地政学的要衝研究会
安全保障の命運を握る宇宙

ゲスト報告者:片岡晴彦(第32代航空幕僚長、日本宇宙安全保障研究所<JISS>副理事長、元空将)

本稿は『Voice』2022年7月号に掲載されたものです。

地政学的要衝研究会」は、日本の対外政策や日本企業のグローバル戦略の前提となる情勢判断の質を向上し、平和と繁栄を考えるうえで不可欠の知的社会基盤を形成することをめざして、鹿島平和研究所と政策シンクタンクPHP総研が共同で組織した研究会です。第一級のゲスト報告者による発表をもとに、軍事や地理をはじめとする多角的な観点から主要な地政学的要衝に関する事例研究を行ない、その成果を広く社会に公表していきます。

ロシア・ウクライナ戦争において、ロシアはウクライナ軍の予想外の反撃に苦戦し、首都キーウ制圧という当初の目標を達成できず、ウクライナ東部を重視する作戦に切り替えたとされている。戦力で圧倒的に劣ると見られていたウクライナ軍がロシア軍を苦しめている要因はいくつも考えられるが、その一つは、米国や北大西洋条約機構(NATO)諸国が、宇宙からウクライナを支援していることであろう。

現代において、通信や偵察・監視に限らず、作戦行動から情報戦に至るまで、戦争のあらゆる局面が宇宙システムに依存している。ウクライナにおける戦争は、宇宙を制するものが将来の世界の覇権を握るという現実を、あらためて見せつけたと言える。

連載第6回目は、軍事・地政学的な観点から宇宙の重要性を考察し、主要国の宇宙開発の狙いや取り組みの現状を解説したうえで、宇宙覇権をめぐる大国間の知られざる競争の実態に光を当てたい。

宇宙への依存を強める世界

どこまでが空でどこからが宇宙なのだろうか? 国際的に明確な定義が存在するわけではないが、「国際宇宙航行連盟」は、海抜高度100km(カーマン・ライン)までを「大気圏」、それ以遠を「宇宙」と定義しており、これが目安になっている。100km以下は「領空」に当たるため、ここを主権国の許可なく飛んでくる航空機は領空侵犯になるが、宇宙の場合は領空主権が適応されないため、原則自由に飛行が可能である。

宇宙は、「低軌道」「中軌道」「静止軌道」と「それ以遠」に区分される。地上から高度2000kmまでが低軌道、2000kmから36000kmまでが中軌道、静止軌道は36000km前後である(次頁図1)。静止軌道に衛星を置くと、地球の自転と同じように周るため静止したように見える。ちなみに、南北両極の上空を通る人工衛星の軌道を「極軌道」という。

ここからさらに月、火星へと人類の活動範囲は広がっており、月までの宇宙空間(シスルナ領域)は、後述するとおり戦略的な観点からも重要性が増している。

低軌道といってもその空間に均等に衛星が打ち上げられているわけではなく、400~1000kmの範囲に多くの衛星が広がっている。偵察衛星や地球観測衛星、国際宇宙ステーション(ISS)も低軌道にある。

中軌道には、いわゆる測位衛星と呼ばれる全地球測位システム(GPS)や中国の北斗といった衛星が飛んでいる。また静止軌道には、気象衛星、通信衛星やミサイル防衛に使われる早期警戒衛星や日本版GPSの準天頂衛星の1機などが配備されている。

民生、安全保障分野ともに宇宙への依存は拡大の一途を辿っている。民生分野では、とくにGPSの位置情報、時刻情報に多くの社会システムが依存しており、航空機の管制、銀行のATM、株式市場の取引から電力網のスマートグリッドまで、いまや宇宙からの時刻同期(タイミング)情報や位置情報が不可欠である。

こうした状況を背景に商業宇宙活動も活発化しており、1012年には33兆円だった宇宙ビジネス市場は2019年には47兆円に拡大。とりわけ製造業やサービス業における宇宙利用が急速に進展している。

安全保障分野における宇宙への依存の深化も顕著だ。以前は「あればいい」程度だった宇宙からの支援が、いまでは宇宙なくして高度な作戦運用ができない状況になっている。人道支援、対テロ作戦、武力紛争、通常型戦争から核戦争まで、あらゆる軍事活動分野で宇宙への依存を強めているのが現状である。

