社会的投資の日本型モデルづくりを目指して

日本ファンドレイジング協会 代表理事 鵜尾雅隆

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――アメリカではファンドレイザーの資格の有無が年収にも影響することが、積極的な資格取得のモチベーションのひとつになっているそうですね。
 
鵜尾:資格を持っているファンドレイザーと持っていないファンドレイザーでは、年収にして平均2万ドルくらいの差があると言われています。ファンドレイザーの資格を持っていることで、人材としての市場評価が上がるんですね。
 また、ファンドレイジングはフレンドレイジング(仲間づくり)だという言葉もあるくらい、ファンドレイジングを行う上ではネットワーク力が欠かせないんです。新しい情報や知見、きっかけといったものの中には、人とのつながりの中でしか得られないものがたくさんありますよね。
 実際、ファンドレイザーの求人の様子などを見ていると、有資格者が採用される傾向があると思います。ファンドレイジングに関する共通言語があるし、勉強会などで顔を合わせたことがある可能性も高いでしょうから、安心感があるんでしょうね。
 
――ファンドレイザーの認定試験では、知識や知見、ノウハウについては筆記試験や面接で測ることができると思いますが、実際のスキルや倫理観については、どうやって評価されるんですか?
 
鵜尾:倫理については、「ファンドレイジング行動基準」という倫理基準に署名してもらうんです。署名・宣誓していただいて、それに反した行動が報告されたら資格をはく奪します、ということにしています。
 実行力に関しては、日本ファンドレイジング協会では認定ファンドレイザーと准認定ファンドレイザーの2階層の資格を設けているんですが、准認定に関しては、ファンドレイジングに関して学んでくださいねという入り口の資格なので、必修研修に参加して勉強して全体像を把握することで取得できます。
 認定ファンドレイザーには、それに合わせて有償実務経験3年以上という基準を設けているんです。つまり、対価をもらいながら、プロフェッショナルとしてファンドレイジングに関連した仕事に3年以上携わった経験を、それはどんな内容の仕事でどんなパフォーマンスだったのかということも含めて、自己申告してもらうんです。
 「有償」実務経験3年以上というのは、実はけっこうハードルが高くて、ボランティアでやったものに関しては認められない。ボランティアが悪いということはないんですが、対価をもらっていると逃げも隠れもできなくなりますから、その緊張感の中で仕事をしながら、かつ成果を出してきた人というのを評価するようにしています。
 あとはプレゼンテーションテストをやったりもしています。人とのコミュニケーションができないと、ファンドレイザーは務まりませんから。認定ファンドレイザー試験の受験には2日間の研修への参加が必須なのですが、その中で行われるグループワークやプレゼンの様子を見ながら、明らかに協調性がないとか、まったくプレゼンができないという人だと、認定取得は難しいですね。しゃべるのが得意でなくても立派なファンドレイザーはもちろんいますから、プレゼンがすべてではないんですが。

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