PHP「憲法」研究会

 

問題意識および目的

 PHP総研では「統治機構改革1.5&2.0-次の時代に向けた加速と挑戦」を発表し、国民の選択をエンジンとして内閣を統治機構の核に据えた平成期の統治機構改革の成果と課題を明らかにすると共に、これに続く令和の時代において、我が国にとって喫緊の課題である、内閣および国会といった狭義の統治機構のデザインのあり方を示しました。
 これらの検討のプロセスで明らかになったのは、「グランドデザイン」としての憲法の必要性です。日本国憲法は、その公布からこれまで改正されることはありませんでした。その是非についてはともかく、不磨の大典だとして憲法議論を放置したり、逆に憲法改正を自己目的化したりすることはあってはならず、むしろ、より良き社会や政治に向けて、憲法を活かしていかねばなりません。
 PHP・統治機構改革研究会では、コア・エグゼクティブを中心とした狭義の統治機構のあり方について研究を進めましたが、集中と分散(中央と地方、統治と自治のバランス)、代表と参加、説明責任と透明性といった広義の統治のあり方についても、本格的な検討が求められています。これは国のかたちそのものに直結するものであり、憲法に立ち返った議論が必要です。
 また、近年、社会の成熟化と共に、価値観の多元化・多様化が進み、また、さらには、情報コミュニケーション技術の進展等もあって、現代社会における人権のあり方は、従来の枠組みではとらえきれなくなってきています。こうした環境変化の中、人権の尊重、さらには、法の支配などの憲法の基本的な価値・理念をあらためて問い直し、私たち自身が、実際の社会生活の中で形成し、実現していく社会規範も、「グランドデザイン」としての憲法そのものであり、時代にあわせて鍛え直していくことは緊要な課題です。
 憲法をめぐっては、自民党から改正案が示されるといった動きも見られますが、主要な論点とされる第9条(国際新秩序における安全保障のあり方)、現代社会における人権のあり方、広義の統治のあり方そのもの、いずれも、統治機構のあり方と直結する課題として、また、統治機構に関するデザインのデザイン、いわば「グランドデザイン」たる憲法の課題として捉える必要がありましょう。
 このような「グランドデザイン」としての憲法は、様々な社会や政治の変化を踏まえたもの、次の時代を捉えたものとなるよう、その内容を発展させていく必要があるとともに、必要に応じて、憲法典や憲法附属法などにおいて明文化し、さらには、憲法慣例を随時見直していくことが、社会や経済はもちろんのこと、統治機構の安定化にも資するものとなります。
 時代の転換点に立つ今だからこそ、こうした問題意識に立ち、次なる社会に向けて、国民それぞれが主体的参加できる憲法議論が求められており、政策シンクタンクとしては、これに応えるため、アカデミアの知見をベースにしつつ、具体的な課題対応を踏まえた実践的なたたき台を提示することが求められています。
 本プロジェクトでは、国家の規範であり、統治機構に関するデザインの根幹、いわば「グランドデザイン」である憲法について、①統治と自治のバランスを含めた広義の統治機構、②社会の成熟化と共に進む価値観の多元化・多様化と情報コミュニケーション技術の進展等の影響を受ける現代社会における人権、③米中新冷戦やスローバリゼーションと呼ばれる現在の国際秩序下における安全保障等の論点を中心に、いずれも統治機構のあり方と共に、具体的な論点の提示と方向性を示すことを目的としています。提言報告書は2021年半ばを目途に公表する予定です。 

PHP「憲法」研究会メンバー

宍戸常寿
(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
曽我部真裕
(京都大学大学院法学研究科教授)
上田健介
(近畿大学法科大学院教授)
大屋雄裕
(慶應義塾大学法学部教授)
山本龍彦
(慶應義塾大学法科大学院教授)
金子将史
(政策シンクタンクPHP総研代表・研究主幹)
亀井善太郎
(政策シンクタンクPHP総研主席研究員、立教大学大学院特任教授)
(敬称略、順不同)

【内容】

<研究会開催経緯>

研究会のキックオフとなる第一回研究会を2019年8月5日に開催しました。

本研究会を設置した問題意識および目的、研究会における想定される論点について、亀井(PHP総研)が説明し、その後、メンバー各自の問題意識を共有し、今後検討すべき論点について、活発な議論を交わしました。
本研究会では、現代社会における価値観の多様化や変化、さらには社会としての基本的課題の変化も踏まえ、デモクラシーの今後を俯瞰しつつ、広義の統治機構のあり方、現代社会における人権、新国際秩序下での安全保障等の論点を検討することとしていましたが、これに加え、市民がお互いを個人として尊重する責務とその集合体としての「公共」のあり方、その教育といった憲法をめぐる社会の理解そのものについても、検討を進めることとしました。

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