金融システム再生に向けての提言【5】
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金融システム再生に向けての7つの提言 ―
「早期是正措置」の導入(98年4月以降)によって、各金融機関は財務内容の自己査定を義務づけられるが、これに伴う行政処分(業務停止命令や業務改善命令など)については「半年前倒し」し、98年9月の中間決算から実施する。そこで、国会は第三者を中心に「特別金融調査委員会」を早急に設置し、98年1月から9月についての金融機関の正確な計数把握を監視する。この「早期是正措置の前倒し」の前提として、情報開示の徹底化についても同調査委員会が監督・指揮する。
ペイオフ実施を2001年4月から2000年4月に「前倒し」する。なお、2000年3月までは預金ならびに預金に準ずる金融商品(金融債、信託、CDなど)は全額保護する。
前記1の「早期是正措置」によって、金融機関の経営内容をA,B,C,Dの4ランクに分類する。この評価は「特別金融調査委員会」が行う。ここでDは債務超過あるいは実質的に破綻した金融機関、Cは再建支援によって経営健全化の可能性がかなり高い金融機関とする。Dランクの金融機関は預金保険機構の「金融整理基金」を通じて処理される。また、Cランクの金融機関は別途創設する「金融再建機構」が当該金融機関の発行する優先株(期間3年)を購入し、期間後に償還を受ける。
破綻金融機関を処理するために、政府は預金保険機構に100兆円の「信用供与枠(クレジット・ライン)」を付与し、それによって預金保険機構は破綻金融機関の処理と預金者保護の資金需要に備える。この100兆円については国有財産を担保とし、国債整理基金特別勘定で管理する。なお、国有財産については大蔵省理財局が徹底した棚卸しを行い、国会に結果を報告することを義務づける。「信用供与枠」の設定は「交付国債」でも可能だが、いずれにしても財政法改正の必要がある。
金融機関の再建支援に投入する資金は、「金融再建機構」の発行する政府保証債で市場から調達する。この資金は原則として償還されるため、税金投入や国有財産売却など「純公的資金」ではない。
以上の金融正常化・安定化のための特別期間を、破綻金融機関の処理については2000年4月ペイオフ実施までの2年間とする。金融機関の経営再建は2000年度までの3年間とする。
保険ならびに証券(株式、債券、投信など)は保険支払保証基金制度ならびに寄託証券補償基金制度の拡充に委ね、原則として公的資金は導入しない。
日本銀行は緊急時の流動性危機以外に、安易に「日銀特融」は行わない。日銀は「相対的独立性」の見地から、安易な日銀資金依存が行われることのないように、政府に対してチェック・アンド・バランス機能を発揮すべきである。
金融システムの「信認」を回復するとともに、再発防止のためにも、行政、日銀、金融機関経営者、監査法人の責任について、国会に「90年代金融問題報告書」を提出させ、一般にも広く公開する。この「報告書」作成は、前述の「特別金融調査委員会」が行う。
ここ2年間についての「貸し渋り」の深刻な影響を除去するために、政府は「特別融資制度」を創設し、不安感の鎮静化に努める。