子育てとキャリア、「どちらか」ではなく「どちらも」選択できる社会に

NPO法人ArrowArrow 代表理事 堀江由香里

logoのコピー
(画像提供:ArrowArrow)

スタートは「彼女にやめられたら困る」
 
 「ArrowArrow」という団体名と矢印をあしらったロゴは、道路標識からきているのだという。「子育てや介護等の理由に左右されず、仕事を当たり前に続けられる社会の創造」をミッションに掲げ、「可能性」や「選択肢」を表せるような名前を考えていた堀江さんの頭に浮かんだイメージが、行先を指し示す矢印だった。
 
「誰もが自分の望む未来を選択できるように、そのための選択肢をたくさん提供できるように、という思いを込めて、Arrowがたくさん、ということで、ArrowArrowという団体名をつけました。ロゴは私がデザインしたんですが、実はいっぱい矢印が隠れているんですよ」
 
 ロゴに隠れたたくさんの矢印のように、ArrowArrowはさまざまな方向から、「働く女性」の問題にアプローチする。
 
「現在のArrowArrowの活動内容は、大きく分けると3つあります。まず、企業向けに実施しているのは、『産休!Thank you!』というコンサルティングプログラムです。産休・育休取得者が発生したときに、彼女がしっかりと休みをとって復帰できるように、また、ただ復帰するだけでなく、短時間勤務でもしっかり活躍できるように、当人を中心に人事部や直属の上司とチームを組んで、働き方をどう変えたらいいのか考えます」
 
 中小企業向けに特化し、これまでに6社ほどの産休・育休制度に関するコンサルティングを手掛けてきたが、クライアントの多くは社員規模が100人以下の中小企業だ。
 
「社員が300人以上になると、大企業の定義に入るので、国からのチェックも厳しくなり、産休・育休取得に関しても、しっかりした制度があるところが多い。逆に、10人くらいの組織だと、社長と社員の距離が近いので、かっちりした制度を整えなくても、柔軟にやれる面があります。実は、いちばん難しいのは、50人から100人くらいの規模の会社。社長からも距離が出てくるし、制度もまだ整っていないところが多いんですよね。なので、そういう企業さんからお声掛けいただくケースが多いです」
 
 また、ArrowArrowが手掛けるのは、その企業の産休・育休取得の第一号の事例である場合が多い。
 
「その会社の中でコアな存在というか、ハイパフォーマーの女性の妊娠がきっかけとなって、お声掛けいただくことが多いんです。これまでは妊娠した女性はみな辞めていったから、会社側もルールやノウハウがない、だけど彼女に抜けられると困るから、働き続けてもらえるような組織になりたい、といったところがスタートになっています」
 
 プロジェクトは、妊娠発覚時から産休に入るまでの4~5か月がメインとなる。妊娠してから産休に入るまでに、どれだけ組織の体制が整えられるか次第で育休取得後の復帰のしやすさが変わるため、この期間が勝負だ。プロジェクトチームには、産休・育休を取得する本人のほか、その直属の上司にも必ず入ってもらうようにしている。
 
「100人くらいまでの会社だと、人材育成に特化した社員がいるケースはあまり多くありません。そういう方がいればもちろんプロジェクトチームに入ってもらうんですが、人事部の社員だけだと、制度については理解していても、自社の現場でなにが起こっているかリアルな実態は把握できていなかったりします。なので、なるべく事業全体を把握して回している人や、直属の上司に入ってもらって、彼女が職場に戻ってくるイメージを持ってもらえるようにしているんです」

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