現代の軍事作戦と宇宙

ISRと呼ばれる情報、監視、偵察任務、GPSを使った精密誘導攻撃、ミサイル防衛や衛星通信といった分野において、宇宙システムが作戦運用に不可欠になっている状況を具体的に見ていきたい。冒頭で触れたとおり、今回のウクライナ戦争でも、宇宙からの支援が戦況に大きな影響を与えている。米国は衛星を通じた戦術情報をリアルタイムでウクライナに提供しており、カナダ政府も民間の衛星会社に資金を提供し、ウクライナに画像を提供していると伝えられている。またイーロン・マスク氏の米宇宙企業SpaceXが、衛星インターネット接続サービス「スターリンク」をウクライナに提供し、専用の送受信機5000台を送って支援したことで、ウクライナ軍は安定的な通信を確保できた。同軍は無人機部隊と砲兵部隊をスターリンクでつなぎ、無人機で収集したロシア軍の位置情報に基づいて砲兵部隊が砲撃するといった形で効果的にロシア軍を攻撃したとされる。

ウクライナ戦争では、SpaceXに代表される民間の小型衛星の能力の高さが際立っている。米Capella Space社のレーダー衛星の画像には、ウクライナの川にロシア軍が設置した軍事用の浮き橋が鮮明に写されていた。ウクライナ軍は、ロシア軍の侵攻を阻むために事前にすべての橋を破壊しており、これに対してロシア軍は軍事用の浮き橋をかけた。Capella Spaceのレーダー衛星は、この橋を渡ったロシア軍の車両が停滞している状況を捉えており、それらの車両が大型か小型かまで識別が可能だ。ロシア軍がどのルートを通りどれくらいの規模で進軍してくるかという機密情報が、民間の小型衛星でここまではっきりとわかってしまう。

GPSは、我々が日常的に携帯電話やカーナビで利用しているため、すでによく知られたシステムだが、当初の目的は純粋に軍事利用であり、現在でも米国の宇宙軍が衛星を運用している。1993年から民生用の運用が始まり、とりわけ測位、航行、タイミングの民間利用が拡大することで、大きく方向性が変化した。GPSはいまや、軍のみならず民間の商業活動においても不可欠な衛星システムになっている。

GPSは、軍事分野においては精密誘導攻撃に頻繁に用いられている。統合直接攻撃弾(JDAM)というGPS精密誘導弾があり、その利用は年々拡大している。命中精度も当初は誤差30mだったものが、現在では5mにまで改善されており、文字どおりピンポイントでの攻撃が可能になった。きわめて正確に攻撃できるようになったため、市民や非戦闘員の犠牲を最小限に抑えることができるようになっただけでなく、使用弾薬量を削減する効果も高まった。

ただし、GPSは地上における受信電波が弱く、地上からの妨害に弱い。電波妨害装置などによる妨害が容易なため、GPSが利用不能になった事案が多数発生している。このため、万が一GPSが使用できなくなったときの代替システムとしても期待される、日本では準天頂衛星という日本版GPSを整備中である。現在は4機体制だが、2023年以降の7機体制へ向けて着実に整備を進めている。

また、ミサイル防衛システムも、宇宙からの監視がなければ機能しない。米国は、早期警戒衛星を静止軌道に6機、極軌道に2機配備して24時間、地球上のどこからミサイルを撃たれても発見できるような体制をとっている。現在のミサイル防衛システムは、宇宙から衛星で監視して、オーストラリアと米国とドイツに設置されている地上局と連携して機能する仕組みになっている(図2)。たとえば北朝鮮が弾道ミサイルを発射すると、衛星が探知し、オーストラリアの地上局にダウンリンク(衛星から地上の受信者に向けて電波が通信される経路)し、米国デンバー近くにある運用センターから日本へミサイル警戒情報が瞬時に伝えられる。

しかし、最近では弾道ミサイルではなく、いわゆる極超音速兵器が登場しており、従来のミサイル防衛システムでの対応が困難になっている。発射直後のミサイル探知には衛星を使用するが、迎撃する際には地上のレーダーで追尾する。通常の弾道ミサイルは放物線を描いて飛行するため、遠方で探知することが可能で対処する時間的余裕がある。

