金融危機についての緊急提言【5】
― 金融正常化のための「8つの打開策」―

 以上のように、日本の金融システムは現在、出口のない行き詰まりに入り込み、一方で「資産デフレ」を居座り続けさせ、他方で金融不安を燻らせ、金融クラッシュを引き起こしかねない危険な状態に陥っている。もはや「何とかなる症候群」で静観したり、小出しの対症療法的手法で対応していけば、金融システムは破局に至るのは必至である。さらに、国際金融市場にもパニックは飛び火しかねない。

 そこで、われわれ「民間金融・財政臨調」のメンバーは金融危機の実態を正面から捉え、金融システムの病根を根治することなしに、21世紀の日本経済の展望は拓かれないと考え、金融正常化ならびに安定化のために、まず次の「8つの打開策」を可及的速やかに実施すべきだと提言する。巷間話題になっている「日本版ビッグバン」の金融大改革は世界的金融大競争時代のもとで、我が国にとっても焦眉の政策課題であるが、この金融大改革のためにも早急に金融危機対策を講じ、金融正常化を軌道に乗せ、金融システムを安定化させるべきではないか。

なお、今回は金融正常化のための緊急提言とし、全面的な金融大改革(ビッグバン)など新しい金融システム構築については、改めて提言をまとめることとする。

政府高官は不用意な発言を止めるとともに、国が責任をもって金融システムの正常化・安定化を進めていくことを明言すること

株式市場や為替市場などは極めて神経質になっており、当局や政治家の不用意な発言がキャピタル・フライトなど市場に激震を引き起こしかねない。為政者は発言に慎重を期すとともに(唐突にビッグバンを宣伝したり、外為法改正に言及したり、円相場の水準にコメントしたりすることなど)、金融システムの安定化には国が最終的に公的資金導入をもって担保することを内外に広く明らかにすべきである。

「日米金融システム防衛サミット」の創設

日本の金融システムの正常化・安定化は国際金融システムの帰趨に関わる重大案件である。従って、日米首脳がこの問題に関して、蔵相(財務長官)、中央銀行総裁、官房長官(国家経済会議議長)の6人からなる「金融システム防衛サミット(FSDS=Financial Sys-tem Defence Sumit)」を創設し、金融問題の日米協調体制の確立をめざすべきである。

金融機関の会計基準の明確化と不良債権の早期完全開示

「民間銀行の経営者が不良債権とみなすものを不良債権とする」という現行の不良債権の定義は、不良債権の実態の正確な把握を妨げている。不良債権の状況を的確に把握するために、金融機関の経営内容を客観的に計測できる会計基準を明確化(例えばABCDの4区分)するとともに、この基準に従って期末残高だけでなく、常時開示(例えば3ヵ月ベースとか1ヵ月ベース)する。この点については98年度から全金融機関に会計処理とその完全開示を求める。

98年度から金融機関のペイオフ実施

 前記の会計基準のD区分の金融機関については98年度からペイオフ(預金の払い戻し)を実施し、清算する。清算業務は預金保険機構が行う。

破綻金融機関の清算のための「金融整理基金」の創設

 前記の預金保険機構の清算業務に必要な資金は公的資金と民間資金(預金保険料)との折半とする。この清算資金については「金融整理基金」を設立し、そこが発行する特別国債(金融整理国債・期間10年)によって調達する。償還のために民間分は保険料率の引き上げ(資産内容によって保険料を異にする)、公の部分は国有財産売却計画(別途提案の予定)をもとにした売却益ならびに税投入とする。

日銀特融については慎重に対処すること

 金融正常化の過程で日銀が不本意に日銀特融を強要されることがないように、日銀の独立性について日銀法改正にあたっては十分に配慮すべきである。

金融安定化のための「金融再建機構」の創設

 C区分の金融機関については再建のためのスキーム(「金融再建(安定化)機構」)を作る。「金融再建機構」は政府保証債(期間5年)を発行し、この資金で再建金融機関の経営立て直しをはかる。具体的には金融機関発行の優先株の購入によって資本充実化を支援し、5年目から償還に入る。この間に経営再建状況を見ながら、配当を受ける。なお、「金融再建機構」は新設の「金融行政委員会」の管理下におかれる。

金融正常化・安定化を円滑に実施するための「金融行政委員会」の新設

 上記の金融正常化ならびに金融安定化を迅速かつ整合的に断行するために、官邸直属の「金融行政委員会」を創設し、設立が予定される金融検査・監督庁、ならびに日本銀行、預金保険機構の金融正常化・安定化のための業務の統一をはかる。なお、この「金融行政委員会」は近い将来、大蔵省に残った金融部門(企画・立案機能)を吸収し、「ビッグバン」の足固めを出来るだけ早急に実施できるように、アクションプログラムを準備する。

注目コンテンツ