リビア情勢と中国

前田宏子 (政策シンクタンク PHP総研 国際戦略研究センター主任研究員)

Talking Points

  • 中東諸国に連鎖して起こった反政府デモに関し、中国政府は自国への波及を警戒した。同時に、中国は中東情勢がアメリカの世界戦略にもたらす影響やエネルギー安全保障の問題も注視しており、関心が国内にのみ向けられていたわけではない。
  • リビアの混乱に際し、中国は建国以降最大規模の避難作戦を実施し、約36,000人の中国人を脱出させた。多数の民間機・船舶のほか、海軍護衛艦と空軍輸送機も派遣され、このことは、中国がかねてから主張している「海洋権益や海外における中国の利益を保護するための能力強化」という路線を後押しすることになると予測される。
  • 今回注目されたのは、中国が、カダフィ政権に対する制裁を含む国連安保理制裁決議に反対しなかったことである。その最も大きな原因は、カダフィ政権を擁護する勢力が国際社会に存在しなかったことに求められるが、中国が内政不干渉原則を放棄する兆しと見るのは不適切である。ただし、海外における中国の利害が増大するのに伴い、内政不干渉原則を原理的に行使するのは今後ますます困難になると予測される。
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