防災が当たり前の世の中をつくりたい

一般社団法人 防災ガール 代表 田中美咲 (聞き手:PHP総研 山田花菜)

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4、ドローンと鬼ごっこで津波避難訓練
 
――これまで、渋谷区と世田谷区で「次世代版避難訓練」を実施されたということですが、次回以降の企画のご予定は?
 
田中:次は秋葉原でやりたいと思っています。秋葉原は外国人観光客も多いですし、人の層が全然違うんですよ。渋谷や世田谷では、基本的には地元の方々に参加していただいたので、その地域での避難訓練の経験者が多かったんです。でも、秋葉原って、どちらかというと、買い物に来た人が多かったり、自分の目的のお店には行くけれど、その近辺の公園の存在は知らないという人が多かったりすると思うんです。そうした人たちに参加してもらえる企画にしたいな、と。
 
――たしかに、自分の住んでいる地域や勤務先で被災するとは限らないですよね。出掛けた先で被災した場合どう避難するか、とか、そういう人たちをどう安全に誘導するか、といったノウハウも必要ですね。
 
田中:そうなんです。いま、一緒にやろうと言ってくださっている会社さんがいらっしゃって、そのビルのテナントの店員の方々にご参加いただきたいというご相談をしています。というのも、そのビルは避難所に指定されているんです。受け入れる側として危険な箇所と安全な箇所を知った上で、被災した方々をどうやって受け入れるか考えていただきたくて。
 そうした受け入れる側の方とは別に、事前や当日に申込みをしていただいて、観光客の方などにもご参加いただける枠を設けたいと思っています。
 
――先ほどのご説明では次世代避難訓練はオンラインのシステムを使うということでしたが、災害が起きたときに、通信手段が遮断されてしまうこともあると思います。そうした事態を想定した避難訓練もされているんですか?
 
田中:Ingressを利用した次世代版避難訓練では、オンラインとオフラインの情報を組み合わせるようにしています。ある程度の方角と情報はオンラインで入手できますが、それだけでは避難は完了できないようにしていて、各ポータルには実際に足を運びますし、どう避難するかという最終的な決断は、オフラインで、チームのみんなで決めてください、というやり方をしています。
 
 また、企画段階ですが、ドローンを活用した避難訓練をやりたいと考えています。参加者は全部オフラインで。津波を想定した避難訓練なんですが、津波と地震では避難の仕方が違うと思うんですね。地震からの避難は、「大きな揺れを感じたら、まずは安全な場所に身体を隠しましょう」というもので、倒壊などの危険がある場所からは急いで離れたほうがいいけれど、基本的には次の揺れまで時間がある。でも津波は、発生したらもう立ち止まらずに逃げるしかない。のみ込まれないように、いかに速く、高いところまで逃げるかということが大事です。でも、どのくらいのスピードで、どのくらいの高さまで逃げたらいいのか、感覚的にわからないですよね。そこで、ドローンを、想定される津波の高さとスピードで海から飛ばして、ドローンよりも早く避難所まで逃げるという訓練を考えています。
 
 打ち出し方は「ドローンと鬼ごっこ」のようなポップなものにして、一度やってみてから「実はこのドローンは津波のスピードと高さで追ってきていたんだよ」と種明かしをする。それから「ではもう一度、今度はあれが津波だと思いながら避難してみましょう」と言うと、もっと本気で走るようになるかもしれない。
 そういうかたちで、解決したい社会問題や伝えたいメッセージに合わせて、見せ方やテクノロジーを活用していきたいと思っています。
第二回「被災地支援の現場から防災へ」へ続く)
 
田中 美咲(たなか みさき)*1988年奈良県生まれ、横浜育ち。2011年、立命館大学卒業後、株式会社サイバーエージェント入社。ソーシャルゲームの制作を手掛ける傍ら、東日本大震災の被災地支援に携わる。2012年に同社を退社し、公益社団法人助けあいジャパン入社。福島県で支援事業に従事。2013年に防災に関する普及啓発を行う任意団体「防災ガール」設立。2015年に法人化し、代表に就任。現在に至る。
 
【写真:長谷川博一】

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