いちばんハードルが低い社会貢献の仕組みを提供したい

gooddo株式会社 代表取締役社長 下垣圭介 (聞き手:PHP総研 山田花菜)

_mg_5743

 12月は寄付月間です。「変える人」No.29では、ソーシャルメディアを活用した社会貢献プラットフォーム「gooddo」を運営するgooddo株式会社の代表取締役で、寄付の啓発キャンペーン「寄付月間」の推進委員も務める下垣圭介氏をご紹介します。
 
――昨年始まった「寄付月間」、今年で2回目ですね。まずは寄付月間について伺いたいと思います。下垣さんも推進委員を務められていますが、どのようなキャンペーンなのですか?
 
下垣寄付月間は、「欲しい未来へ、寄付を贈ろう。」を合言葉に展開しているキャンペーンです。寄付というのは、よりよい未来をつくるためにお金を社会に投資する、ある種の社会的投資と言えますが、社会貢献に興味がある人もない人も、誰もが気軽に乗っかれるようなムーブメントにしたいと考えています。
 たとえば、ここ数年日本でもハロウィンがとても盛り上がっていて、個人も企業も、楽しんでイベントに参加していますよね。バレンタインも同様に、その季節のイベントとして認知されていて、みんなチョコを買うわけじゃないですか(笑)。
 それと同じように、僕たちは、12月を「寄付月間」として寄付を盛り上げていきたいと思っています。企業もこの期間中に寄付つきの商品を発売するなどしてイベントに参加し、売上増加の機会になればいいと思っています。
 
――開催月を12月にされたのはなぜですか?
 
下垣:委員会発足当初「キャンペーンは期間を決めたほうがいいよね」という話があがり、みんなで話し合った結果、昔から世界的に寄付が盛り上がるタイミングである年末に決まりました。クリスマスもあり、ボーナスシーズンでもあるので、新しい一年を迎えるにあたって、一年を無事に過ごせたことへの感謝と、来年以降の社会への期待や応援を寄付というかたちで表現しようと。
 
――具体的にはどのような仕掛けをされているんですか?
 
下垣:寄付月間キャンペーンの趣旨にご賛同いただける企業やNPOを賛同パートナーというかたちで募っています。賛同パートナーは、寄付月間のロゴを自由にご利用いただけるので、たとえば企業が寄付つき商品をつくる場合に、パッケージにプリントしていただくことができます。また、NPOの場合は、寄付者に感謝したり、寄付を呼び掛けたりする機会にしていただくということが土台としてあります。
 その中で、各企業が運営元になっているイベントやキャンペーンで、寄付月間の公式企画として認定しているものがあります。
 
――金融機関が寄付について考えるワークショップを開いたりしていますね。gooddoとしてはなにかされますか?
 
下垣:昨年、寄付月間企画大賞を受賞された「カンパイチャリティ」という取り組みがあるのですが、今年は我々の強みを生かしたかたちでそこにご一緒させていただきます。カンパイチャリティは、キャンペーン期間中に参加飲食店でビールやおつまみなど、各店舗で設定された「カンパイチャリティメニュー」を注文すると、販売額の一部が寄付されるという取り組みです。gooddoでは、ウェブ上で多くの方々にカンパイチャリティにご参加いただきたいと考え、インスタグラムで「#kanpaicharity」とハッシュタグをつけて写真を投稿していただくと、写真一枚につき10円が寄付されるという取り組みを行う予定です。
 
――カンパイチャリティのような取り組みだと、ビールを中心に飲料メーカーの協賛が得られそうですね。
 
下垣:今年この取り組みがうまくいくようであれば、来年以降はそうした企業のスポンサーも入れていきたいですね。

_mg_5890

――gooddoの事業としては、どのようなことに取り組まれているのですか?
 
下垣gooddoは、誰もが気軽にできる社会貢献やNPOを応援する仕組みを提供しています。
 世の中には社会貢献とかNPOについて、よく知らないという人が大半だと思います。僕らgooddoは、そうした人たちに、社会貢献のことや、それらに携わるNPOのことを少しでも知ってもらい、応援したり、寄付したり、あるいはボランティアをしてみたりといったアクションにつながる第一歩目になるような、もっともハードルの低い社会貢献の仕組みとして、ユーザーが無料でNPOを支援できるような仕組みづくりに取り組んでいます。
 たとえばユーザー側は、ウェブ上で「応援する」というボタンをクリックするだけで、そのNPOを応援できるというものがあります。これは、クリックされた数などに応じて我々からNPOに支援金を送っているわけです。その支援金の主な原資には、参画いただいている企業からのお金を充てています。
 
――Facebookで1「いいね!」あたり10円の支援金がNPOに届けられるというキャンペーンを見たことがあります。ほかにはどんなものがありますか?
 
下垣:たとえばネットショッピングです。ECサイトで買い物をする際に、gooddo経由で商品を購入していただければ、販売金額の一定割合がNPOへの支援金になるというものです。アプリをインストールしていただくと、1インストールあたりいくらかが支援金になるというキャンペーンも以前ありました。購入サイトに限らず、この商品を購入していただくと、販売金額の○%が支援金になりますというようなものもありますね。
 
――購入にひもづいた支援金の場合、チャリティ分が商品金額に上乗せされるわけではないんですよね。ユーザーが支払う金額は変わらずに、販売元の企業から売上の何%かが支援金になると。
 
下垣:そうです。ユーザーは商品の購入代金は当然支払いますが、ほかのサイトや店舗で購入する場合と同じ金額で、定価以上のお金を出すことはありません。支援金分は基本的には企業にご負担いただくかたちになっています。

_mg_5786

――NPO団体がgooddoのサイトに掲載される基準や選考のようなものはあるのですか?
 
