パブリック・ディプロマシー
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「世論の時代」の外交戦略―
他国民の支持や評価を勝ち取り、国際世論での存在感を高めていくことは、今日、外交政策を展開していく上で欠くことのできない要素です。軍事力では圧倒的に優越し、経済力も大きい米国の影響力は、グローバルな反米感情の存在によって削がれています。日本外交においても、靖国神社や従軍慰安婦といった歴史問題が、国家イメージを左右する課題として、国内外の争点となりました。関連して、ハーバード大学のジョセフ・ナイ教授が提唱する「他国を無理やり従わせるのではなく、味方につける力」としての「ソフト・パワー」が注目を集めています。
こうした変化への対応として、注目されているのが「パブリック・ディプロマシー」です。パブリック・ディプロマシーとは、対外広報や国際交流などを通じて、相手国の政府ではなく、相手国や第三国の国民に、国際社会の中で自国の存在感を高め、自国のイメージを向上させ、自国についての理解を深めていこうとする活動です。
今日、主要国は、パブリック・ディプロマシーを活発に展開するようになっています。アメリカは、「9・11」に直面してパブリック・ディプロマシーの変革を目指してきました。そして、中国が、パブリック・ディプロマシーの世界においても、新しい強力なプレーヤーとして台頭してきています。人々が抱くパーセプションを巡って、各国は熾烈な競争を繰り広げているのです。
わが国でもパブリック・ディプロマシーを強化する必要性が次第に認識されるようになってきていますが、まだ一部専門家の議論に留まっています。そこで、このたび、パブリック・ディプロマシーに関する基本的な情報を提供し、その全体像を提示するべく、『パブリック・ディプロマシー‐「世論の時代」の外交戦略』を刊行することにいたしました。
本書では、「パブリック・ディプロマシーとは何か」「主要国が、どのような体制で、具体的にどのような活動を行っているのか」「日本のパブリック・ディプロマシーは、どのような課題を抱え、どのような改善・強化の方向があるのか」といった点をカバーしています。
本書が、パブリック・ディプロマシーについての活発な議論や研究のきっかけになれば幸いです。
【内容】
<目次>
- 第一章
パブリック・ディプロマシーとは何か
北野充 - 第二章
主要国のパブリック・ディプロマシー
小川忠 - 第三章
アメリカの対中東パブリック・ディプロマシー
横江公美 - 第四章
イギリスの対日パブリック・ディプロマシー
─愛・地球博への参加 小川忠 - 第五章
中国の対米パブリック・ディプロマシー
マイケル・ユー - 第六章
日本のパブリック・ディプロマシー
金子将史 - 第七章
日本の対中パブリック・ディプロマシー
井出敬二 - 第八章
日本の対米パブリック・ディプロマシー
北野充 - 終 章
日本のパブリック・ディプロマシー強化への提言
金子将史
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『公共外交“輿論時代”的外交戦略』(外語教学与研究出版社)
※『パブリック・ディプロマシー ―「世論の時代」の外交戦略―』の中国語版。
趙啓正・中国人民政治協商会議外事委員会主任(閣僚級)が序文を寄せています。
監訳は劉江永・清華大学教授。