マネーの流れが変わった
新経済の深層を読み解く
-『Voice』2024年3月号特集-
世界経済の姿は、この数年で大きく様変わりしました。人類の活動がパンデミックからの回復期に向かうなか、ロシア・ウクライナ戦争が勃発。これまでの前提を覆す一連の出来事により、マネーの潮流は激変し、多くの国が急激なインフレに直面することになりました。各国政府は、インフレ制御と経済活動鈍化の狭間で、財政政策と金融政策を調和させながら、舵取りを担うというかつてない困難な局面を迎えています。
こうした「マネーの流れ」の変化は、新たな成長経済を牽引する強大な動力源として作用すると同時に、中国の不動産不況や米シリコンバレー銀行破綻などの経済危機を引き起こす要因ともなっています。
本特集では、マネーの新潮流とそれが及ぼす影響に着目し、様々な観点から新たな経済の深層に迫りました。マネーの動きが、エネルギーやグリーンシフト、基軸通貨体制を左右することで国際政治におけるパワーバランスにもその潮力を及ぼし、反対に地政学的緊張や国家間対立が、海底の地殻変動よろしくマネーの流れを変えていくという大きな構図にも意を用いています。
激しく波立つ世界経済に比して、日本経済は比較的穏やかな凪のようにも見えます。しかし、円安やインフレ・株高に象徴されるように、変化は確実に訪れています。水面下で生まれつつある大小の波を、日本経済復活という力強い潮流へつなげていけるか……新たなマネーの流れを危機とするも好機とするも我々次第であり、2024年は今後の日本の行く末を占う試金石として重要な年になるのではないでしょうか。
特集のラインナップは本ページ下部の「内容」にてご覧いただけます。日本経済が長らく続いたデフレから本格的に脱却し、新しい繁栄のかたちを築くことができるか否かの重要な局面にあるいま、本特集を日本がとるべき針路についての議論のきっかけとしていただければ幸いです。