PHP「防衛と経済財政金融の統合戦略」研究会
ロシアのウクライナ侵略、中国の拡張主義、米国の自国第一主義などにより国際秩序は再び転換期を迎えており、日本はこれまで以上に厳しい戦略環境に直面しています。米国の防衛コミットメントも揺らいでおり、日本にとって、日米同盟を時代に適応させつつも、戦略的な自律性を高め、行動の自由を確保し、新たな連携関係を切り拓く必要性は増しています。
こうした中で高市政権は、防衛費をGDP比2%とする目標を2025年度中に前倒しで達成し、2022年末に策定された安保三文書を見直すことを明言しました。米国トランプ政権は同盟国に防衛面での一層の自助努力を強く求めており、NATO諸国は2035年までに国防費をGDP比3.5%、関連インフラ支出をGDP比1.5%とする目標を掲げています。日本としても、米国の要請の有無にかかわらず、幅広い観点から国益に資する防衛支出のあり方を考えるべき段階と言えます。
防衛支出を増額するにあたって財政的な裏付けを確保することは必須であり、軍事的な必要性の観点のみで歳出を野放図に拡大することは正当化できません。他方で、財政制約への考慮のみが先に立てば、国防や安全保障の土台を固めることが不可能になります。
本研究会では、防衛力強化を単なる歳出拡大に終わらせず、国家の供給力、技術力、財政金融の安定を支える「投資」と位置づけ、防衛投資を、経済構造の改革、イノベーション、レジリエンス強化につなげる方策を検討していきます。日本の経済財政や国際収支における防衛支出(レジリエンス分野を含む)や防衛産業の位置づけ、防衛・レジリエンスと相乗効果のある日本の産業構造の姿、有事に際しての経済財政金融分野での留意点と必要な備え、各国の防衛支出増が世界経済に与えるインパクトなど、防衛・安全保障領域と経済財政金融領域の相互作用について多面的に検討し、新しい視点で実践的な提言を行って、国民的議論を喚起することを目指します。
【PHP「防衛と経済財政金融の統合戦略」研究会委員】(敬称略・順不同)
- 田所昌幸
- (国際大学大学院国際関係学研究科特任教授) ※座長
- 太田智之
- (みずほリサーチ&テクノロジーズチーフエコノミスト)
- 相良祥之
- (地経学研究所主任研究員)
- 高見澤将林
- (笹川平和財団上席フェロー、元国家安全保障局次長)
- 金子将史
- (PHP総研代表・研究主幹)











