金融危機についての緊急提言【1】
― 要旨―

1.基本的立場

 90年代初め以来、わが国の金融システムは暗雲に覆われてきている。この間、政府も民間金融機関も不良債権の処理や金融機関経営の立て直しに努めてきてはいるが、依然として、金融システムは閉塞状況にあり、「資産デフレ圧力」が居座るとともに、金融不安が拡がり、金融危機の発生すら懸念される。特に、昨年末以来、円安のもとで株安が進み、流動性危機さらに資本逃避、そして金融機関破綻などから、金融クラッシュ到来のリスクも高まっている。

 ここで明白にしておかねばならないことは、日本の金融システムが破局に陥りつつあることではなく、適切な打開策さえ断行すれば、短期間のうちに甦る契機をつかみうるということなのである。つまり、われわれは、現下の暗雲を迅速かつ的確に取り払いさえすれば、日本の金融システムさらに日本経済は、明るい未来に向けてスタートをきることが充分に可能だと確信する。

 ここに提案する「8つの緊急提言」は早急に「過去」を清算し、「新しい未来」を創造する作業を行うために必須な突破策である。なお、21世紀の自由で活力ある金融システムのあり方については、改めて提言をまとめることとし、今回は金融正常化・安定化のための「緊急提言」に限ることとする。


2.8つの緊急提言

政府高官は不用意な発言を止めるとともに、国が責任をもって金融システムの正常化・安定化を進めていくことを明言すること

「日米金融システム防衛サミット」の創設

金融機関の会計基準の明確化と不良債権の早期完全開示

98年度から金融機関のペイオフ実施

破綻金融機関の清算のための「金融整理基金」の創設

日銀特融については慎重に対処すること

金融安定化のための「金融再建機構」の創設

金融正常化・安定化を円滑に実施するための「金融行政委員会」の新設

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