【PHP特別レポート】インド太平洋と海のシルクロード
―
政策シンボルの競争と国際秩序の形成―
本稿の目的は、太平洋からインド洋(そしてそれ以西)の秩序形成を求めての過程を、インド太平洋と「海のシルクロード」という2つの鍵となるシンボル(概念)を通して考察しようとするものである。そこで本稿がとる構図は、アジア太平洋に対する対抗概念としてのインド太平洋、インド太平洋に対する対抗概念としての「海のシルクロード」と言うものであり、そのなかで、インド太平洋、「海のシルクロード」そのものの内容、及び、それらの間の相互作用を考えようとするものである。そこで採用される分析視角は、政策シンボル(概念)間の競争と選択であり、そのような観点から、中国のシンボル選択の特徴(先取りして言えば、歴史を戦略目標の達成に使う戦略的「地歴学Geo-history)」をも明らかにしようとするものである。
【執筆者】
- 山本吉宣
- /新潟県立大学大学院国際地域学研究科長、政策研究センター教授・PHP総研研究顧問
【内容】
はじめに――問題の所在
序章 素描と分析枠組み
- 第I部 インド太平洋概念の推進国
- 第1章 認識の共通基盤――ブーティリアのインド太平洋論
- 第2章 アメリカ――「インド太平洋」の火付け役
- 第3章 オーストラリア――自己アイデンティティ、対外政策の鍵概念としてのインド太平洋?
- 第4章 インド――インド太平洋のゲーム・チェンジャー?
- 第5章 日本――安倍地政学と対印関係のシンボル?
- 第6章 東南アジア――非戦略的、包摂的インド太平洋論とアンビバレンス
- 第7章 カナダと韓国――未定の国々
第II部 対抗概念を求めて- 第8章 中国:対抗概念の摸索と地歴学――鄭和と21世紀海のシルクロード
第III部 総括的分析- 第9章 インド太平洋論の構図と政治シンボルとしての効用
おわりに
1.インド太平洋概念
2.アジア太平洋概念の対抗概念としてのインド太平洋
3.インド太平洋概念への対抗シンボル:鄭和、海のシルクロード
4.「ジオ・ヒストリー(geo-history)」?:中国のシンボル選択
5.日本の対応