国の強硬姿勢が加速させる米中「新冷戦」
Risk:7
「新冷戦」に活路の北朝鮮・
混迷の韓国・地歩を失う日本
中国の庇護下での北朝鮮の限定的挑発再開
米中の狭間で股裂き状態の韓国
朝鮮半島で消失する日本のフットプリント
Risk:8
安定装置を失い動揺する
タイ政治体制
タブー破り、噴出する王室批判
東南アジアで拡散する権威主義体制と米バイデン政権の人権外交の軋轢
Risk:9
「トランプ圧」抜けた中東
「力の真空」で高まる衝突リスク
米・イスラエル「駆け込み攻撃」で核交渉難航
中東・東地中海・アフリカへ広がるトルコと地域大国間の対立・衝突リスク
Risk:10
指導力を欠き漂流する
メルケル・ロスの欧州
コロナ、香港、台湾、一帯一路で対中不信に傾く欧州
ポスト・メルケルで独仏枢軸の弱体化が進む
Brexitをめぐる混乱が英国解体の引き金を引くおそれ
PHP総研 グローバル・リスク
分析プロジェクト
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畔蒜泰助 (あびる・たいすけ) – 笹川平和財団主任研究員
1969年生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。モスクワ国立国際関係大学国際関係学部修士。東京財団研究員兼政策プロデューサー、国際協力銀行モスクワ駐在員事務所上席駐在員等を経て現職。専門はロシアを中心とするユーラシア地政学、ロシア国内政治。露ヴァルダイ・クラブのメンバー。著書に『「今のロシア」がわかる本』(三笠書房。知的生きかた文庫)、『原発とレアアース』(共著、日経プレミアムシリーズ)、監訳書に『プーチンの世界』(新潮社)がある。
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飯田将史 (いいだ・まさふみ) – 防衛研究所地域研究部米欧ロシア研究室長
1972年生まれ。慶応義塾大学総合政策学部卒。同大学院政策 ・ メディア研究科修士。スタンフォード大学修士(東アジア論)。専門は中国の外交 ・ 安全保障政策と東アジアの国際関係。スタンフォード大学と米海軍大学で客員研究員もつとめた。著書に『海洋へ膨張する中国』(単著、角川 SSC 新書)、『中国―改革開放への転換』(共編著、慶応義塾大学出版会)、『チャイナ・リスク』(共著、岩波書店)等がある。
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池内 恵 (いけうち・さとし) – 東京大学先端科学技術研究センター教授
1973年生まれ。東京大学文学部イスラム学科卒。同大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。専門はイスラーム政治思想、中東地域研究。著書に『現代アラブの社会思想―終末論とイスラーム主義』(講談社)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社)、『シーア派とスンニ派』(新潮社)など。『イスラーム国の衝撃』(文藝春秋)で 2015 年度の毎日出版文化賞・特別賞を受賞。2016 年度の中曽根康弘賞・優秀賞を受賞。『フォーサイト』(ウェブ版、新潮社)で連載「中東危機の震源を読む」とブログ「中東の部屋」および「池内恵の中東通信」を担当。
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大場紀章 (おおば・のりあき) – エネルギーアナリスト/株式会社JDSCフェロー
1979年生まれ。京都大学理学部化学科卒。同大学理学研究科博士課程単位取得退学。民間シンクタンク勤務を歴て現職。他にも複数の役職を兼務。専門は、化石燃料供給、エネルギー安全保障、次世代自動車技術、物性物理学。著書に『シェール革命―経済動向から開発・生産・石油化学』(共著、エヌ・ティー・エス)等。日経エネルギーNextにてオムニバス連載『脱オイルの世紀』を担当。
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柿原国治 (かきはら・くにはる) – 航空自衛隊幹部学校長 空将
1964年生まれ。防衛大学校卒、筑波大学院地域研究修士、米国防大学国家安全保障戦略修士。財団法人世界平和研究所主任研究員、航空自衛隊幹部学校副校長等を経て現職。著作に、『弾道ミサイル防衛入門』(金田秀昭著、執筆参加、かや書房)、「安定の鍵としての対中カウンター・バランス―柔軟抑止・同盟抑止の実効性向上に向けての一考察」(『アジア研究』Vol60(2014)NO.4)、「米国の戦略岐路と新相殺戦略」(『海外事情』2015年2月号)等。
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金子将史 (かねこ・まさふみ) – 政策シンクタンクPHP総研代表・研究主幹
1970年生まれ。東京大学文学部卒。ロンドン大学キングスカレッジ戦争学修士。松下政経塾塾生等を経て現職。株式会社PHP研究所執行役員。専門は外交・安全保障政策。著書に『パブリック・ディプロマシー戦略』(共編著、PHP研究所)、『日本の大戦略̶歴史的パワー・シフトをどう乗り切るか』(共著、PHP研究所)、『世界のインテリジェンス』(共著、PHP研究所)等。「国家安全保障会議の創設に関する有識者会議」議員、外務省「科学技術外交推進会議」委員等を歴任。
