学校運営改善モデル | 【2】 チームで議論<第1回>

チームで議論<第1回>

0.校内研修の実施前に行うこと

  • ① 学校全体で取り組む重点目標を校長が1つに絞る。
  • ② ①の重点目標に応じて教職員を4~8人のチームに分けて実施。校務分掌ごと、学年ごと、教科ごとなど重点目標の内容に応じてチームを分ける。
  • ③ チームごとに、チームのリーダー(とりまとめ役)と記録役を決める。

 教職員をいくつかのチームに分ける場合、どのようにチーム分けをすればよいでしょうか。


 チーム分けは、教科ごと、学年ごと、校務分掌ごとに分けることなどが考えられます。どのように分けるかは各学校の重点目標や実情に応じて考えます。重点目標の内容によって、活動するメンバー構成が変わるからです。
 メンバー全員が参画意識を持つことを重視すれば、チームの人数は4~8人程度が適当です。

【実践例】
 学校の重点目標が、
「授業の改善」であれば教科ごとのチーム、
「家庭学習習慣の定着」であれば学年ごとのチーム、
「生徒の規範意識の向上」であれば学年ごとのチーム、
「教員の組織力の向上」であれば校務分掌ごとのチーム、
 などが考えられます。

1.事前研修の振り返り〔10分間〕

  • <モデル内容>
    事前研修(コーチングなど)の振り返りを行う。

〔ポイント〕
 あらかじめ、チームでの議論を行う前に事前研修を実施しておく。
その事前研修の振り返りを冒頭で行う(事前研修の内容はどうだったか、その内容を教職員どうしの議論でどう生かすかなど)。

2.事前説明〔5分間〕

  • <モデル内容>
    全体の流れについて説明する。
  • 〔ポイント〕
  • ① 実践の趣旨は次の2点。
  • その1.「小集団(チーム)で議論→決定→実行」に実際に取り組んでみる
    その2.いきなり大きな改善を目指すのではなく、小さくてもいいのでできるところから改善する
  • ② アイディアや意見を出し合うときには、たとえば、以下のルールを守る。
    「1.質より量、2.批判しない、3.便乗する、4.あきらめない、5.楽しく議論」
  • ③ 全体の流れがわかる図を見やすい場所に貼っておくことも有効。
  • ④ コーチングスキル(傾聴、承認、質問)を意識。

3.現状を出し合う〔35分間〕

  • (1)<モデル内容>
  •  学校評価結果をもとに、学校全体の重点目標に関して、各チームが担当することのうち気になっているところ、うまくいっているところなど各人が付箋に書く。
    • 自分たちのチームが担当する分掌(又は学年、教科)に関連する事実のうち、思いつく内容を付箋に書く。
    • 付箋1枚につき文章は原則1つとし、1人が何枚書いてもよい。
  • (2)付箋をチーム内で出し合う。
  • 付箋を出し合うときは、1人が1枚を出したら次の人が出す、というように順番に1枚ずつ出す。
  • 〔ポイント〕
    付箋に記述する内容は、長い文章にする必要はなく、短い言葉で書く。
  • ② 書かれた付箋の枚数が少ないようであれば、枚数の目標を示してみる(「1人3枚以上は書いてください」など)。