ところが、極超音速ミサイルは非常に低高度を飛ぶため、着弾する直前にしか地上レーダーで探知することができず、対処が著しく困難だ。このため、最初の探知から最後まですべて衛星で追尾できるような次世代の早期警戒衛星の構築が課題である。さらに、衛星通信システムの分野でも宇宙が利用されている。最近では、「マルチドメイン」と言われる海上、陸上、航空、サイバー空間、宇宙空間の5つの領域を統合する衛星通信システムの構築をめぐって各国が競い合っている。

言うまでもなくデータの通信速度も劇的に向上している。1991年の湾岸戦争の頃には、わずか0.1Gbpsだったのが、2003年のイラク戦争の頃には40倍に増え、さらに2020年になると1万倍の通信速度が要求されている。リアルタイムに画像や映像を取得することに対するニーズの高まりや、無人機の運用の増加などを受けて、膨大な通信量と通信速度が求められており、これが宇宙の衛星通信への依存度を高めている。

このように軍事分野では、宇宙システムへの依存度が高まっており、宇宙システムはいまや作戦運用の優位性の基盤だ。逆に宇宙システムが失われた場合は脆弱性につながり、その弱点をどのようにカバーしていくかが大きな課題となろう。

戦闘領域に変化する宇宙空間

米国の軍事作戦能力は宇宙における優位性に依存していると言っても過言ではない。世界規模の戦力投射、俊敏な危機への対応、精密な攻撃、そして複数戦域での秘匿性の高い指揮・統制・通信能力など、優位性の根源となる能力はすべて宇宙を必要としている。このため米国は、21世紀の宇宙を「戦闘領域」だと見なす。これに対して中国とロシアが挑戦しており、とりわけ両国ともに、米国を中心とする宇宙システムの脆弱性を突く能力を強化している。

米国は、トランプ前政権時代につくられた「国防宇宙戦略」のなかで、「宇宙は米国の国家安全保障、繁栄、科学にとって死活的に重要」だと指摘。「国際規範の作成などで有利な戦略的環境の醸成」に努め、「同盟国、友好国、産業界、他の米国の政府機関との協力」の下で「宇宙における包括的な軍事的優位の構築」をめざすとしている。

また、米国は中露の挑戦に対して「国家宇宙政策」で初めて宇宙抑止の原則を明確化した。それによると「米国または同盟国の宇宙システムに対する意図的な干渉または攻撃に対して、選択した時間、場所、方法、領域で熟慮した対応をとる」と述べ、確実な報復とマルチドメインにおける対応を示唆している。宇宙での攻撃に対して宇宙で対応するのではなく、地上での反撃も十分にありうること、それを決めるのは米国自身との方針を明らかにした。

一方、中国の宇宙戦略は「宇宙戦力が情報化された戦争を可能にするうえでの中核」との認識のうえにつくられている。また、敵対国、とくに米国の宇宙利用を拒否する能力を強化するため、衛星破壊能力に力を入れている。中国は「宇宙強国」というスローガンを掲げ、各衛星を次々と打ち上げている。その数はすでにロシアを超えて500機にのぼり、軍事衛星だけでも130機以上を数える。主力は「遥感」という小型衛星で、具体的には光学衛星やレーダー衛星、また電波収集のELINT衛星だ。これらの衛星が急速に整備され、現在は91機以上が地球上を回っている。

ロシアも宇宙戦略の基本は中国と同じようなトーンであり、とにかく米国の宇宙領域の優位性を少しでも阻むことに主眼を置く。ロシアは米国の宇宙への依存性をアキレス腱だと見なし、この脆弱性を突くために、攻撃的な宇宙兵器の開発を進めている。

宇宙におけるパラダイムシフト

そんな宇宙の領域において現在、「パラダイムシフト」が起きている。「ニュースペース」を提唱するイーロン・マスク氏がつくったSpaceXの登場で、ロケット打ち上げの再使用性が高まり、打ち上げコストは劇的に削減。また、衛星の小型化も進み、非常に安価になった。

コストが低くなった結果、衛星を大量に打ち上げられるようになり、1000機、2000機から3000機の衛星コンステレーション(多数の人工衛星を協調して動作させる方式)が実現しつつある。それにより高頻度でリアルタイムの衛星情報の利用が可能になり、ビッグデータが津波のように押し寄せてくる時代に突入した。当然、これを有効に活用するためにデータプラットフォームやクラウド、AI(人工知能)などの整備が死活的に重要になっている。