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菅原 出 (すがわら・いずる) – 国際政治アナリスト/グローバルリスク・アドバイザリー代表
1969年生まれ。アムステルダム大学卒。東京財団研究員、英危機管理会社勤務を経て現職。著書に『「イスラム国」と「恐怖の輸出」』(講談社現代新書)、『戦争詐欺師』(講談社)、『秘密戦争の司令官オバマ』(並木書房)、『米国とイランはなぜ戦うのか?』(並木書房)等がある。安全保障・テロ・治安リスク分析や危機管理が専門で邦人企業や政府機関等の危機管理アドバイザー、NPO法人「海外安全・危機管理の会」代表理事をつとめている。
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田島弘一 (たじま・こういち) – 株式会社日本格付研究所調査室長
1952年生まれ。千葉大学人文学部法経学科卒。信託銀行で国際部門、運用部門を経験、証券では経営向け調査を担当、同時に国際金融情報センターのシニアアドバイザーを兼務し現在に至る。カーターショック、オイルショック、プラザ合意、ブラックマンデイ、バブル崩壊、不良債権問題、金融危機、同時テロ、リーマンショックなどを身近で経験したことから、政治、軍事、外交、経済、金融、市場はジグソーパズルとみて、金融インテリジェンスの実践者として活動しながら、政策提言活動も続けている。
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中島精也 (なかじま・せいや) – 福井県立大学客員教授
1947年生まれ。横浜国立大学経済学部卒。ドイツifo経済研究所客員研究員(ミュンヘン駐在)、九州大学大学院非常勤講師、伊藤忠商事チーフエコノミストを経て現職。丹羽連絡事務所チーフエコノミストを兼務。著書に『傍若無人なアメリカ経済̶アメリカの中央銀行・FRBの正体』(角川新書)、『グローバルエコノミーの潮流』(シグマベイスキャピタル)、『アジア通貨危機の経済学』(編著、東洋経済新報社)等がある。
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名和利男 (なわ・としお) – サイバーディフェンス研究所専務理事/上級分析官
1971年生まれ。海上自衛隊において護衛艦のCIC(戦闘情報中枢)の業務に従事した後、航空自衛隊において信務暗号・通信業務/在日米空軍との連絡調整業務/防空指揮システム等のセキュリティ担当業務に従事。その後JPCERTコーディネーションセンター早期警戒グループのリーダ等を経て現職。他複数の役職を兼務。専門分野であるインシデントハンドリングの経験と実績を活かして、CSIRT構築及び、サイバー演習の国内第一人者として、支援サービスを提供。現在サイバーインテリジェンスやアクティブディフェンスに関する活動を強化中。
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馬渕治好 (まぶち・はるよし) – ブーケ・ド・フルーレット代表
1958年生まれ。東京大学理学部卒。マサチューセッツ工科大学スローンスクール経営科学修士。米国チャータード・ファイナンシャル・アナリスト(CFA)。(旧)日興證券等を経て現職。国際経済・証券金融市場分析が職務。著書に、『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)、『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)、『投資のプロはこうして先を読む』(日本経済新聞出版社)、『コロナ後を生き抜く 通説に惑わされない投資と思考法』(金融財政事情研究会)。日本経済新聞夕刊「十字路」の執筆担当者のひとり。
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保井俊之 (やすい・としゆき) – 慶應義塾大学大学院SDM研究科特別招聘教授
1962年生まれ。東京大学教養学科卒。国際基督教大学博士(学術)。研究テーマは社会システム、ソーシャルデザイン、ダイアローグと協創、システム×デザイン思考等。著書に『「日本」の売り方―協創力が市場を制す』(角川oneテーマ 21)、『中台激震』(中央公論新社)、『体系 グローバル・コンプライアンス・リスクの現状』(共著、きんざい)、『ふるさと納税の理論と実践』(事業構想大学院大学出版部)』、『無意識と「対話」する方法』(ワニプラス)等。2010 と 11 年度の日本コンペティティブ・インテリジェンス学会論文賞を、2012と13年度の日本創造学会論文誌の論文賞を、それぞれ受賞。
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吉岡桂子 (よしおか・けいこ) – 朝日新聞編集委員
1964年生まれ。岡山大学法学部卒。山陽放送アナウンス部を経て朝日新聞入社。記者として和歌山支局、経済部(東京、大阪)、中国(北京、上海)特派員、バンコク駐在編集委員などを経て現職。米戦略国際問題研究所(CSIS)客員研究員も務めた。著書に『人民元の興亡』(小学館)、『問答有用』(岩波書店)、『愛国経済』(朝日新聞出版)など。朝日新聞コラム「多事奏論」、朝日新聞GLOBE+「鉄輪で行く中国・アジア」(ウェブ)連載中。