「ねじれ国会」が解消されるかどうかの分岐点で考える
若田部:女性は3年間育児をすべきという安倍総理の価値観と、女性の活用と大都会の女性に対する政治的アピールが重なったのがこの政策か。ローカルなことがきめ細かく決められていないのは事実で、地方に人材、権限、財源を動かす必要がある。
永久:地方分権については今回の選挙ではほとんど争点になっていないが、究極の地方分権のかたちである道州制を掲げている政党はいくつかある。
荒田:道州制は衆院選でもかなり強調されていたが、先送りされた。しかし、全国知事会では、道州制に関するアピールが採択されている。全国市長会も道州制に関する会議を行っている。道州制については参院選後に大きく動いていくはず。
存在感の低下に歯止めをかけた外交の次なる課題
金子:安倍政権の経済政策と安定した政局が、日本の存在感の低下に一定の歯止めをかけた。TPPにも早期に決断を下して、日米関係にも明るい兆し。中国・韓国との関係は相変わらずだが、地球儀を俯瞰した戦略的外交で、東南アジア、中東、ロシアなどを訪ね、脇を固めている。選挙後は、隙を見せないよう、集団的自衛権、防衛大綱、NSC、秘密保護法制などに着手することになるはず。与党はこの点について語り、野党はそこを追及すべき。
ソーブル:海外では、安倍首相は外交や軍事関連に関しては「危ない人」というイメージ。ただ、尖閣諸島をめぐる中国との問題は悪化しておらず、意外とプラグマティックという評価。歴史問題に関しては、北朝鮮の核開発問題、対中外交・安保などで、日米間が足並みを揃えなくてはならない中で、韓国と仕事ができなくなる状況になるのは避けたいというのが、アメリカの見方。
加藤:欧米の外交官によれば、日本の政治家は外交・安全保障と歴史認識の話を一緒にするべきではない。外交に関する未熟さがあるのではないか。
石田:最近は、安倍首相というより、橋下大阪市長の従軍慰安婦に関する発言が、政府の発言のように取り上げられ、ネガティブな印象が大きい。東南アジアには、特に若い人を中心に日本に好意的な人も多いが、そういう部分の反応は強く出ている。
政党のガバナンスとネット選挙について考える
加藤:企業については、会社法で、役員の責任、権限、選び方、退任の仕方など、コーポレートガバナンスのあり方が決められているが、国家のガバナンスを担う政党にあるのは、自分たちで変えられる党則だけ。民主党政権の問題は、党のガバナンスの欠如に突き詰められる。現在の自民党政権ではガバナンスの問題はまだ顕在化していないが、よい政治を行うためには政党法をつくり、政党のガバナンスを確立する必要がある。政治家みずからが自分を縛ることはなかなかできないので、ここは国民サイドから声を上げなければならない。
ネット選挙については、そもそも公示日を境にして、政治活動と選挙運動を分けているところが問題。この境をなくして、国民は政治家の日常の政治活動を見ながら投票をするようにすべき。そうすれば、ネット選挙もはるかに自由かつ有効に行えるようになり、若者の政治に対する関心も高まっていくはず。