こうした状況を受けて、安全保障の分野でも商業部門を積極的に活用する動きが出ている。最終アクセスコストは過去10年で10分の1まで激減しており、今後もさらなる削減が期待されている。

スターリンクはこれまでに2000機弱を打ち上げており、コストが低下した結果、衛星コンステレーション化が進行中だ。とりわけ小型衛星の打ち上げが急速に進み、その能力も飛躍的に高まっている。米国のPlanet社の小型衛星は重量わずか6kgだが、中国の空母群が南シナ海を航行している様子を鮮明に写している。また、フィンランドのICEYEという会社が開発したレーダー衛星は、夜間や天候不良でも撮影できる能力を有する。

大型衛星は広域の画像を一度に撮影することが可能で多機能・高性能だが、1機当たりの価格が高価なため、敵対勢力から格好の攻撃目標になる。その点、1機や2機破壊されてもそれほど影響のない多数の小型衛星のコンステレーションを組むほうが、セキュリティ面からも利点が多いとされる。ただし、今後は商用衛星も攻撃の標的になる可能性は十分にあると考えられる。

衛星通信ネットワークの大きなトレンドとして、低軌道の衛星を通じて携帯電話にもつながるようなブロードバンドの計画が進められている。こうした低軌道衛星ブロードバンドの分野には、衛星会社だけでなく、Amazon社、英国のOneWeb社、カナダ、中国、スペインや韓国の企業まで参入しており、今後さらに1万3000機の低軌道衛星が増える計画だ。

低軌道衛星ブロードバンドは、非常に高速での通信が可能で、ニューヨークとロンドン間を、現在の光ケーブルで往復するよりも12mm秒速くなるという。これは2つの金融市場にとって非常に大きなメリットがあるとして注目されている。

そもそも海底ケーブルは、物理的にきわめて脆弱だ。東日本大震災のときには茨城沖のケーブルが断線したことがあり、今年1月のトンガの噴火でも海底ケーブルに影響があったと伝えられた。このように海底ケーブルに支障が発生した場合、それを補完する意味でも衛星通信が今後重要性を増していくだろう。

宇宙活動領域の拡大と宇宙覇権をめぐる競争

現在、地球軌道で、低軌道や静止軌道の混雑化が深刻化しており、早期の対応が求められている。宇宙空間の安定を確保するためには、宇宙物体を正確に把握する必要があるため、「宇宙領域認識(SDA)」能力の重要性が増している。

現在最も高度なSDA能力を保有しているのは米国である。米国は、全世界に約30のセンサーを地上と宇宙に配置し、SSN=Space Surveillance Networkというシステムを構築して宇宙を監視。具体的には、10cm以上の宇宙物体が現在2万7000個あるが、これを常時追尾し、衛星間の衝突や不審な動きをしている衛星などを監視している。ただし、それでも南半球と極東地域、そして静止軌道での能力が不足しているため、日本もSDA能力向上のための取り組みに力を入れている。

山口県にはディープスペースレーダーという宇宙監視のレーダー設備を、東京都の府中には運用システムを整備している。さらに2026年を目処に、静止軌道にSSA衛星という宇宙設置型の光学望遠鏡を打ち上げる予定だ。この他、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の光学望遠鏡やレーダーなども利用して、米国と共にSDAの能力を向上させる試みを進めている(日本ではSSA〈宇宙状況把握〉という呼び方が一般的)。

今後、人類の活動範囲が月や火星にも拡大することに伴い、2050年の宇宙市場規模は劇的に拡大すると見積もられており、いずれは宇宙が国力のメジャーエンジンになると言われている(図3)。米国はアルテミス計画を通じて、2024年までに有人月面着陸を成功させようとしている。この計画はあくまでも事前のステップであり、目標は有人の火星探査を進めることである。

一方で中国も、国家的なプロジェクトを着実に進めている。2033年には月面に恒久的な研究基地を建設する予定だ。ここでも中国とロシアの連合が構築されており、2021年3月に両国は、国際月研究基地構築に関する了解覚書を締結している。

中国は2019年1月、世界で初めて無人探査機の月の裏側への軟着陸を成功させ、月の裏側に通信衛星を置いた。2021年1月には火星にも無人探査機を着陸させており、2030年以降は火星の探査が急速に進むのではないかと言われている。

