ソーシャルメディアが消費行動を変える

gooddo株式会社 代表取締役社長 下垣圭介 (聞き手:PHP総研 山田花菜)

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――gooddoは立ち上げからは4年目、会社化からは3年目を迎えられたということですが、4年前に下垣さんがこうした事業を始めようと思われたきっかけをお伺いできますか?
 
下垣:きっかけは、かれこれ6年ほど前になりますが、2010年10月にソーシャルメディア、具体的に言えばFacebookの事業部の立ち上げに携わったことです。僕は2006年に新卒でセプテーニという会社に入って、ずっとインターネットマーケティングの仕事をしていたのですが、2010年当時、Facebookは日本ではいまほどメジャーではなくて、ユーザー数は100万人ほど。帰国子女しか使っていないような状態でした。
 Twitterは既に流行っていましたが、Facebookに対しては、実名制のソーシャルネットワークなんて日本には馴染まないのではないかという意見が主流だったときですが、セプテーニとして、Fecebookを使ったマーケティングを企業に営業する部署を立ち上げることになったのです。
 その時に「ソーシャルメディアってすごいな」と思いました。なにがすごいかと言うと、いまとなっては当たり前のことですが、誰もが発信できるということ。発信した情報がシェアされることで、瞬く間に有名になれるほどの影響力がある。
 それまでは広く社会に向けて発信できる手段は、テレビや新聞、雑誌といったマスメディアしかなくて、「誰が言うか」が「何を言うか」よりもパワーを持っていた。影響力のある人という前提がないと、そもそもメディアに載らず、声を届けることができなかったですよね。ソーシャルメディアもまだまだ過渡期だと思っていますが、それがもっともっと当たり前のものになっていけば、本当に誰もが発信できるようになっていく。それがすごいことだと思い、ソーシャルメディアに非常に興味を持ちました。
 一方で、何も隠せない社会になっていくということも思いました。
 たとえば、ある企業が質のいいものを安く市場に提供しているけれど、実はその裏には途上国での児童労働の問題が潜んでいたとしたら? 当然ですが、企業が自分から言うわけがありません。問題提起をしたいと思った個人がいても、それまでは社会に声を届ける手段がなかった。それが、ソーシャルメディアの普及によって、誰もが発信できるし、誰もがその情報を知ることができるようになった。
 そうなったときに、日本のような先進国と言われる国の消費者たちは、その商品が社会に生み出している価値や影響をちゃんと考えるべきだし、消費の選択という判断をしていく必要があると思ったのです。それは大きな変化だと思っていて、これまでも商品の価格とか質とかデザインとか、そういったものを総合的に判断してモノを買っていたと思いますが、ミネラルウォーター等の日用品は、値段も機能もそんなに違いがなく、差別化しにくくなってきていると思います。そうした中では、「そもそもこの商品って、社会にとっていいものだっけ?」という判断の基準で消費者が商品を選ぶ世の中になれば、企業は、開発力や営業力だけでなく、CSRへの取り組み等が、より一層求められることになると思いました。
 それまで僕は社会貢献とかNPOとか全く興味がなかったのですが、どうせなら、世の中に悪いものよりも良いものを買いたいと僕は思うし、そういう価値観をもった世の中をつくっていきたい。そういう事業ができれば、自分の人生においても、やりがいのあるテーマだと思いました。
 少し飛躍しているように思われるかもしれませんが、これからはきっとそういう時代になると、6年前ソーシャルメディアに出会って感じたことが、gooddo立ち上げのきっかけになりました。

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