「問題解決ができるかどうか」に徹底的にこだわりたい

かものはしプロジェクト 共同代表 青木健太 (聞き手:PHP総研 山田花菜)

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――かものはしプロジェクトが、絶対に譲れない価値観のようなものはありますか?
 
青木:僕たちが内部で「ミッション原理主義」といっている価値観は確固たるものになってきているように思います。問題解決にこだわるという視点ともいえますが、まず社会の問題があって、本当にそれを解決するというミッションが達成できるかどうかが大事であって、それ以外のことは二の次、という感覚が徹底されています。
 ただ、どれくらいその問題の解決に貢献したかというソーシャルインパクトは往々にして測定することが難しいのは悩みです。僕たちの活動の場合でいえば、すでにお話したように被害者の数も分かりにくいので、そちらに目を向けずになんとなく活動するということも、やろうと思えばできてしまう。だけど、活動がそれなりの人達に支持されますとか、目の前にいる受益者が喜んでくれますという話と、人身売買問題が本当に解決できるかどうかは、イコールではないですよね。
 かものはしプロジェクトは、どれだけのエネルギーや力をその問題の解決のために使えるかということにこだわりたい。だから調査にも力を入れるし、ディスカッションもするし、必要に応じて事業モデルもつくり変えるしという姿勢は、そういう価値観があってこそだと思っています。かものはしプロジェクトとしては問題が解決しつつあるカンボジアから撤退するという意志決定もその一つの象徴であると思います。僕自身がこれからかものはしからは独立して続けていく教育とSUSUというチャレンジの中でもその姿勢を大切にしていきたいと思っています。
 大切にしていることはほかにもたくさんありますが、あえてもうひとつ挙げるならば、「関係性にこだわる」いうことでしょうか。これは二つの意味があって、1つ目は採用した人がミッションとどういう関係でいるかということと、2つ目はスタッフ同士の関係性の質がどうか、ということです。
 1つ目のことは、かものはしの立ち上げの時にお世話になった方に言われたことの影響もあるのですが「この団体の人だから、この団体の仕事をやる」のではなく、「一人の人間として、自分の人生で成し遂げたいこと、ありたい自分と一致しているかどうかを常に問いながらその団体に関わることを選ぶべきではないか」ということです。つまり組織と自分の関係はフラットであり、お互いに成長と貢献があるかという緊張感があるものであるほうが良いのではという提案です。もしくはいかに自分の人生のミッションやビジョン、価値観を実現できるかということに組織を最大限利用してほしいというメッセージでもあります。もちろん自分の価値観やミッションというものは顕在していないことも多く、また固定的でないこともあるので、団体が掲げるミッションに共感して心を尽くして仕事をしてくれるなかで是非発見して深めていってほしいという願いでもあります。だからかものはしではスタッフが良い卒業が出来ることは歓迎されます。今回の僕自身もそれにあたると思います(笑)。
 2つ目のスタッフ同士の関係性というのは、一言で言えば生産性も高く関係性も良い職場作りを目指しているということです。人間としてお互いを尊敬しつつ、言うことは言える。組織の発展・目標をおしつけるのではなく、その人のキャリアや個性を理解して仕事を調整していく。そのために組織開発やシステムコーチングと呼ばれる手法を導入したりしながら関係性を充実させていくことと、それぞれの人がコーチングをうけながら自分の囚われやトラウマと戦っていくことを組織として支援しています。
 
――一人ひとりのパフォーマンスの集合体が組織としての成果だと考えると、とても重要なことですね。
 
青木:パフォーマンスを集合するときって、足し算より掛け算的なところがあると思うんです。単に能力のある人が10人いたらその能力の合計が組織の成果になるかというと、そういうわけではなくて、組織内の関係性とか、それぞれが自分のエネルギーをどのくらい出してくれているかということが、とても効いてくるんですよね。
 とくに自分達が取り組んでいることは刻一刻と被害者が心の傷を負ってしまうような深刻なことが現地で起きていたり、そんな中で自分達の無力感を実感したりということと向き合っていかなくてはいけません。心の底からエネルギーがでるような、仲間とのふれあいからエネルギーをもらえるようなそんな働き方でなければなかなか続けていけないという問題意識があるのかな、と思います。そのためには関係性の前提としての安心・安全を職場に作っていくということも大事です。
 なかなか注目されないことではありますが関係性づくりに投資するということは、成果を追求する上で合理的でもあるし、みんなが生き生き楽しく働くために大切なことだと思っています。

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