4.課題を設定する〔60分間〕

  • (1)<モデル内容>
  •  出された付箋を、いくつかのグループに分ける。その上で各グループに見出しをつける(たとえば、「授業の改善が必要」「学習意欲・態度の向上を目指す」「家庭での生活状況を把握することが大事」など)。
  • (2)各グループの背景やグループどうしの関係を考え、図に示す。
  • (問題の原因は何か、何がどういう影響を与えているか、など)
  • (3)学校全体の重点目標を踏まえてチームとしてこれから取り組むべき課題を設定するため、まず、チームとして取り組むべきグループを(1)のグループの中から1つ選ぶ。
  • (4)(3)で選んだグループに関し、次のことについてチーム内で意見を出し合い、出された内容を模造紙に書き込み、グループに関わる事実について掘り下げる。
    • 要因・背景は何か。
    • 現時点ではどういうプロセス(手順、ステップ)でどのような取組をしているか(できれば手順、ステップの現時点での流れ図を描く)。その取組の結果はどうか。
  • (5)(4)の話し合いをもとに、これから取り組むべき具体的な課題を決める。
  • 〔ポイント〕
     学校評価結果を踏まえ、学校全体の重点目標を達成するためにチームとして何に取り組むかを考える。
  • ② 付箋のグループ分けをするときは、最初は小さなグループを作りそれをいくつかまとめる、というように小さなグループから大きなグループを作ることが望ましい。
  • ③ グループや課題を選ぶにあたっては、重要なもの、かつ、自分たちで取り組むことができるものを選ぶ。
  • ④ グループに関わる事実について掘り下げを行う議論は、次の目標・方法を決める議論につながる。
     したがって、できるだけ具体的な事実をあげて意見交換を行う。また、現時点での取組についてチーム内の共通理解を図るよう、プロセスの流れ図を描くことも有効である。
  • ⑤ 議論を行う際には、コーチングスキルを意識的に活用する(適宜、注意喚起を行う)。チームのリーダー(とりまとめ役)は、議論が具体的・建設的になるようできるだけ配慮する。

Q1 現状を出し合う段階で、付箋をグループに分けて見出しをつけますが、どのような見出しをつければよいでしょうか。

A1
 グループに含まれる付箋に共通する内容を見出しとします。
 その際、単語ではなく、簡単な文章にすることがポイントです。文章にすることで、課題の方向性がはっきりするからです。

【実践例】
 グループの見出しとして、「時間」「掃除」「挨拶」などの単語のみを記述するのではなく、「時間を守らない」「掃除をさぼる」「挨拶をしない」など文章を用いて記述します。

Q2 各チームの課題はどのようにして見つければよいでしょうか。

A2
 現状を把握した後、どのような課題にチームとして取り組むかを考えます。
 その際、多くのことに取り組もうとするのではなく、学校全体の重点目標とのつながりを考えながら、的を絞ります。
 あまり難しい課題に挑戦するよりは、まずは取り組みやすい課題を選び、小さな改善を積み重ねることが大切です。大きな課題に取り組んでしまうと、いつまでも成果が表れないからです。
学校全体の重点目標とつながっている課題であって、比較的成果が出やすい課題や自分たちで改善することができる課題を選ぶことがポイントです。

【実践例】
 学校の重点目標が「家庭学習習慣の定着」であれば、「小テストの実施方法や宿題の出し方を工夫する」、「授業と家庭学習を結びつける」などをチームの課題として設定します。

5.ブリーフセラピーの考え方の紹介〔2分間〕

  • <モデル内容>
  • 方法を考える際の参考として、ブリーフセラピーの考え方を紹介する。
  • ① 比較的うまくいったときがあるか?を思い出す。
  • ② うまくいっている例外を探す。何があったからうまくいったのか、その例外を増やすには何をすればいいのかを考える(=do more)。
  • ③ うまくいった例外がなければ、これまでのやり方を変える。たとえば、これまでとは別の人が行う、別の場所にする、方法を反対にしてみる、など(=do different)。

 方法のアイディアを出す際、なかなかよいアイディアが思いつきません。どのようにすればよいでしょうか。


 小さなことでもいいので、比較的うまくいった例外は何かを考えます。

【実践例】
 「先生が見に行かないと、生徒が掃除をしない」という状況は、見方を変えれば、「先生が見に行けば、生徒は掃除をする」という”うまくいった例外”と考えることもできます。

