今日の世界は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に加え、米中の戦略的競争の本格化、地球環境問題の深刻化といった困難な課題に直面しています。AIやビッグデータ、自動化といった破壊的イノベーションが、産業革命に比肩する巨大な社会変化をもたらすともみられています。いずれも人類にとって無視できない挑戦ですが、眼前の現象にとらわれているだけでは袋小路を脱することはできないでしょう。
そこで政策シンクタンクPHP総研は、月刊誌『Voice』2021年6月号の総力特集「転形期の人類」に企画協力し、文明論や人間観、資本主義のあり方、地球システムと人間圏の相互作用といった広い視野にたって、人類が置かれている文脈を深く理解することを試みました。なかでも、人類が地球システムに深刻な影響を及ぼす「人新世」とも称される構造変化は、政治や社会、企業経営の大前提を問い直すものです。本特集では、石井菜穂子東大理事とPHP総研代表・研究主幹の金子将史の論考、レベッカ・ヘンダーソン・ハーバード大教授へのインタビューがこのテーマを取り上げています。
根本的な変化が長い時間をかけて生じることは、歴史が示すところです。PHP総研では、長期的、巨視的な視点から現代を位置づけ、世界の今後を考えるため、「文明構造の転換と日本の戦略」研究会を開始しました。本特集でも、同研究会座長の中西寛京大教授の論考、メンバーの岡本隆司京都府立大教授と渡辺靖慶大教授の対談を掲載しています。ご一読とともに同研究会にもぜひご期待ください。
※2021年5月21日(金)にVoice×PHP総研ウェビナー「文明の『二重転換』と日本の役割」を開催しました。
【内容】
- 「情報処理」に偏重する人類の愚 養老 孟司(解剖学者/東京大学名誉教授) 聞き手:編集部(中西史也) 依然として続くパンデミック、都市化と合理化に邁進してきた我々が
いまこそ問い直すべき思考と死生観とは - 文明の「二重転換」と日本の役割 中西 寛(京都大学法学研究科教授) 米ソ冷戦の時代とは異なり、さまざまな複雑性と不確実性を有した
生成途上の秩序のなかで、今後の国際政治をいかに捉えるべきか。
文明論的視座で世界を見据えたとき、日本の「虚文化」の可能性とは―― - 米中対立は「文明の衝突」なのか 岡本 隆司(京都府立大学文学部教授) 渡辺 靖(慶應義塾大学環境情報学部教授) パンデミック以前から続く、米中覇権競争。
その対立を紐解くには、日々の政策論議とは異なる次元、
すなわち両国の統治原理の違いに着目しなければならない。
「普遍主義」を掲げるアメリカと、それを容れない中国。
そして、二大国の狭間にある日本がはたしうる役割とは - 「人新世」における新たな課題と責任 石井 菜穂子(東京大学理事、グローバル・コモンズ・センター ダイレクター) 未知の地質時代「人新世」に踏み出しているわれわれは、
人類の共有財産である「グローバル・コモンズ」を、
いかにして責任をもって管理していくべきか - 環境問題を解決する資本主義 レベッカ・ヘンダーソン(ハーバード大学経営大学院教授) 聞き手:近藤奈香(国際ジャーナリスト) 企業には、経済成長を遂げながら社会変革を起こす力がある
- グリーンシフトを実現する政治と経営 金子 将史(政策シンクタンクPHP総研代表・研究主幹) 人間圏と地球システムの関係安定化が要請される「人新世」の時代。
これからの持続可能性を考えていくうえで、いま必要なのは、
松下幸之助が唱えた「右手に経営 左手に政治」の姿勢だ - 「現代のルネサンス」へのヒント 御立 尚資(ボストン コンサルティング グループ シニア・アドバイザー) ヤマザキマリ(漫画家・文筆家) 「技術」と「経済」、そして「想い」。
この三点が、バランスよく組み合わさった結晶が中世ルネサンスであった。
では、私たちは現在の時代、ルネサンスを興すことができるのか。
人類は何を取り戻し、いかなる意志をもつべきか、
BCG元日本代表と、『テルマエ・ロマエ』などでしられ、
イタリアで長年暮らしてきた漫画家による特別対談