世代会計からみた選挙棄権のコスト ─20代は17.5万円の「損」─

島澤 諭(関東学院大学経済学部教授)

Talking Points

  • 膨張を続ける日本の財政は、世代別の生涯純負担で比べると、深刻な世代間格差を生み出している。特に、投票権を有しない0票世代(18歳未満の現在世代及び現時点では未出生世代)で生涯純負担が大きく、0歳世代では生涯純負担額は3740万円、生涯所得比で25.8%、将来世代では1億3370万円、93%にも達している。
  • 今回改選を迎える参議院議員が当選した2016年当時の世代別生涯純負担と比べても、消費増税などで高齢世代の純負担も増したが、赤字国債を財源とした「幼児教育無償化」「高等教育無償化」「給付金配布」など歳出増で現役世代と0票世代で純負担の増加額が上回っている。
  • 若者世代の投票率が高齢世代の投票率より低いことで生じる生涯純負担額の格差を「選挙棄権のコスト」と考えれば、投票率1%当たり若者世代で44万円、中年世代で18万円、一人当たりでは年額10代12.4万円、20代17.5万円、30代12.7万円、40代2.7万円、50代0.3万円となる。
  • 0票世代は投票により政治力を行使したくとも行使できない結果、投票権を行使できる若者世代よりも、平均して5158万円重い追加負担を負わされている。
  • 少子化、高齢化が進行する中にあっても、高齢者重視の政治の流れを是正するためには、投票を通した若者世代の政治的影響力を確保すると同時に、政治から独立した中立的な独立財政機関を設置することで、民意に引っ張られがちな民主主義の外側から、政府の財政運営に対する監視役とさせるなど、若者世代や0票世代の利益保護にあたらせる必要がある。

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