東日本大震災からの復興に向けた第一次提言

【1】復興に向けた基本理念

  • (1)「創造」の理念
    現状復旧にとどまらない復興に取り組み、安全で力強い日本を創造することを国民的目標として共有する。
  • (2)「協働」の理念
    被害が広域かつ甚大であるため、復興を目指して国と全国の地方自治体が協働して取り組む。
  • (3)「活力」の理念
    被災地の早期復興を支えるためにも、全国的な経済活動を停滞させないことが重要である。

【2】復興に向けた基本方針

  • (1)復興財源の調達は国の役割とし、増税ではなく国債発行を中心として賄うべきである。
  • (2)全国の地方自治体が被災地に人的支援を行い、国を挙げて復興に取り組むべきである。
  • (3)津波被災自治体においては、職住分離などによって土地利用のあり方を根本的に見直すべきである。

【3】復興に向けた第一次提言

■提言1 国は復興財源を「復興国債」の発行によって確保する

  • (1)約16~25兆円とされる直接的被害額(内閣府試算)のうち、社会資本の復旧などに10兆円規模の公的財源が必要と考えられる。
  • (2)その財源については、補正予算で歳出の組み替えを行なった上で、不足する額は世代間負担の観点から、時限的な増税ではなく復興国債の発行で確保することを原則とすべきである。なお、復興国債の償還期限については、インフラ復旧や被災者支援など、充当する支出の性格に応じて複数設定することが望ましい。
  • (3)法人・個人・消費にかかる増税は、経済活動の維持に悪影響を及ぼす可能性が高く、当面は見送るべきである。
  • (4)復興国債については、従来からの長期債務と切り離し、復興特別会計を新設して管理することが適当である。
  • (5)国債残高の増加に伴い、長期金利と為替の動向を勘案して、政府・日銀は適切な金融政策を実施する。また、歳出全体の見直しを徹底して行なった上で、税制も含めたプライマリーバランス回復の中期展望を内外に示すことが重要である。
  • (6)公的財源の確保と同時に、民間投資を促す制度創設や規制緩和、個人・法人を通じた寄附税制の拡充を進めることが、わが国の新たな公共システムを創造する上で不可欠である。

■提言2  復興を進める現地機関として「東日本復興広域機構」を設立する

  • 〔役割・構成・期限〕
  • (1)被災地域が広域的・一体的な復興を進めるため、関係自治体による「東日本復興広域機構」を設立する。その組織として「現地復興本部」と「行政支援センター」を置く。
  • (2)広域機構には全ての被災県、被災市町村が加入し、構成首長の合議で意思決定する。また、行政支援センターには、全国の地方自治体も参加することで人的支援機能を強化する。
  • (3)広域機構は3年間の時限組織とし、その後はより自立的な復興を可能とする組織に移行する。
  • 〔現地復興本部の概要〕
  • (1)東日本復興広域機構を復興の現地機関として位置づける。また、国の復興組織は簡素なものとし、現地機関を復興の主体とする。
  • (2)広域機構は国と協議して「東日本大震災復興基本計画」を策定する。本計画で国が講じる施策は、広域機構が現地機関として一元的に執行する。
  • (3)国の出先機関は、地域主権改革の方針に沿って広域機構に移管する。また、設置期限の後には、地域主権型の広域自治体(道州)に改組し、自立復興を進める。
  • 〔行政支援センターの概要〕
  • (1)被災地では市町村の行政機能が低下しており、県による補完にも限界があるものと考えられる。被災地の行政機能の回復を被災自治体のみの課題とせず、全国の地方自治体が人的支援を行うべきである。
  • (2)すでに個別の自治体によるペアリング支援が行なわれているが、長期化を睨み組織的な一元化が必要と考える。そこで、広域機構を通じて、全国の地方自治体が被災自治体に対して職員派遣を行なう体制を構築する。
  • (3)被災市町村・県に対して、支援市町村・県が順次職員を派遣して行政機能を補完する。派遣職員は、復興業務のみならず日常業務も含めて状況に応じて担当する。交代要員も含めて、全ての地方自治体が何らかの人的貢献をすることが望ましい。
  • (4)復興業務のうち、被災者の一時移住や復興事業への被災者雇用(CFW)など、マッチング機能が求められるソフト施策についても、支援センターが調整にあたる。さらに、義援金の配分についても、支援センターが一元的に行なうことが望ましい。

■提言3 津波被災地域で「高地換地」を進め「復興共有地」を設ける

  • 〔土地利用の方向性〕
  • (1)今回の津波で、沿岸市町村は市街地面積の1~65%(平均20%)が浸水しており(国土地理院調査)、浸水地域の住宅の現地復旧は、過去の津波の教訓からも絶対に避けるべきである。
  • (2)昭和8年津波の際にも「萬善の方策としては高地移転あるのみ」とされた(旧内務省報告書)。しかし、過去に試みられた高地移転は、適地の不足と就労場所へのアクセス不備などにより、低地居住に回帰した例が多い。今回は、国が強い決意で障害を除去し、津波災害と訣別するまちづくりが必要である。
  • (3)その具体策として、安全が確保される高台に住宅用地を造成する。発生土砂で地盤沈下した市街地を嵩上げし、高台宅地と市街地の間に道路整備した上で、市街地から「高地換地」することが有効と考えられる。
  • (4)換地に際しては、住民側に手厚く清算する特例などを設ける。市役所、病院などの公的施設も高地移転し、津波で機能喪失しないようにする。これらを含めて、職住分離を原則とした土地利用のマスタープランを各市町村が策定する。
  • 〔産業復興の方向性〕
  • (1)三陸沿岸をはじめ、津波被災地の産業は漁業のウエイトが高く、市街地も漁港を基点に形成されている。産業復興のシンボルとして、漁港と水産関連施設(コア施設)の復旧が急務である。
  • (2)その種地として、被災市街地の一部を国が買い取り「復興共有地」とすることが、迅速な復興に向けて有効と考えられる。
  • (3)復興共有地には、コア施設と関連事業系施設のみの立地を認める。港湾に隣接して、耐震・耐浪性に優れた津波シェルタービルを建設。漁業者や事業者は店子としてシェルタービルに入居、賃料を支払う。
  • (4)漁船・漁具も当面は共同所有することとし、住民の生命や財産を津波災害から守りつつ、産業復興の道すじをつける。

【提言書】こちらから全文ダウンロードできますPDF

(2011年4月12日掲載)

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