これまでは低軌道と静止軌道の間が主な活動領域だったが、今後は地球と月の間の「シスルナ領域」と呼ばれる空間の重要性が増すと考えられている。月の周回軌道や月面を含めて、この領域には軍事的にも非常に重要なエリアが存在するため、宇宙安全保障にとって大事な空間である。米国はシスルナ領域の監視を進めるためのパトロールも検討しているという。

また月の楕円軌道は地球との通信が可能であるため、月の軌道を押さえることが今後非常に重要になる。さらに「ラグランジュポイント」と呼ばれる天体と天体の重力の均衡がとれるポイントがある。たとえば地球と月の間に1番、2番、3番、4番、5番という「ラグランジュポイント」があり、ここは重力的に均衡がとれている。あまりエネルギーを使わないで留まっていられる領域のため、通信中継衛星を投入するのに最適の場所だという。

こうした軍事的に重要な領域をどのように確保していくかが、これからの戦略的競争のポイントになる。中国はすでに2番に通信中継衛星を置いており、米国は4番と5番のポイントを戦略的に重要だと認識している。今後は宇宙ステーションなどの配備も関わってくるとされており、こうした領域の争奪戦が激しさを増すだろう。

米国や中国など世界の大国は、南シナ海やペルシャ湾といった地球上の要衝にとどまらず、宇宙においてもシスルナ領域やラグランジュポイントといった要衝をめぐって競争を展開している。しかも宇宙や月では、いまのところ地球の法の支配は及ばない。宇宙はかつての西部開拓時代のWild Westと同様に、先着で管轄権・管理権を取得した者が主権をもつ領域となる可能性がある。

宇宙をめぐるパラダイムシフトが起き、宇宙覇権をめぐり米国を中心とする民主主義勢力と中露連合の間の熾烈な競争が激化しているが、日本は何をどこまでどのように進めていくのか戦略的な基本が定まっていない。2020年に改定された「宇宙基本計画」はあるものの、安全保障を中心とした「国家宇宙戦略」は存在しない。

主要国が国家宇宙政策や国防宇宙戦略を策定し、多国間宇宙協力を進めるなか、日本はこうした取り組みに参加できておらず、文字どおり取り残された状態だ。独力での対応はおろか、宇宙安全保障分野で突出したシステムや技術があるわけでもない我が国にとって、米国中心の多国間協力の枠組みの一角を占めるべく、資金協力を含めた貢献のあり方を決めることが急務である。

現在、国家安全保障戦略(NSS)の改定作業が進められている。NSSは「国家安全保障に関する基本方針として、海洋、宇宙、サイバー、政府開発援助(ODA)、エネルギー等国家安全保障に関連する分野の政策に指針を与えるもの」とされている。安全保障の観点から宇宙にどう取り組むのかについて、総合的な見地から長期的方針を明記した国家宇宙戦略策定の必要性を、NSSのなかで言及するところから始めるべきではないか。

※無断転載禁止

片岡晴彦(第32代航空幕僚長、日本宇宙安全保障研究所<JISS>副理事長、元空将)
ゲスト報告者
片岡晴彦(第32代航空幕僚長、日本宇宙安全保障研究所<JISS>副理事長、元空将)

地政学的要衝研究会メンバー

大澤 淳
(中曽根康弘世界平和研究所主任研究員、鹿島平和研究所理事)

折木 良一
(第3代統合幕僚長)

金子 将史
(PHP総研代表・研究主幹)

菅原 出
(グローバルリスク・アドバイザリー代表、PHP総研特任フェロー)

髙見澤 將林
(東京大学公共政策大学院客員教授、元国家安全保障局次長)

平泉 信之
(鹿島平和研究所会長)

掲載号Voiceのご紹介

2022年7月号特集「独裁国家と闘う」

  • 本村凌二 & 岡本隆司 / 中露の「帝国」的膨張と歴史の教訓
  • ラリー・ダイアモンド / 敗戦と民主主義の後退を阻め
  • 岡部芳彦 / ゼレンスキーvs.プーチン ヒトラーvs.チャップリンの再来か
  • 天児 慧 / 市民社会を粉砕する習近平
  • 吉崎達彦 / 経済制裁ではロシアを止められない
  • 浜由樹子 / ネオ・ユーラシア主義と露外交の関係性
  • 武内和人 / 独裁者誕生のメカニズム
  • 仲正昌樹 / 「真の保守思想」を取り戻せ
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