6.目標・方法を決める〔55分間〕

  • (1)<モデル内容>
  •  課題について、どういう方法で取り組んでいくかのアイディアを考える。
     課題に関するこれまでのプロセスをどう変えるか、今後どういう方法で取り組んでいくかというアイディアをまず各人が付箋に書く。
  • (2)各人が考えたアイディアを、「成果が表れやすいか」という基準と「チームで考える基準」の2つの基準にあてはめて、図示する。
    ※チームで考える基準の例:「効果が大きいか」「楽しんで取り組めるか」「負担がかからないか」など
  • (3)その図を見ながら、これから実行する方法を1つに絞り、決定する。
  • (4)方法を実行することにより、いつまでにどのような状況になるか、どのようなゴールの達成を目指すかを考え、目標を決める。
  • (5)方法の実行をいつから開始するかを決める。
    (できれば、次回までの間に各チームで中間の振り返りを行うこととし、その振り返りをいつ行うかについても決める)
  • 〔ポイント〕
     課題を選んだ後、「方法を決めてから→目標を決める」か、あるいは「目標を決めてから→方法を決める」かについては、どちらの順序をとってもよい。
     モデルの実施に慣れていない場合には、「方法を決めてから→目標を決める」の順とする方が具体的な議論になりやすい。
     ただし、この順序の場合、目標のレベルが現状維持にとどまってしまう可能性もあるので、より効果のある改善を進めるためには「目標を決めてから→方法を決める」の順とする方が適当である。
  • ② 根本的な解決が求められる課題であっても、まずは成果の表れやすい方法を選択する。「満点」を目指すのではなく、仮に今の状態が「10点中3点」であれば「10点中4点」になるための方法を考える。
  • ③ これまで行ってきたプロセスをもとに、「これまでのプロセスのここをこう変える」「これまでのプロセスにこれを付け加える」というアイディアを考える。
     あるいは、これまでのプロセスにとらわれない新たな方法を出す。
  • ④ アイディアの数が出ないときには、数の目標を設定することも効果的である(「1人3つ以上のアイディアを出してください」「チームで20個のアイディアを出すことを目標にしてください」「間違いは無いので、斬新なアイディアも出してください」など)。
  • ⑤ 方法を1つに絞ることが難しい場合、チームとして取り組む優先順位の高いものを2つか3つに絞る。(たとえば、「出されたアイディアはどれも重要であるが、今回はチームとして取り組む方法を1つ(ないし2つか3つ)に絞る。そうでないと、きちんと実行できたかどうかがわからなくなってしまう」と指示するなど)
  • ⑥ 目標は、課題に対するゴール(~が~をする/~になる)を考える。
     抽象的な内容ではなく、できるだけ具体的な内容を考える(抽象的な内容だと、実行できたかどうかのチェックができない)。
    (仮に今の状況が「10点満点で3点」だとしたら、「4点」になった状況というのはどういう状況か、を考える)
  • ⑦ 目標は、否定的な表現ではなく、肯定的な表現にする。
    (「数学嫌いを減らす」ではなく「数学好きを増やす」)
    (→「どうなればそれが実現したと言えるか」→「数学好きの生徒が半分以上になる」)
  • ⑧ 「いつまでに」の部分は、「今年度末までに」を基本としながら、各チームの判断に委ねる。
  • ⑨ 目標の設定を行った後、目標の内容によっては、再度、方法を見直すこともあり得ることを説明する。
  • ⑩ コーチングスキルを意識して活用するよう促す(適宜、注意を喚起)。チームリーダー(とりまとめ役)は、議論が具体的・建設的になるようできるだけ配慮する。
     また、チームの全員が議論に参加できるよう配慮する。

Q1 方法のアイディアを出すことはできましたが、どれも必要な方法なので、1つに絞ることが困難なのですが、どうすればよいでしょうか。

A1
 ここで決める方法は、具体的な内容にすることがとても重要です。抽象的な内容だと、実行できたかどうかのチェックができません。”いつ・どこで・誰が・なにをするか”をできるだけ明確にします。

