学校運営改善モデル | 【4】 モデル全体に関するQ&A
モデル全体に関するQ&A
- Q1. 学校運営改善モデルの基本的な考え方について教えてください。
- Q2. 学校運営改善モデルでは学校評価結果を活用していますが、評価項目はどのような項目を設定すればよいでしょうか。
- Q3. 管理職はどのような役割を果たすべきでしょうか。
- Q4. ミドルリーダー(主幹教諭、主任など)はどのような役割を果たすべきでしょうか。
- Q5. チームのリーダー(とりまとめ役)はどのような役割を果たすべきでしょうか。
- Q6. チームのメンバーはどのような役割を果たすべきでしょうか。
- Q7. 指導主事はどのような役割を果たすべきでしょうか。
- Q8. 学校運営改善モデルの内容を実施すると、成果はいつごろ表れるのでしょうか。
- Q9. 議論が消極的になりがちです。どうすればよいでしょうか。
- Q10. 校内研修を実施する時間がありません。どうすればよいでしょうか。
Q1 学校運営改善モデルの基本的な考え方について教えてください。
A1
学校運営改善の基本はPDCAサイクルです。PDCAサイクルとは、計画→実行→チェック→改善を繰り返すことでより望ましい実践を目指す考え方です。モデルでは、①重点目標の作成・展開、②小集団改善活動(チームによる実行)、③活動の評価・見直しの3つを中心に進めます。
「①重点目標の作成・展開」として、学校評価によって現状を把握した上で、学校全体の重点目標を策定します。学校全体の重点目標に沿って、各学年、各教科、各校務分掌などのそれぞれの現状から課題を設定します。
「②小集団改善活動」では、設定した課題に対し、各学年、各教科、各校務分掌などのチームで改善活動を実施します。チームの目標、方法を決め、実行します。
「③活動の評価・見直し」では、チームで実行状況をチェックします。最初からよい結果が出ない場合もありますが、目標や方法を見直し、実行を継続します。
実行を一定期間継続した後(年度末など)に、学校全体の重点目標の達成状況を評価し、評価結果に基づいて重点目標やその作成・展開のあり方、改善活動の進め方などを見直します。
これらの内容はすでに各学校で行われているともいえますが、わかりやすく明確な仕組みを設け、教職員相互のコミュニケーションを円滑にして行うことが重要です。一人一人が持っている経験や知恵を共有することができるからです。
学校運営改善モデルを参考にして目標や方法を決め、実行することにより、学校評価を生かした学校運営の改善を進めることができます。
学校運営改善モデルの活用により、教職員どうしのチームワークの向上やミドルリーダーの育成という効果も期待できます。
Q2 学校運営改善モデルでは学校評価結果を活用していますが、評価項目はどのような項目を設定すればよいでしょうか。
A2
学校評価については、文部科学省の学校評価ガイドライン〔改訂〕(平成20年)でも示されているように、「学校が抱える課題等を把握するため」の評価と、「重点目標等の達成に向けた」評価とに分けて考えるべきでしょう。
「学校が抱える課題等を把握するため」の評価は、学校教育活動の全般にわたって評価を行います。これによって、学校の現状や取組の進み具合などを把握することができます。
「重点目標等の達成に向けた」評価は、設定した重点目標等に関する評価を行います。重点目標等に対する改善活動の内容に応じて評価項目を検討します。重点目標等の達成状況の評価や、達成のための取組状況の評価が考えられます。
このように評価を2つに分けて、それぞれの評価にふさわしい項目を設定することにより、評価と改善との一体性が図られます。評価によって改善活動の成果が明確に示されれば、教職員の意欲の向上につながることも期待されます。
具体的な評価項目は、学校評価ガイドライン〔改訂〕の【参考2】で評価項目等の例が掲げられています。
ただし、その例について、「これらはあくまで例示に過ぎないものであり、そのすべてを網羅して取り組むことは必ずしも望ましくない。各学校の重点目標等を達成するために必要な項目・指標等を設定することが重要である」とされています。「重点目標等の達成に向けた」評価の場合、評価自体が負担にならないよう、できるだけ的を絞って評価することが必要です。
