家や学校を失った子どもたちに勉強の場を

特定非営利活動法人 NPOカタリバ 代表理事 今村久美

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休み時間に生徒と談笑するスタッフ

悲しみを強さに変えて
 
 そんな立ち上がりの困難を乗り越え、大槌臨学舎が開設してから約2年。子どもたちには、これまでと違う変化が見られるという。被災者として、支援される側にいて、いい子でいることに疲れてしまった面があるのかもしれない。なかなか進まぬ復興と、いつまで続くのかわからない仮設住宅での暮らしに、張り詰めた気持ちが切れることがあったのかもしれない。
 
「震災直後から疲れたと言ってる子もいるし、ほんとうにそれぞれのタイミングなんですけど、疲れたと表に出して言う子が増えているのを実感します。それが震災の影響なのか、それとも思春期の難しさなのか、容易に判断のつかないところでもありますが。がんばれって励ます部分と、がんばらなくていいよと労わる部分と、使い分けが本当に難しい。もちろん、全員が疲れているわけじゃなくて、やる気に満ちあふれている子もいるし、逆になにかやっていないと辛くなるという子もいる。勉強をがんばったことで、心が復活したという子がいるのも事実です」
 
 今村さんをはじめ、コラボ・スクールのスタッフが心を砕いているのは、「なにができるようになったのかを、目に見えて感じさせるプログラムを組むこと」だ。人に支えられ助けられながら課題に向き合い、以前できなかったことができるようになったと実感することは、心のケアにつながる。それは同時に、「震災を理由に、子どもたちに夢を諦めてほしくない」「震災の経験を、悲しみから強さに変えて、社会のリーダーになれる人材に育ってほしい」という、今村さんの願いにも重なる。
 
 子どもたちが自ら主体的に将来を考え、チャレンジによってものごとは変えていけるという次の目標に向かって、コラボ・スクールでは新たな取り組みが始められていた。 (第2回「子どもたちの未来に、たくさんの選択肢を」へ続く)
 
【今村久美 略歴】
いまむら くみ*1979年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。大学在学中に2001年に任意団体NPOカタリバを設立し、高校生のためのキャリア学習プログラム「カタリ場」を開始。2006年には法人格を取得し、全国約400の高校、約90,000人の高校生に「カタリ場」を提供してきた。2011年度は東日本大震災を受け、被災地域の放課後学校「コラボ・スクール」を発案。
 
【取材・構成:熊谷 哲(PHP総研)】
【写真:shu tokonami】

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