下垣:申請をいただいたら我々のほうで審査して、一定の基準をクリアした団体を掲載させていただいております。活動年数や予算規模に関する基準は設けていませんが、非営利であることは最低限の基準とさせていただいております。
 
――非営利であれば、NPO法人でなくてもいいんですか?
 
下垣:一般社団法人や任意団体もあります。任意団体の場合は、定款に非営利であることが明記されているかどうかを確認させていただいております。現在では700強の団体にご登録いただいています。
 
――非営利団体700に対して、支援金の実際の出し手となるサポーター企業はどのくらいいらっしゃるんですか?
 
下垣:メニューによってかなり数は異なりますが、だいたい常時20~30くらいですね。
 
――参画している企業は、どういったモチベーションでお金を出されるのでしょうか。
 
下垣:大きく分けてふたつ理由があります。
 ひとつは社会貢献の手段(CSR)としてご利用いただく場合。もうひとつは、宣伝・販促・マーケティングの一環としてご利用いただく場合があります。先ほどのモノを買うと購入金額の一部が支援金になるという例がわかりやすいと思いますが、企業は、gooddoを通じて売上向上を図っており、その取り組みに対してお金を支払われています。企業としては、売上や利益を上げるために行っている販促・宣伝活動と同時に社会貢献もできるという点に賛同いただき参画いただいています。
 ですから、我々がお付き合いさせていただているのは、ほとんどが宣伝部やマーケティング部といった、プロモーションを担当する部門の方になります。
 
――単純な寄付では企業の業績が悪化した場合に真っ先に切られてしまいそうですが、プロモーション予算であれば、そんなこともなさそうですね。
 
下垣:逆に、その取り組みによって売上が上がれば、予算が上がることもあります。
僕らがやりたいのは、資本主義の枠組みの中で、ちゃんとグロースできるようにすること。企業にとっても売上や業績の向上につながる活動をしつつ、そのお金の一部が社会貢献になることは、すごくサステナブルなことだと思っています。
 そういうモデルをつくっていきたいというのが、goooddoのテーマです。

_mg_5829

――gooddoのサイトにはNPOがたくさん掲載されていますね。それぞれの団体のページに飛ぶと、団体の情報と並んで支援金の出し手となるサポート企業が掲載されていて、そのFacebookページなどに「いいね!」をすることで、応援ポイントが貯まり、団体へ支援金が送られる、という仕組みですね。NPOとサポート企業のマッチングはどのようにされているのですか?
 
下垣:基本的にマッチングは行っていません。
 gooddoの取り組みに賛同してスポンサーになってくださった企業は、基本的にはgooddoのサイトに掲載されている全NPOのページに、その企業が掲載されているというかたちになっています。
 これはgooddoの取り組みの特色でもあるのですが、企業がNPOを応援する場合、理念や活動内容の親和性などで支援先を企業が決めるケースが多いと思いますが、我々としては、その支援先を決めるのはユーザーであっても良いのではと考えています。
 なので、一対一ではなくて、一対Nの関係をつくっていくことでユーザーが支援先を選べる仕組みを実現したいと思っています。また、そうすることで、ひとつの企業が複数のNPOを支援できるし、NPOからしても複数の企業から支援してもらえる。そういう一対Nの関係をつくっていくことで、社会貢献にそこまで関心の高くない人々が気軽に応援に参加できるチャンスをたくさん生み出せると思っています。
 ですから、企業にはどこか特定のNPOを支援したいということではなく、gooddoの取り組みにご賛同いただいて、ソーシャルセクター全体のスポンサーになっていただくという座組みになっています。
 一方で、企業からいただく支援金の行先を決めるのはユーザーであっていいと我々は考えています。どの団体のページにも同じ企業、同じ商品が載っていて、ユーザーがどの団体のページから買うかで支援金の行先が決まるわけです。この「ユーザーが決める」というところがgooddoのコンセプトのポイントでもあって、僕らが非常に推していきたい価値観でもあります。
 コンビニで買える水やお菓子の中には、「この商品をお買い上げいただくと、売上の一部がここに寄付されます」というような商品がありますよね。この場合、支援先を選んでいるのはメーカーですが、「コンビニでマークのついた商品を買うと、アプリから支援先を選んで10円分寄付できます」といったプラットフォームを僕らは将来的につくっていけたらと考えています。
 支援先をユーザーが選ぶことで、支援の幅が広がるというシンプルな側面もありますが、「どうせだったら、自分はどこを支援したいか」「自分にとって何が重要な課題なのか」ということを考えるきっかけになると思っていて、それがとても重要なことだと思っています。
 だから、何が課題で、どの団体を応援するかを決めるのはユーザーである。もっと言うと消費者であると、そういう仕組みをつくっていきたいと思っています。
 
(第二回「ソーシャルメディアが消費行動を変える」<12月13日公開予定>へ続く)
 
下垣 圭介(しもがき けいすけ)*1984年生まれ。大学卒業後、株式会社セプテーニに入社し、インターネットマーケティング事業を担当。2010年、ソーシャルメディア事業部の立ち上げに携わったことをきっかけに、ソーシャルセクターの可能性に気づき、誰もが気軽に社会貢献に参加できる仕組みとして、2013年に新規事業として社会貢献プラットフォーム「gooddo」を立ち上げる。2014年10月に同事業を法人化し、代表取締役に就任。
 
【写真:長谷川博一】

関連記事