パブリック・ディプロマシー戦略
― イメージを競う国家間ゲームにいかに勝利するか―

 今日多くの日本人が対外広報や国際交流を強化する重要性を感じているのではないでしょうか。実際日本にとって自らの主張や実態に対する国際社会の理解を得る必要性はかつてなく高まっています。自国の存在感を高め、自国と世界の人々の結びつきを強めようとしているのは日本ばかりではなく、世界中の国々が、イメージやパーセプション、ネットワークを自らに有利なものにしようとしのぎを削っています。

 こうした状況をうけ、PHP総研の研究プロジェクトの成果として『パブリック・ディプロマシー戦略-イメージを競う国家間ゲームにいかに勝利するか』を刊行いたします。「パブリック・ディプロマシー」とは、対外広報や人的交流、国際放送、オリンピックなどの大型国際イベントなどを通じて海外の世論に働きかけ、人的ネットワークを強化して、自国の考えや理想、制度や文化、展開している政策に対する理解を促進する諸活動です。

 PHP総研では、2007年にも『パブリック・ディプロマシー-「世論の時代」の外交戦略』を世に問うています(詳細はこちら)。関係者をはじめ大きな反響をいただき、中国語の訳書も刊行されました。本書はいわばその続編にあたりますが、前著の刊行後、パブリック・ディプロマシーをめぐる状況は大きく変化しました。パワーバランスが変化する中で国際宣伝戦が活発化し、日本も領土問題や歴史認識をめぐる国際的な宣伝攻勢に直面するようになっています。2011年に発生した東日本大震災、そして福島第一原発事故は、世界の対日認識にも大きな影響を及ぼしました。そしてSNSの急激な発達により、メディア環境、情報環境は日一日と変化しています。

 前著が日本ではまだほとんどなじみのなかったパブリック・ディプロマシーを体系的に紹介することを目指していたのに対し、本書では、日本(官邸、外務省、国際交流基金)はもちろん、海外の実務家の寄稿も得て、より具体的な姿を浮き彫りにしています。特に3.11が日本のパブリック・ディプロマシーに及ぼした影響やそこから得られた教訓については重点的に紙面を割きました。また、前著では十分触れられなかった国際放送、自国語教育、ソーシャル・メディアの影響についても独立した章で取り上げています。

 本書が、日本がパブリック・ディプロマシー大国に脱皮していく上で何が必要なのかについて、読者のみなさまが考え、それを実践に生かすきっかけとなれば幸いです。力強い実行を期していくべきか、国民に示すべきことを提言します。

【内容】

<目次>

第1章パブリック・ディプロマシーとは何か
北野 充
第2章ソフト・パワーからスマート・パワーへ
マーク・J・ディビッドソン
第3章力強い発信継続への英国の挑戦
水鳥真美
第4章ワシントンは中国パブリック・ディプロマシーの主戦場
横江公美
第5章韓国におけるパブリック・ディプロマシーの現況
金 泰煥
第6章パブリック・ディプロマシーにおける国際放送とは
古嶋雅史
第7章ソーシャル・メディアの影響と活用
加治慶光
第8章日本のパブリック・ディプロマシーの全体像
金子将史
第9章東日本大震災後の官邸からの国際広報活動とパブリック・ディプロマシー
四方敬之
第10章3・11後の国際文化交流
本田 修
コラム「復興を共に生きる:3.11後の日本・インドネシア交流」
小川 忠
第11章政策広報の実践
米谷光司
コラム「ニューヨーク、パブリック・ディプロマシー最前線」
川村泰久
第12章官邸における国際広報の現状と課題
小野日子
コラムダボス会議を通じた日本のアピール
加治慶光
第13章日本語教育
小島寛之
文献案内北野 充
小川 忠

 

20140311

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