改正FIT法は再エネ事業をこう変える! !-地域貢献型再エネ事業こそが地方創生の切り札だ
PHP「再生可能エネルギー」フォーラム
2012年7月の「再生可能エネルギー特措法」(FIT)施行から、メガソーラーを中心に再エネ発電設備の導入量が急増しました。国全体では、エネルギー安全保障の向上、化石燃料への過度の依存からの脱却等が進みました。一方、地域では、地元の住民・事業者が主導する再エネ事業は資金調達に阻まれ事業化を断念するケースが後を絶たず、ローカル経済の活性化には程遠い実状です。
改正FIT法の施行等、再エネのあり方が問い直されている今こそ、自治体・事業者は、地域との協働的な関係を構築しつつ事業性を高め、その果実を地域還元しうる方策への知見を深める必要があります。そこで、「地域貢献型再エネ事業」のしくみはどうあるべきか、その課題と解決方策を議論するPHP『再生可能エネルギーフォーラム』を2017年7月25日に開催しました。
フォーラム前半では、まず、梶 直弘氏(経済産業省資源エネルギー庁)が「再生可能エネルギー政策の今後の展望」と題して、改正FIT法、並びに今後の再エネの大量導入時代における政策課題としてコスト競争力、FIT制度からの自立、円滑な系統接続等について講演しました。
続く特別講演では、当研究会メンバーの大和田野芳郎氏(産業技術総合研究所)が「技術革新がもたらす次の再エネ」と題し、発電力変動制御と長距離輸送等の技術分野の動向を解説し、再エネの大量導入の可能性とそれが豊かな地域社会づくりに貢献していく必要性を提唱しました。
さらに、事例報告では、野池雅人氏(㈱PLUS SOCIAL)が、和歌山県印南町、兵庫県洲本市等での実践例を引き合いに、地域の事業者や個人の社会的投資を引き出す再エネ事業のしくみを解説しました。
フォーラム後半では、まず、PHP「地域貢献型再エネ研究会」が、ローカル経済を活性化させる再エネ事業のあり方と、その「基礎的要件」や国、自治体による「積極的支援」の具体策を提言しました。
続くパネルディスカッションでは、山下英俊氏(一橋大学)は、全国市区町村を対象にした『再生可能エネルギー実態調査』の結果を基に、トラブルの多発、FIT価格の低下等が要因となって自治体で再エネ導入に対して厳しい見方が広がっていること、田中信一郎氏(〔一社〕地域政策デザインオフィス)は「収益納付型補助金」の導入が地域貢献型再エネ事業の普及拡大の切り札となること、江口智子氏(弁護士)は、再エネの大量導入のためには、間接オークション方式や日本版コネクト&マネージの仕組みの導入が必要であること等を述べました。
最後に、フォーラム参加者とパネラーの間で質疑応答が行われました。そこでは、FIT法改正により再エネ導入の機運が低下している面は否めないが、多くの地域がFITをローカル経済の活性化に活用するといった考え方すら持っていないこと、採算上の理由で再エネ事業から撤退する事業者も見られるが、地域貢献型再エネ事業を志す企業や地域にとってはむしろチャンスが到来していること、今こそ、利害関係者は地域のありたい姿と再エネを活性化に使っていくという考え方を共有し、必要な支援制度を設計していく必要があること等が話し合われました。
▼提言書全文はPDFでお読みいただけます▼
政策提言 『再エネでローカル経済を活性化させる―地域貢献型再エネ事業のすすめ―』
http://thinktank.php.co.jp/policy/4030/
-プログラム-
1.基調講演 「改正FIT法とこれからの再エネ」 梶 直弘(経済産業省資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部新エネルギー課 課長補佐) | |
2.特別講演 「技術革新がもたらす次の再エネ」 大和田野芳郎(国立研究開発法人産業技術総合研究所 名誉リサーチャー) | |
3.事例報告 地域貢献型再エネ事業の先進事例の報告 野池雅人(株式会社プラスソーシャル取締役兼CFO) | |
4.政策提言 PHP地域貢献型再エネ研究会「提言」説明 水上貴央(弁護士/NPO法人再エネ事業を支援する法律実務の会 理事長) 福島健史(弁護士/早稲田リーガルコモンズ法律事務所) 佐々木陽一(政策シンクタンクPHP総研主任研究員) | |
提言の骨子 | |
提言1 自治体を中心とした地域が、地域の為になる再エネ事業を選択的に支援する枠組みを構築すべき 【提言1-1】地域貢献型の「基礎的要件」を共有する 【提言1-2】対象事業の信用力強化を支援の中核に置く 【提言1-3】地域貢献の評価を適切にフィードバックし共有する | |
提言2 再エネ事業者がより実効的な地域貢献を行うよう政策誘導を図るべき 【提言2-1】規制と支援の両輪を規定した政策条例の制定 【提言2-2】地域内事業発注を増やすための調達ルール 【提言2-3】域内外の事業者と市民による共同事業の枠組み構築 | |
提言3 再エネ事業者と地域がともに発展できる貢献手法を開発すべき 【提言3-1】地域協議会と連動した寄付型モデルの浸透 【提言3-2】地域事業兼業モデルを実現させる 【提言3-3】市民ファンドを含むコミュニティファンドの活用 | |
5.パネルディスカッション 【パネリスト】(50音順) 江口智子(弁護士/東京駿河台法律事務所) 田中信一郎(一般社団法人地域政策デザインオフィス代表理事/元長野県環境エネルギー課企画幹) 水上貴央(弁護士/NPO法人再エネ事業を支援する法律実務の会 理事長) 山下英俊(一橋大学大学院経済学研究科 准教授) 【コーディネーター】 佐々木陽一(政策シンクタンクPHP総研主任研究員) |
開催概要
【開催日時】 | 2017年7月25日(火)13:30~16:30 |
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【会場】 | 株式会社PHP研究所 東京本部中ホール 東京都江東区豊洲5-6-52 NBF豊洲キャナルフロント11階 |
【対象】 | 国、自治体職員、議員、再生可能エネルギー関連の事業者、NPO、メディア、その他再生可能エネルギーにご関心のある方 |
【主催】 | 政策シンクタンクPHP総研 |