① 【実践例】
 チームの課題=「授業と家庭学習を結びつける」
 ⇒ 実行する方法
 = 「授業で予習の指示をするとき、『なにを』『どこまで』予習するかの指示を 具体的に行う」
② チームの課題=「時間を意識し、次の行動を考えることができる力を育てる」
 ⇒ 実行する方法
 = 「『時間を守ろう!』のキャッチコピーを国語の授業で生徒に考えさせ、それを教室や廊下に貼る」

 いくつか出された方法のアイディアのどれもが実行するのにふさわしく、1つに絞ることが難しい場合があります。しかし、実行すべき方法が多すぎると、やはり実行のチェックが困難になります。

 このような場合、たとえば、1人が3つを選んで挙手をして、挙手の多かったものの中から話し合って1つに絞ることも考えられます。
 それでも1つに絞るのが難しければ、2つないし3つに絞ってもいいでしょう。

Q2 目標はどのように設定すべきでしょうか。

A2
 チームで決めた方法を一定期間実行すればどのような状態を達成できるかを考え、目標を設定します。
 必ずしも数値目標である必要はありませんが、数値であれば成果を表しやすいのはたしかです。数値でなくても、達成できたかどうかを客観的に把握できる目標が望ましいでしょう。達成状況を見れば実行してきた方法が適切だったかどうかを判断できるからです。

① 【実践例】
 チームの課題=「クラスの雰囲気づくり」
   ⇒ 目標=「チャイム後は生徒全員が教室に入っている」
② チームの課題=「自分たちで考え行動する力を育成する」
   ⇒ 目標=「運動会を生徒実行委員会が運営する」

 なお、目標の中には結果が得られるまでに時間を要するものもあります。この場合、中期目標と短期目標の両方を設定すれば、短期目標の達成状況を把握することで中期目標に近づいているかどうかを判断しやすくなります。

Q3 学校運営改善モデルでは、課題を選んだ後、まず方法を考え、次に目標を決めています。目標を決めた後、そのための方法を考えることが一般的ではないでしょうか。

A3
 たしかに、最初に目標を決め、その目標達成のための方法を考えることが一般的な順序だといえます。モデルでは、この順序を逆にしています。
 これは、議論の内容をできるだけ具体的なものにするためです。

 目標は将来の姿なので、議論の内容が抽象的になりがちです。そこで、抽象的な議論を先にするよりは、具体的な方法についての議論を先に行います。
 チームの課題を選んだ後、課題に取り組む方法(プロセス)をどう改善するかのアイディアを出し、方法を決めます。その後、方法を実行することで何が達成できそうかを考え、目標を決めます。
 目標を決めた後、もし方法の修正が必要だと考えれば、再度方法について議論します。

 この順序のように、先に方法を決めてその後に目標を決めると、目標の内容が現状維持のレベルにとどまってしまうおそれがある点には注意が必要です。
 議論の進め方に慣れた段階で、目標を先に決め、目標を達成するための方法を決めるという順序で議論することが適当でしょう。

 方法や目標の内容が抽象的になってしまうと、実行を伴わないスローガンになるおそれがあります。実行したとしても、その成果が見えにくくなってしまいます。方法や目標をできるだけ具体的にすることがとても重要です。

7.発表〔15分間〕

  • <モデル内容>
  • (1)チームごとに
  • ・目標
    ・方法と開始時期
    (・中間地点での振り返りの日)
    を発表する。
  • (2)全体について校長からコメントする。

 チームでの議論の結果を発表するのはなぜですか。


 チームごとに議論の結果を発表することで、各チームの進め方や効果のある方法を学校全体で共有することができるからです。
 管理職がコメントすることで、各チームの取組が学校全体の重点目標に沿っているかどうかを確認することができ、重点目標の共通理解も深まります。

【3】 チームで議論<第2回>
学校運営改善モデルトップ

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