【PHP総研特別レポート】
言説の対抗と米中関係─歴史、理論、現状

現在、米中間では、経済、安全保障の分野において、厳しい競争が展開されている。それと同時に、イデオロギー、言説、あるいはナラティブ(物語、story)などいわゆるイディエーショナル(ideational)な分野での激しい対立/対抗がみられる(Friedberg, 2017, 2018; Mahnken, Babbage, and Yoshihara, 2018; Erickson, 2019)。「価値の戦争」や「ナラティブの戦争」あるいは「話語戦」という言葉さえ聞かれる。米中の対抗を考えるためには、安全保障、経済に加えて、この第3の分野でのダイナミズムを理解することが必須となる。

本稿の目的は、米中関係の展開を念頭に、言説やナラティブ、話語、さらに言説力、ナラティブ力、話語権と呼ばれるものを理論的に明らかにし、また時系列的に現実(特に米中関係)の展開と理論の展開とのかかわりを明らかにしようとするものである。

【内容】

言説の対抗と分析視角
1)言説の対抗の顕在化
2)「イディエーショナルな力」─ 一般的な視角
第1節
言説、言説力の素描と本稿での分析枠組み
1)素描
2)本稿での分析枠組み
第2節
(一方的)社会化─言説力の一方的投射
第3節
規範の対抗理論、相互(双方向)社会化、「対等」言説
第4節
逆投射へ─戦略的ナラティブ
1)逆投射
2)ソフト・パワーから戦略的ナラティブへ
第5節
「話語権」─中国版戦略的ナラティブ
1)話語権をみる時の視角
2)中国での話語権への展開過程─素描
3)胡錦涛から習近平へ─話語の内容

①中国語法(W. キャラハン)の出現
②習近平の話語─内容と変化の原因
③中国の話語権の機能

第6節
逆投射(逆社会化)
第7節
アメリカの反応─カウンター逆社会化
1)対中政策
2)アメリカ自身の問題の認識
第8節
国際秩序への視座─結論に代えて
1)ナラティブの対抗と国際秩序─いまなぜナラティブか

①中国の台頭(パワー・トランジション)
②不確実性、流動性(ナラティブの構造の変化
 ─秩序トランジション(order transition))
③コロナと1.6事件─米中関係と不確実性

2)非物質的な世界と物質的な世界─相互フィードバック
付節
「戦略的コミュニケーション」素描

─C. Paul (2011) とCornish, et al (2011) を中心に

References

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