市民はもっといろんなことができる

京都地域創造基金 理事長 深尾昌峰

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日常的な関係性の可視化で地域力を底上げする
 
 「ラジオカフェ」の愛称で地元の人々に親しまれている京都コミュニティ放送。月に120前後のプログラムを、市民自らが制作して発信している。自主制作率は100%だ。
 
「毎週5分間発信されている八百屋さんとか、仕事のやりがいを伝えたい若手の看護師さんとか、学生とか、地元のいろんな人がさまざまな情報を発信しています。中学校の放送部の生徒たちが、『学校では先生があれはだめ、これはだめって言うから窮屈だ』って、お年玉の残りを握りしめてやってきたこともありましたね」
 
 防災の観点からコミュニティFMの重要性が見直されてきてもいるが、深尾さんは、それは目的というよりも結果だと考えている。
 
「もちろん、コミュニティFMは災害時に地域に密着した情報を流せるんだけど、それよりも前の日常的な地域の関係性を営むツールだと思っています。あそこに行けばこんな情報があるとか、あの人はこういう情報を発信している人だとか、そうした地域の中の密接な関係性が、ある意味でその地域の持つ社会資本として、日常的に可視化されるということが大事なんです」
 
 発信しなければわからないものが、発信されることでその存在や価値をアピールできる。「顔が見える関係」ほど狭い範囲ではないが、全然わからない範囲でもない。そういう距離感で、地元の人々がお互いを認識し合い、情報を共有し合う。そうやって地域の人々が連携し合い、一丸となってまちづくりを考えていく土台があってこそ、京都地域創造基金やプラスソーシャルで進めている、「ソーシャルなお金の流れを生み出す仕組み」が生きてくるのだ。
 
 これまでにたくさんの事業に取り組んできた深尾さん。手掛けてきた事業はさまざまだが、その一つひとつが線となってつながり、面となって広がって、市民の活動を力強く後押ししてきた。NPOの存在感は、深尾さんがきょうとNPOセンターを設立した16年前とは比べものにならないほど増してきているが、活動にかけるその思いは、いまも変わらない。――「市民はもっともっといろんなことができる!」
 
 
 
深尾 昌峰(ふかお まさたか)*1974年生まれ。大学在学中に起きた阪神・淡路大震災でのボランティア活動をきっかけにNPO活動に携わる。1998年にきょうとNPOセンターを設立、初代事務局長を務める。以降、日本初のNPO法人放送局の設立、公益財団法人の設立など、さまざまな活動に精力的に取り組んでいる。公益財団法人京都地域創造基金理事長、特定非営利活動法人きょうとNPOセンター常務理事、特定非営利活動法人京都コミュニティ放送副理事長、社団法人全国コミュニティ財団協会会長、龍谷大学政策学部准教授。
 
【写真:長谷川博一】

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