A3
学校運営の改善のためには、管理職のリーダーシップが重要です。学校運営のビジョン・方針や重点目標の校内での共通理解を図ることで、それぞれの教職員が発揮する力の方向をそろえるのです。
学校運営の重点目標は具体的な内容を掲げて学校全体で取り組むべきことを明らかにし、重点目標を教職員に繰り返し伝えます。
重点目標に沿って具体的にどう活動するかは、できるだけミドルリーダー(主幹教諭、主任など)にまかせることも大切です。
ただし、まかせきりにするのではなく、その活動が全体の重点目標に沿っているかどうかを管理職はチェックします。チェックの結果を教職員に伝えることにより、重点目標の共通理解がさらに深まるからです。
教職員に対する承認も重要です。努力や成果を承認することで、改善に向けた教職員の意欲が喚起されます。
Q4 ミドルリーダー(主幹教諭、主任など)はどのような役割を果たすべきでしょうか。
A4
ミドルリーダーは、教職員全体のとりまとめや、教職員と管理職とをつなぐ役割が期待されています。
改善活動が定着していない段階では、ミドルリーダーが進行役となって各チームの議論を進めます。
ミドルリーダーが進行役を担う場合には、ミドルリーダーに対する研修を実施します。研修の内容は、チームでの議論と同じ内容です。学校全体でチームでの議論を行う前に、ミドルリーダーがあらかじめ研修としてチームでの議論を行います。その研修時の成果と課題を踏まえ、学校全体での議論を進行します。
また、学校運営の重点目標に沿って各チームの改善活動が進むよう、改善活動の進め方を周知します。改善活動を進めるために次の役割を担います。
- ① 各チームが課題や目標・方法を設定する際、学校運営の重点目標につながるものかどうかを確認し、必要に応じてアドバイスする。
- ② 各チームの議論の状況や活動状況を把握し、活動が円滑に進むようにアドバイスを行い、必要に応じて研修会を計画する。
- ③ 各チームの活動成果やこれからの課題をまとめ、各チームの活動が学校全体のビジョン・方針や重点目標に反映されるよう、管理職に報告・提案を行う。
Q5 チームのリーダー(とりまとめ役)はどのような役割を果たすべきでしょうか。
A5
チームで議論をするときには、リーダーが進行役になります。
たとえば、チームの課題を考える際、チームのリーダーが大まかな方向性を提案すると、メンバーからの意見が出やすくなると考えられます。
そのためには、学校運営の重点目標を実現するために、自分たちに求められていることは何かを考えます。メンバーが学校運営の中でどういう問題を抱えているかを把握しておくことも重要です。
また、議論を行う中でリーダーが率先して承認の言葉をかけます。
【実践例】
チームでの議論の際、教職員どうしで「私もそう思います」「あー、なるほど」「すごい!」「それはいい方法ですね」などの言葉かけが行われていた。
あるいは、「そんなことは無理だ」などの意見が出されて議論が消極的になったときには、「どうしたらできるようになるだろうか」「見方を変えれば、できている部分もあるのではないか」などの質問を行って意見を引き出し、議論の方向性を変えるように試みます。
方法を実行する段階においても、メンバーに対して日常的に言葉かけをすることが求められます。
チームのリーダーの役割は、チームの方向性を決めることと、メンバーの意欲を喚起することです。
Q6 チームのメンバーはどのような役割を果たすべきでしょうか。
A6
チームのメンバーの役割は、チームでの議論や活動に積極的に参加すること及び自己の能力を生かし他のメンバーを助けることです。
チームでの議論の際には、自分の意見を述べることや他人の意見を承認することが求められます。
この場合の承認とは、了解することではありません。もし自分とは異なる意見が出された場合でも、まずは「そういう考え方もあるよね」「それは面白い視点だ」と受けとめます。その上で、自分の意見と重なる部分、異なる部分を指摘します。
また、実行の段階では、チームのメンバーどうしで協力しあうことが重要です。このため、実行できたこと、あるいは実行しようと思ったができなかったことをメンバーどうしが日常の中で話し合います。その際にも互いに承認の言葉をかけることが大切です。
A7
教育委員会の指導主事の役割は、学校運営改善の効果的な進め方を広めることです。
まず、学校運営改善モデルの内容の周知を図ります。
たとえば、各学校のミドルリーダーを集めて研修を行うことが考えられます。研修において、各ミドルリーダーにモデルを実践してもらい、校内研修の進め方を学んでもらいます。これまで実施してきた学校の実例、工夫されていた点、うまくいかなかった点などの情報提供を行います。
さらに、各学校でモデルが実施される場合には、適宜学校を訪問して実施内容を把握し、必要なアドバイスを行います。
各学校での実施内容を観察する際にポイントとなるのは、
- ① チームの課題、目標や方法が学校運営の重点目標とつながっているか、
- ② チームの課題、目標や方法が具体的な内容になっているか、
- ③ チームのメンバーが実行の成果を実感できているか、
- ④ 教職員どうしのコミュニケーションが深まっているか、
という点です。
もし適切な状況になっていない場合、指導主事がチームに対して適宜問いかけを行うことで主体的な気づきを促します。他校での取組を紹介する、目標や方法などの具体例を示すのも有効です。
また、チームでの議論が円滑に進むよう、指導主事が承認の言葉をかけ、メンバーどうしの承認を促します。
Q8 学校運営改善モデルの内容を実施すると、成果はいつごろ表れるのでしょうか。
A8
学校全体の改善を進める取組ですから、成果は少しずつ表れると考えた方がいいでしょう。成果を確実に得るまでには、取組を数年間は継続する必要があると考えてください。
取組の成果をどうとらえるかにもよりますが、学校運営の改善に向けて教職員どうしで話し合いを行うこと自体も成果といえるでしょう。意見交換を通じ、教職員どうしがお互いを知ることができるからです。
また、結果はどうあれ、自分たちで決めたことを実行できたことも成果といえます。学校運営への参画意識の向上につながるからです。
改善活動の成果をどう把握するかについては工夫が必要です。数値による把握、アンケートなどのデータや聞き取りによる把握などさまざまな方法が考えられます。
成果をわかりやすく表すためには、把握方法を工夫することが重要です。
なお、最初から大きな課題に挑戦せず、小さな改善を継続して次第に大きな課題に挑戦することが、成果を得るコツです。
Q9 議論が消極的になりがちです。どうすればよいでしょうか。
A9
議論が消極的になる理由は、いくつか考えらます。
- ① 「どうせできるわけがない」「そんなレベルの低い意見を出しても仕方がない」という発言が出る。
- → コーチングスキルを活用し、承認の言葉かけを意識します。
あるいは、ブリーフセラピーの考え方を活用します。「○○がないとできない」のであれば、「○○があればできる」と言い換えることができます。何かあればできるのかを考えることが重要です。 - ② 犯人さがしに終始し、前向きな議論にならない。
- → 何があれば実現できるか、どうすれば実現できるか、という質問を投げかけます。
- ③ 議論に参加しない人がいる。
- → コーチングスキルを活用し、質問や承認の言葉かけを繰り返し行います。
また、付箋や模造紙などを使った作業を通じ、参加者それぞれの考えを出してもらいます。
Q10 校内研修を実施する時間がありません。どうすればよいでしょうか。
A10
チームで議論<第1回>は所要3時間、<第2回>以降は1時間半を想定しています。
これをあらかじめ研修計画に組み入れて実施します。なお、<第1回>を2分割し、1時間半ずつ別々の日に行うことも可能です。
また、必ずしも校内の全教職員が一度に集まらなくても、チームごとに議論を行うことも考えられます。むしろ、日常の学校生活の中で議論を行うことで、より具体的な意見交換ができるかもしれません。
無理なく改善活動を進められるよう工夫することが大事です。